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MIDNIGHT ――闇黒にもがく3

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「いやいや、エミヤは、そういう感じではないね! 彼は、士郎くんとどう接していいかわからないと言ったんだ。過去においては何か因縁みたいなものがあったけれど、エミヤの中では、今、それは変化していて、どちらかというと、士郎くんと仲良くしたい、と思っている気がする」
「仲良くって……」
「できるの?」
 子供じゃないんだから、とロマニ・アーキマンが苦笑い、立香が首を傾げる。
「エミヤはその気だよ。けれども、士郎くんが、なんというか……、うーん……」
 ダ・ヴィンチは、腕を組んで唸ってしまう。
「エミヤが士郎くんを追えば追うほど、士郎くんは逃げそうなんだよ……」
 困った困った、とダ・ヴィンチは首を右左と傾けて唸っているが、立香はその口許が微かに笑っていることに気がついた。
「ねえ、ダ・ヴィンチちゃん、楽しんでない?」
 立香が、じとり、とした目で窺えば、
「ん?」
 ニコニコとダ・ヴィンチは笑顔を浮かべる。
「ダー・ヴィーンーチーちゃん?」
 立香が咎めるように呼ぶ。
「んふふー」
 ダ・ヴィンチは、ますます笑っている。そして……、
「当ったり前じゃないかー。こぉんな面白い状況、ないだろうっ?」
 キラキラと瞳を輝かせて言い切った。
「うわ……、人でなしだ……」
「ロマン、聞き捨てならないなあ」
「エミヤたちは真剣だっていうのに、ダ・ヴィンチちゃん、面白がっちゃダメだよ」
 立香に窘められるも、ダ・ヴィンチは、ふふん、と笑う。
「山あり谷あり、いろいろ起伏があっての人間なんじゃないか。他人との関わり、自分との関わり、そうやって人は生きていくもの! それをね、あの二人は一度にやってのけるんだよ? 互いに自分であり、別々の存在だから、他人でもある。こーんな、観察対象、滅多にないんだぜ! 楽しくないわけがないだろう?」
 ダ・ヴィンチの力説に、立香とロマニ・アーキマンは、顔を見合わせ、目を据わらせるしかない。
「ただねえ……」
「観察に支障が出たのかい?」
 半分呆れながらロマニ・アーキマンが訊いた。
「士郎くんは……、怯えているように見える」
「怯える? なに言ってるんだよダ・ヴィンチちゃん。全っ然そんなことないよ! 彼は、ぶっとい注射針にも動じないし、こっちが痛そうって思うことにも眉一つ動かさないし、」
「そういうことじゃなくって、ここだよ、ここ」
 ダ・ヴィンチは、自身の豊満な胸を拳で叩いて示す。
「えっ! もしかして、士郎さん、女の子なの?」
「いや、男だよ」
 ロマニ・アーキマンがすかさず立香の勘違いを正す。
「あー、もう! 鈍いね君たち! メンタルだよメンタル!」
「この間から、ダ・ヴィンチちゃん、そればっかだねー」
 立香が、またそれ? と聞き飽きました、とばかりに紅茶をすする。
「立香くん、よく聞きたまえ。心は、身体にも影響する。心が弱れば、身体も弱る。病は気からと言うだろう? いいかい? 心が健康な人は、病気になっても回復の見込みがある。だがね、心が病んでいれば、身体が健康でも病気になってしまうんだよ。立香くんも戦っているときに思うだろう? 絶対に負けないって。その気持ちが力になる、そういうことがある」
「うん、それなら、わかるかも」
「今の彼は、その心がない。そう思うんだ」
「え……? じゃあ、身体が戻らないってこと?」
「いや、治ってはいるんだよ、少しずつね。このカルデアの医療技術をもって治療しているんだ、治らないはずがない。ただ、回復が遅い。それは、やはり、彼の心持ちに関係しているのじゃないか、ってね……」
 ダ・ヴィンチは、やるせないため息をこぼした。
「おれは、元気になってもらいたいな」
「私もだよ」
「ボクも主治医としてだけじゃなく、彼には明るく笑ってほしいと思うよ」
「へえ、珍しく、そういうコト思うんだね、ロマン」
「珍しくなんかないぞう。ボクは立香くんにもマシュにも、笑っていてもらいたいと思っているんだから」
「ふふふ。では、意見は一致した、ということかな?」
「「そうだね」」
 ダ・ヴィンチは二人を見つめ、にっこりと笑む。
「では、ミッションは続行だね」
「ミッション?」
「そんなのあったんだ?」
 ロマニ・アーキマンと立香が首を傾けて訊く。
「そうさ。見守る、っていうね」
 ウインクを飛ばしたダ・ヴィンチに、二人は目を据わらせた。
「結局、観察じゃん……」
 立香の率直な感想に、ロマニ・アーキマンは、うんうんと頷いた。


MIDNIGHT――闇黒にもがく 3  了(2018/10/12)