ディアブロスプリキュア!
「かしこまりました! ロンギヌスチェインジー!!」
人間の姿に化けていたレイは主人の一声によって状態を変化させる。体を光り輝かせながらその姿は武器の形へ変わっていく。そして、キュアベリアルの手に装備されたのは――鋭利な矛を持つ【魔槍レイロンギヌス】。
「はああああああああ」
長いリーチを持つ矛を巧みに操り、ベリアルはくるまピースフルの体を徹底的に傷つける。
「ピースフル!! そんな武器に頼る似非プリキュアに負けるでない!!」
「武器を使って何がいけないっていうの? 大体プリキュアが素手で戦うこと以外は良くないっていう暗黙の常識……私は知らないから!!」
矛先から魔力を練り上げた波動を放つ。それに直撃したピースフルは吹き飛ばされ、圧倒的力の前に為す術も無かった。
「く……何故だ、何故悪魔ごときに後れを取られる!? 洗礼教会が悪魔に後れを取るなどあってはならないのだ!!」
『ピースフル!!』
エレミアの怒鳴り声に反応して、負けっぱなしのくるまピースフルも立ち上がる。今まで返り討ちに遭っていたくるまピースフルも意地と本気を見せつけるため、捨て身覚悟で体当たりを仕掛けた。
「――あんた達ってどこまで馬鹿なのかしら」
が、ベリアルはタックルを仕掛けてきたくるまピースフルの攻撃を片手で抑えつける。
エレミアはその光景に絶句する。そんな彼やくるまピースフルに言い聞かせるように、ベリアルは唱える。
「自分を善だと平気で公言できるあんたら洗礼教会の方が……純潔悪魔の私なんかより悪魔染みてるじゃない!!」
くるまピースフルの頭を鷲掴みにし、その状態から巨体の敵を持ち上げ――ベリアルは力いっぱいエレミアの方へと投げつけた。
「うわああああああああああああ!!」
エレミア目掛けて飛んできたくるまピースフルは、エレミアに衝突してそのまま彼を下敷きにして、動けなくなった。
「今です、リリス様!」
レイの言葉を聞き、彼女はくるまピースフルにとどめを刺すため自身の魔力を最大限に高める。そして、悪魔の力をプリキュアの能力に付与し――両手から紅色に輝く波動を放つ。
「プリキュア・ルインフェノメノン!!」
真っ直ぐな軌道で飛んで行く紅色の波動はピースフルを直撃した。
――ドンッ。
『へいわしゅぎ……』
この攻撃が決め手となり、くるまピースフルは倒れる間際――そんな言葉を唱えながら消えていった。
「バカな……貴様、浄化したのではないのか!?」
エレミアがひどく驚いた様子だった。本来、プリキュアによって倒された敵は例外なく浄化され怪人の素体にされたものが元に戻る。だがベリアルが解放した力は例外だった。
「悪魔に浄化なんてことができる訳ないでしょう。私にできることは、敵を完膚なきまでに消滅させること――それだけよ」
「く……覚えていろ!!」
悪魔を駆逐するどころか、くるまピースフルを倒されてしまい、エレミアは悔しさを顔に出しながら魔法陣の中へと消えて行った。
彼女とくるまピースフルが戦闘した際の被害は尋常ではなかった。電柱から道路を中心に傷跡は目立っている。プリキュアでありながら敵を浄化できず、戦った際に生じる周囲のダメージも回復させることができない彼女にとって、好ましくない結果だった。
ベリアルは人が集まる前に早々に退散することにした。ひとまず、悪魔の翼で空へ上がり、どこか人目の付かない場所へと移動する。
そして、しばらく空を飛んでから彼女はうってつけの場所を見つけた。近所の公園は時間が時間だけに子どもの姿なく、ベリアルは誰にも悟られないように茂みの中へ降り立った。
そして、ようやくここで変身を解除した。キュアベリアルから悪原リリスの姿へと戻り、戦いの余韻を感じていた。
「ふう。あんまり人前で戦うものじゃないわね」
「あああああああああ!!」
直後、甲高い悲鳴が聞こえた。驚いて後ろを振り返ると、そこにいたのは意外な人物だった。
――同級生で幼馴染みの少女、天城はるかが自分の姿を指さしながら呆然と立ち尽くしていた。
「は……はるか!?」
「リリスちゃんが……リリスちゃんが……プリキュアだったんですね!!!」
次回予告
は「リリスちゃん、プリキュアになったってどうしてはるかに一言言ってくれなかったんですか!?」
リ「わざわざ言う必要なんかないでしょう。というか、何でこうも簡単に正体がばれちゃうのかな、あなたには……」
「ディアブロスプリキュア! 『悪原リリスは悪魔!?それともプリキュア!?』」
作品名:ディアブロスプリキュア! 作家名:重要大事