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Simple words 2

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厨房に入ると、今だに不機嫌な顔をしたキャスがアムロを待っていた。
「あの男は帰ったか?」
「あの男って…大事なお客様だぞ」
「あの男はいつもアムロを見ている。時々私の事も見ていて胡散臭い」
どうやらキャスは、前からマイアーの違和感に気付いていた様だ。
『俺のニュータイプ能力も当てにならないな』
アムロはクスクス笑いながらキャスの髪をそっと撫ぜる。
「気のせいだよ」
「私はアムロが心配なんだ!」
気付けば自分の事を“私”と呼ぶ様になっていたキャスに、少しだけシャアを重ねる。
「アムロ!」
自分よりも随分と背の高くなったキャスの頭をグイッと引き寄せ、軽く唇にキスをする。
「大丈夫だよ」
「アムっ!」
突然のキスに、顔を真っ赤に染めて戸惑うところはまだまだ可愛いなと思う。
これがシャアなら、そのまま逆に顎を掴まれてディープキスに持ち込まれているだろう。
『ふふ、こういう所が二人の違いかな』
「キャス、愛してるよ」
あんなに言うのが怖かった言葉が、今はスルリと口から零れる。
シャアを失った時、もう二度と大切なものを作るまいと心に決めた筈なのに、そのシャアから大切なものを貰った。
シャアの代わりではなく、キャスバルという宝物を…。
今度こそ失いたくない。
アムロはキャスの青い瞳を愛おしそうに見つめる。
「キャス、君を心から愛してる。だから信用してくれ。俺は大丈夫だから」
「アムロ…」
キャスはこちらを真っ直ぐに見つめるアムロから、自分を愛おしむ心を感じて胸が熱くなる。
そして、その想いをキャスも言葉に乗せる。
「私もアムロを心から愛してる、ずっと傍にいてくれ」
そのままギュッとアムロの身体を抱き締める。
あんなに大きく感じた身体は、今では自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
それだけ長い間、ずっとアムロだけを想ってきた。その想いはこれからもずっと変わらないだろう。
キャスは腕の中のアムロの体温を感じながら、その歓びに心が震える。
そして堪らず、アムロの頬に手を添えて上向かせると、熱く深いキスをした。
溢れる想いを伝える様に…。
長い口付けが終わり、互いの唇が離れたその時、カランと店のドアの開く音がする。
「あっ!ああ、ほらっ、お客さんだ」
アムロは顔を少し赤らめながらもニッコリ笑いながら、キャスの肩を叩いてカウンターの中へと消えて行った。


『愛してる』
それは Simple Words
けれど、その言葉の中には語り尽くせぬ想いが詰まっている…。
朝陽が照らすように、繰り返す波のように二人の間で交わされる大切な言葉。
君が僕にくれた言葉。
僕が君に贈る言葉。


end

2018.10.28

作品名:Simple words 2 作家名:koyuho