Never end.3
そんなアムロ大尉に笑顔を向けると、アムロ大尉も笑顔で返してくれた。
みんなとの別れが終わった頃、ブライト艦長の知り合いの女性が現れた。
その横には、死んでしまったとばかり思っていたリィナが、その瞳に涙を浮かべて立っていた。
「…リィナ?」
思わぬ再会に、一瞬何が起こったのか分らず立ち尽くす。そんな俺に、リィナが泣きながら駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!」
「リィナ!!」
こちらに駆け寄るリィナを思い切り抱きしめた。懐かしいリィナの温もりに、間違いなくリィナなんだと確信する。
「リィナ!!」
そんな俺たちを見つめる女性の瞳が、優しく微笑む。けれど、その瞳の奥に何か悲哀も感じた。
ブライト艦長から、この女性が怪我をしたリィナを保護し、面倒を見てくれていたのだと聞き、お礼をする。
「本当にありがとうございました!」
思い切り頭を下げる俺に、女性が笑いながら答えてくれる。
「良いのよ。あなた達が無事に再会出来て良かったわ」
「はい!」
「もう!お兄ちゃん!恥ずかしいから、そんなに大きな声出さないで!」
「え?あ、悪りぃ」
そんな俺たちを見て、この女性、セイラさんもクスクス笑う。
「素敵なお兄さんね」
「えー!ガサツだし、うるさいだけです!」
頬を膨らませて怒るリィナに、セイラが更に笑う。
「でも、大好きなんでしょう?」
「え!あっ…もうっ!セイラさん!」
「ふふふ、大切な事はちゃんと言葉にして伝えなさい。たとえ兄妹でも、言わなければ伝わらないわ」
「セイラさん…」
まるで、他の誰かを想うようにセイラが告げる。
「はぁい」
リィナは頷くと、俺の顔を見上げる。
「お兄ちゃん、心配かけてごめんね。大好きよ」
そう言って笑うリィナを、俺はもう一度思い切り抱きしめた。
その時、ようやくリィナが生きていた事を実感する。二人きりの大切な家族、離れ離れになって、その大切さを思い知った。
「リィナ!」
思わず泣き出した俺の頭を、クシャリとアムロ大尉が撫ぜてくれる。
「良かったな、ジュドー」
「うん!うん!」
泣きじゃくる俺を、アムロ大尉が笑いながらも抱き締めてくれる。
そして、アムロ大尉から思惟が伝わる。
『お前は幸せになれ!』
そんなアムロを見上げ、その腕を握る。
「俺だけじゃないよ!アムロ大尉もだよ!」
俺の言葉に、アムロ大尉は驚きながらもコクリと頷いてくれる。
「そうだな…」
「あらあら、内緒話かしら?」
「セイラさん、お久しぶりです。元気そうで良かった」
「貴方もね、アムロ」
「アムロ大尉もセイラさんと知り合いなの?」
そんな俺の質問に、二人は見つめ合ってクスリと笑う。
「昔…一緒の艦に乗っていたのよ」
「え?まさかホワイトベース?」
「ええ…」
「彼女は優秀なパイロットだったよ」
その意外な経歴に驚いて、セイラの顔をまじまじと見つめる。
「え?こんな綺麗な人がパイロットだったの!?」
「ふふ、ありがとう。でも、優秀って…アムロの足元にも及ばなかったわ」
「そんな事…。それに、あの戦争を生き延びた」
「貴方が助けてくれたからよ」
「それだけじゃありませんよ」
二人の雰囲気に、何か深い絆の様なものを感じる。死線を共にした仲間同士の深い絆。
それは、経験した者にしか分からない感覚。
そんな二人と、その向こうで俺を見つめている仲間たちに視線を向ける。
アムロ大尉とセイラさんと同じ様に、俺にとっての大切な仲間たち。
そんな仲間たちの笑顔に見送られ、俺とルーは木星行きのシャトルの登場口へと進む。
「じゃあな!みんな!また!」
手を振る俺に、みんなも手を振り返す。
「ルー、ジュドー!頑張れよ!」
「ジュドー!ルーに迷惑掛けんなよ!」
「ジュドー、身体に気をつけてね」
「ルー!ジュドーの事よろしくね」
「お兄ちゃん!待ってるから!」
ビーチャ、モンド、イーノ、エル、そしてリィナに見送られ、ルーと共にゲートに続くエスカレーターを登っていく。
その時ふと、カミーユが何処かに視線を向けているのに気付く。
そして、アムロ大尉も同じ方向を見つめていた。
その方向に視線を向けて、俺は息を飲む。
そこには、前にコロニーでアムロ大尉と一緒にいた男が居た。
前と違って髪は金髪だったが、間違いなくあの時の男だ。
『シャア・アズナブル!』
シャアは俺の視線に気付くと、濃い色のサングラスを外し、その蒼い瞳で此方を見つめ、シニカルな笑みを浮かべる。
何故か無性に腹が立って、シャアに向かってあっかんべーをしてやった。
すると、少し驚いた顔をしてから、ククッと笑う。
その笑顔は、何処かセイラに似てるような気がした。
そしてアムロ大尉に視線を向けると、俺とシャアとのやりとりに気付いたのか、肩を震わせて笑っていた。
『ジュドー、本当にお前には敵わないよ』
アムロ大尉から、そんな思惟が伝わってきた気がした。
この先、アムロ大尉とシャアがどんな運命を辿るかは分からない。
でも、できる事ならば、アムロ大尉には幸せになって欲しい。
優しい人だから、沢山の哀しみを知る人だから、どうか、幸福な人生を送って貰いたい。
俺は今まで、沢山の優しさに支えられて生きてきた。
今日の別れ、そして出逢いは俺にとって、人生のターニングポイントかもしれない。
だからこそ、俺は明日に向かって生きていく。
だって、まだまだ俺たちの未来は続いてるから、この先も終わらない、ずっと続いていく。
俺たちの未来は!
end
2018.10.11
なんだか、起承転結の無いお話になってしまいました。
小説版の「機動戦士ZZガンダム」に、ジュドーとアムロが接触するシーンがあったんですけど、私としてはもっともっと二人に絡んで欲しかったんです。
(ジュドーに、もっとアムロを知って貰いたかったんです。)
って事で、テレビ版ZZでアムロがジュドー達と一緒に居たら…そして、最終話のあのシーンにアムロとシャアが居たら!と言う妄想を膨らませ、このお話を書きました。
全然シャアとアムロの絡みが無かったので、この後おまけでちらっと載せます。
宜しかったらどうぞ!
◇◇◇
【おまけ】
ジュドーとルーを見送った後、ブライト達に別れを告げ、アムロは荷物を持って宙港を出た。
そして、暫く歩いたところで足を止める。
「いつまで追いて来る気だ?」
アムロの後ろを歩いていた男が、クスリと笑う。
「君の行くところまで」
「何だそれ」
呆れながら振り返り、その金髪の美貌の男を見つめる。
「偶然時間が出来たのでな、君に会いに来た」
「よく言うよ、俺が今日アーガマを降りる事、知ってたんだろ?」
「君のこれからの予定は?」
アムロの質問を無視してシャアが訊ねる。
「人の話聞けよ。ったく、今日から宿無しだからな。とりあえず今日は何処かで宿を取って、貴方を探しに行くつもりだったよ」
手に持った荷物を見せながらアムロが答える。
「それならば丁度いい、私が予約したホテルがすぐそこだ。良かったら一緒にどうだ?」
いけしゃあしゃあと答えるシャアに、アムロが大きな溜め息を吐く。
「まぁ、いいさ。貴方には言いたい事がいっぱいあるんだ。時間はあるんだろう?付き合ってもらうぞ!」
「勿論だ」
作品名:Never end.3 作家名:koyuho