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ディアブロスプリキュア!

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私立シュヴァルツ学園 二年C組

 今日は始業式だ。教室ではクラス替えの結果に安堵の顔を浮かべる者や、仲良しグループから一人だけ外れて別クラスになってしまい落ち込む者など様々な生徒であふれている。
 そんな中、また一年、共に学生生活を同じクラスで送ることができる喜びを、はるかは曇りのない笑みでリリスに伝えた。
「よかったですねー、また一緒のクラスになれましたよ!!」
「ええ、そうね」
 と、リリスは実に淡泊な返事を一言返すだけ。彼女のそっけない反応にはるかは思わず頬を膨らませる。
「ぶぅ~~~、もうちょっと喜んでくれてもいいじゃないですかリリスちゃん! どうしてあなたって人はこうも無愛想なんですか?」
口を尖らせて、はるかはリリスに訴える。
「私から言わせれば、はるかみたいに他愛ないことで一喜一憂することのほうがよくわからないわ」
 同じクラスになった喜びを親友と共に分かち合いたいと思うはるかとは裏腹に、リリスの態度は冷ややかだ。はるかは出会った頃から何一つ変わらない親友のこうした冷淡な性格にずっと不満を抱いている。
「リリスちゃん! そんな風にひねくれていたら誰からも好かれませんよ!!」
「お生憎。私、誰彼かまわず好かれるのは嫌いなの」
 強がりなどではなく、これはリリスの本心であった。ふと教室を見渡せば、既に周りに愛嬌を振りまいている女子が数人いた。ああいう非合理な行いは心底自分を疲れさせる。まったく以って理解の外の行為だと思いながら、リリスははるかに向き直った。
「ですが、リリスちゃんも女の子なんですから笑顔のひとつでも見せてくれてはどうですか?」
「あら、私だって笑うときは笑うわよ。例えばそうね……新しいクラスの担任が初日から黒板消しのイタズラにあったときとかは……」

 ガラガラ、ボフッ――

 例え話を口にした途端、それは現実のものとなった。
 勢いよくドアが開かれると同時に、チョークがたっぷり塗られた黒板消しが、ドアを開けた張本人へと襲いかかった。
二年C組の担任となった新人男性教師、三枝喜一郎(さえぐさきいちろう)は緊張のあまり、男子生徒が仕掛けた陳腐なイタズラにまんまとひっかかった。
「あ……」
リリスとはるかが、呆然と立ち尽くす教師に目をやると同時に、教室中からドッと歓声が湧き上がった。
「ぶはははは!! やったやった、ひっかかったぞー!」
「今どきこんなイタズラにやられる先生初めて見たぜ!!」
「ちょ、ちょっと男子やめなさいよ……だけど、おもしろい!」
 あまり教師を笑うことはしたくなかった行儀の良い女子ですらも、堪えきれずに失笑するありさまだった。三枝は幸先の悪い門出に途方もない不安を抱きつつ、溜息を吐いた。
 自身に直撃してなお、大量のチョークにまみれた黒板消しを拾い上げ、真っ白になった頭を払いながら教壇に向き合う。まだ笑いの収まらない教室を見渡し、少しバツが悪そうな顔をしながら自己紹介をする。
「えー……今日からこのクラスの担任になりました三枝です……初日から手厚い歓迎をどうも。できればその……そんなに笑わないでくれると嬉しいな」
 照れ隠しに頭を掻くと、チョークの粉が舞い上がり、さらに教室中の笑いを誘う。
 その光景を目にしたリリスは、これから自分たちの担任となる教師に向かい、すかさず言葉を投げかけた。
「先生、無理です。この状況で笑うなと要求することこそが滑稽だと思っていただけると幸いです」
「リ、リリスちゃん!? そんな真顔で何を……!」
 真顔のリリスから飛び出す容赦ない毒舌が周囲をさらに笑いの渦に包み込む。
 三枝は鋭い棘のような言葉を受けてあんぐりと口を開けたまま硬直した。ただひとり、彼を笑わないでいたはるかは、何とかこのクラスの場を収めようと奮闘したのだった。

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