二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
げつ@ついったー
げつ@ついったー
novelistID. 2846
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

愛したいのに、

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 

1 - 君がいるから


「俺と兄さんは、似てるかい?」
「……無駄口を叩く暇があるなら一機でも多く撃墜するんだな」
「おーおー怖い教官だ」
 あの人にそっくりな、だけれども全くあの人とは違うその男は、 あの人の亡霊に追い縋る僕を(僕たちを)嘲笑うように、あの人にそっくりな自分を塗り潰してゆく。 幻のようにそっくりな、あの人と同じDNAを持った別人。 頭では理解している、それなのにどうして、こんな簡単なことを受け入れられない自分がいるのだろう。 どうして、彼に固執し彼を執拗に求める自分がいるのだろう。  どうして、その苛立ちをただの別人にぶつけてしまうのだろう。
(本当は理由なんて、とうの昔からわかっている。)
 本当に、自分はロックオン・ストラトスに変えられてしまったのだ。 入れ込みすぎたなんて打算に塗れた言葉ではなく、心の底のきれいな感情をもって思う。
 だからこそ、この顔が、この声が、この腕が、すべてが苦しいのか。
「教官殿は、」
 また減らない口をきく、その男をじろりと睨む。亜麻色の髪を揺らして、男は笑う。 最近この男から「教官殿」と呼ばれることが増えた。そのくせ尊敬の意は汲み取れないが。 年下の自分への厭味なのかもしれない。
 あの人に似て、この男は賢い。少なくとも人の心の機微を察するに長じているのは彼と同じで、 それはもしかしたら、そういうお人好しな血統なのかもしれないし、 単にしあわせな家庭で真っ当な人間関係を築いていた彼らだからこそ持っている能力なのかもしれない。 この男は賢い。 あの人にそっくりの賢さをもって、彼がとても言い出しそうにないことを言い出すものだから、 僕たちはなんとなく裏切られたような悲しい気持ちになってしまうのだろうか。 聡いエメラルドを見つめると、彼とは違う、陰りが見えた。
「兄さんのことが好きだったんだろう」
 断定のような口調でそう云われて、咄嗟の言葉に詰まった。 同じ顔の人間に、あいつが好きだったんだろう、と言われるのは変な感じがしたが、 それ以上にその質問にイエスと答えられるほど強くなく、 ノーと答えられるほど薄情でも嘘吐きでもない自分の曖昧な立ち位置に気付いてしまったからだ。
「どうだろうな」
エメラルドから目を逸らすと、男はすこし彼と似た空気を纏って、「そうか、」とつぶやいた。
その空気がどうしようもなく懐かしくて、胸の奥が疼いた。 過去形になんて、とてもできそうにないくらい、彼はまだこの胸の奥、深くで膿んでいる。 少なくともこの男がいる限り、自分はロックオンのことを嫌いにはなれないのだろうと理解した。
「なあ、教官殿?」

 俺にしとかない?

 ああ、だから、お前は、その、彼と同じ、顔で、声で、!!!!!
 冗談だと、からかいだと分かっているのに、何の反応もできないのが悔しくて、僕は逃げた。
 彼と、彼の兄の亡霊から。