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LIMELIGHT ――白光に眩む2

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 だが、エミヤは意地でも翌朝の食事の下拵えを進める。レイシフトから戻ってきたのは深夜だ。
 食堂には誰もおらず、きれいに片付いている。士郎がエミヤの留守中にきっちりとここの管理をしてくれていたとわかった。
 幾日留守にしたかは、まだわからないが、その間、士郎に厨房を丸投げしてしまったことになる。
 確かに士郎の身体は回復してはいるが万全ではないのだ。身体に無理を押してなどいたのなら、また彼は傷病人になる。せめて、己がカルデアにいるのなら、少しでも負担を軽くしてやりたい。
 せっかく明るい顔を遠目にではあるが、時々見られるようになったというのに……。
(私には向けない顔を、クー・フーリンには見せる……)
 士郎は、クー・フーリンと懇意にしているように見える。クー・フーリンも何かと士郎を気にかけている。士郎は、自分といるよりも彼といる方がいいのではないかと、そんなことを思って胸糞悪くなる。
(これは、奴の言った……、拗ねている、というやつか……?)
 この苛立ちも、焦りも、そこからきているということなのか。
「ああ……」
 顔が見たい。
 何を呆けたことを考えているのか、と自分自身につっこみたくなるが、レイシフトの最中でも士郎のことがずっと脳裡にこびりついていたのは隠しようもない事実だ。
(早く……)
 下拵えを終えてしまおう、と、エミヤはだるい身体を押して、調理を進めた。


 ふらつきながら自室へ向かう。下拵えは終わった。あとは少し自炊の知識がある者ならば、誰でもできる程度には整えておいた。
 部屋の前に辿り着き、エミヤを感知する前に自動のドアが先に開く。
「あ」
 驚きに彩られる琥珀色の瞳。
「…………」
「エミヤ、さっき、藤丸が、」
 何やら焦った顔で、士郎がエミヤを見ている。
(ああ……、私を見ている……)
 ほっとしたのか、なんなのか……。
 その声を聞いてはいるが、内容は理解できていない。
(安堵、なのか…………?)
 エミヤは目の前に立つ士郎に手を伸ばす。
「え?」
 暗がりで瞠目した士郎は、琥珀色の瞳に驚きを宿している。
 その姿を見て、ほっとしている。
 さほど身長差はない。
 目線の高さはほとんど変わらない。
 僅かに己の方が上にある程度。
(ここに……)
 己の元となる者で、殺してやる、と憎み続けた存在。
(ああ……、戻ってきた……)
 このカルデアに先に居たのはエミヤの方だ。
 だというのに、士郎がここにいると、帰ってきたような気になる。
 伸ばした腕でその身体をしっかりと抱きしめる。
(ああ、こうしていることが…………)
 そこで、ふっつりと意識が途絶えた。


LIMELIGHT――白光に眩む 2  了(2018/11/4)