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Simple words 3【番外編】

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「ん…?何かって言うか…、とりあえず、もうバレてたから素性は話したよ」
実のところ、キャスはよくこうしてマイアーの元を訪れていた。
マイアーの正体を知った上で、色々と相談していたのだ。
「それだけか?」
ジッと見つめるキャスに、思わず笑いが込み上げる。
「ふふ、それ以上は内緒かな」
「おい!マイアー!」
「ははは、何々?キャスくんてば、もしかして俺とマスターが浮気してるとでも思った?」
「そ、そんな訳ないだろう!!アムロが浮気なんかする筈がない!」
「その自信は何処から来るんだか」
「アムロは私を心から愛してるからだ!」
「なんだ、分かってるじゃないか。だったらそんな心配無用だろ?」
「それはそうだが…」
どうにも納得がいかないキャスに、マイアーが人の悪い顔を浮かべる。
「そんなにグラグラしてたら、本当に俺が横から掻っ攫ってやるぞ」
「なんだと!?」
ムキになるキャスに、大人の余裕で上から見下ろす。
まさか、ネオ・ジオン総帥に瓜二つの人物に、こんな態度で接する事になるとは思わなかった。
実際本人に会った事は無いが、目の前にいる青年は間違いなくネオ・ジオン総帥 シャア・アズナブルのクローンなのだ。
その不思議な巡り合わせに、マイアーは感慨深げにキャスを見つめる。
「まぁまぁ、そんなにムキにならずに。今日はそれだけ言いに来た訳じゃないんだろう?」
「あ…ああ、実は…アムロにクリスマスプレゼントを買いたいのだが、何が良いか決めかねていて…何か良いものがあればと…」
さっきの勢いは何処へやら、しおらし気に話す姿は、とてもじゃ無いが大きな組織の総帥には見えない。
総帥の心が少し溶け込んでいるとしても、やはり彼は彼なのだと、マイヤーは少しホッとする。
「なるほど、それじゃこの機会にエンゲージリングでも贈ったら?あ、それよりマリッジリングのが良いか!」
「リング!?」
「ああ、マスターを離したくないんだろう?それならそれで形として繋ぎ止めたらどうだい?」
マイアーに言われ、キャスがふむと頷く。
友人と始めた事業も安定し、収入もそれなりにある。
もう、十分にアムロを養える。
「うむ、いいな。良い店を知っているか?」
「勿論!最近マイアー商会では貴金属や宝飾品も扱うようになったんです!是非ウチの店で!さあ、奥の部屋へ!直ぐにいくつか見繕ってお持ちします!」
そんな調子の良いマイアーに、キャスが唖然とした表情を浮かべる。
「あんた…本当に元軍人か?っていうか…本職を忘れてないか?」
本職はネオ・ジオンのスパイで現在はアムロ・レイとキャスの護衛。
「いや〜、そうなんだよね。思ったよりもこっちの仕事が向いてたみたいでさ!今ではどっちが本職か分からない程だよ」
あっけらかんと言い放つマイアーに、キャスは呆れると共に、少し肩の力が抜ける。
「なんて言うか…あんたらしいって言うか…平和だな…」
「本当、平和だよね!」
ニッコリ微笑むマイアーに、釣られてキャスも微笑む。

「ああ…本当に…平和だな…」

過去の激しい戦争の事を自分は知らないが、今のこの平和が、アムロの手によってもたらされた事は知っている。



その後、お店で派手にプロポーズをしたキャスにより、二人の関係は常連客全ての知るところとなった。


end

2018.11.1


作品名:Simple words 3【番外編】 作家名:koyuho