Lovin’you afterCCA16
Lovin’you afterCCA16
コロニー「スウィートウォーター」
ネオ・ジオンの本拠地として発展を続けるこのコロニーは、難民収容用として急ごしらえで作られたコロニーで、密閉型とオープン型を繋ぎ合わせた歪な造りとなっており、その無理な造りから、不具合の多いコロニーだった。
「こっちは接続完了!そっちはどう?」
「こっちもOKだ!撤収するぞ」
「了解」
コロニー外部の太陽光パネルの不具合を修理する為、作業用モビルスーツでコロニー外に出て作業をしていた作業員がドックへと戻ってくる。
それを、真っ赤な総帥服を着たこのコロニーの最高権力者が怒りを露わにしながら迎えた。
「君は一体何をしている!」
コックピットから降りてくるパイロットに向かい叫ぶと、パイロットがヘルメットを脱ぎながらその人物の元まで飛んでくる。
「何って、パネルの修理だけど」
「そんなものは見れば分かる。私が言いたいのはアムロ、なぜ “君が” 作業をしているかという事だ!」
「なぜって、故障を見つけたから?」
ヘルメットに押し込んでいた長い癖毛を手櫛で簡単に整えながらアムロが答える。
「見つけたからではない!君は作業員ではないだろう!?」
「まぁ、違うけど…みんな忙しくて手が離せそうもなかったから、それなら出来る人間がやればいいだろう?」
尤もな答えだが納得は出来ない。
「しかし、危険な作業だ。君に何かあったらどうする!?もう少し自分の立場というものも考え給え!」
「危険って、別に戦闘する訳じゃないし、第一私の立場だからこそ積極的に行動すべきだろう?このコロニーの人々が快適に暮らせるように尽力するのが私の仕事だ」
「しかし…!」
「大佐、そろそろお時間です」
シャアが反論しようとするのを、側近のナナイが止める。
「…ナナイ…」
「大佐もこの程度の作業でアムロ大尉がどうにかなるとは思っていらっしゃらないでしょう?それにアムロ大尉の言う通り、作業の手が足りない事も事実です」
「それはそうだが…」
「技術者の養成体制や雇用の確保は今後の課題です。早急に進めなければなりませんね」
「そうだね、その辺は私も思う。私に案があるんだけど時間がある時に相談に乗って貰ってもいいかな?ナナイ大尉」
「勿論です、アムロ大尉」
「ありがとう」
シャア抜きで話を進めるアムロとナナイにシャアが溜め息を漏らす。
「分かった…すまなかった」
降参とばかりに両手を上げてアムロを見つめると、アムロもそれに応えるように微笑む。
「勝手な事してごめん、それに心配してくれてありがとう」
「いや…私の方こそすまなかった」
「いいよ」
二人の言い争いが収まって、周りのスタッフたちから安堵の声が聞こえる。
「アムロ、私たちはこれから総帥府に戻るが、君も一緒に戻るか?」
「いや、まだ調整が残っているし、簡単なトラブル処置について説明しときたいから後でギュネイと戻るよ」
「そうか、分かった。しかしあまり遅くならないように!君は夢中になるといつも時間を忘れて…」
「あー!分かった、分かった!」
いつもの説教が始まりそうになり、アムロがストップを掛ける。
「分かってるって!それに、なんか今日はライラに早めに帰るように言われているから、ちゃんと帰るよ」
今朝、珍しく娘のライラがお願いをしてきた。
何か相談事でもあるのだろうかと心配しつつ、それを了承した。
「ならば良いが…できれば18時には戻ってきてくれ」
「18時?うん、分かった」
シャアはそれとなく他のスタッフにも聞こえるように時間を指定する。
「では私は戻る。アムロ、くれぐれも時間に遅れないように!皆も大変だと思うが宜しく頼む、今日視察した内容を元に新しい設備への予算を組むので安心してくれ給え」
スタッフ達への労いの言葉を掛けると、ナナイに引き摺られるように去って行った。
その姿を見送り、見えなくなったところでその場にいた全員の肩から力が抜ける。
「はぁ、やっぱり目の前に来られると緊張するな…」
スタッフの一人が大きく息を吐きながら呟く。
「ああ、でも流石に対応が早いな、先週予算追加の要望を上げて今日の視察だろ?直ぐに対応もしてくれそうだし、これならなんとかなりそうだ」
「ああ、そうだな」
「しかし、本当に良い男だな。年齢を重ねてまた男前が上がったっていうか…男の俺でもドキッとするぜ」
「ナナイ大尉も相変わらず綺麗だったな!それに結婚して子供を産んでから、なんか雰囲気が少し丸くなったっていうか…」
「そうそう、なんか前みたいな怖い感じが無くなった」
ナナイは昨年アルと結婚し、女児を出産した。
彼女らしく直ぐに職務に復帰しシャアを支えてくれている。
夫のアルからしてみれば、カイルとライラに続いて三人目の子育てなので、余裕でサポートが出来るのでナナイも安心して職務に戻れたのだ。
スタッフ達の会話を聞きながら、二人の印象が皆に概ね良好だと知り、自然とアムロの顔に笑みが浮かぶ。
過去に大罪を犯した人間だ、このコロニーの人々は元々彼を支持している人が多いが、やはり中には嫌悪する人間も居る。
アムロは時々シャアと共にこうして視察に赴きながら、人々の声に耳を傾けて安堵する。
が、次の瞬間、チーフの一言でアムロが固まる。
「それにしても、総帥がカミさんの尻に敷かれているって言うのは本当だったんだな!」
その一言に皆がドッと笑い出す。
「なっ!チーフ!そんな事ないだろう!?」
慌てるアムロにスタッフみんながその顔を見つめ、更に笑い出す。
「おいおい、今の二人の会話を聞いててそれはないだろう?」
「あの総帥に怯まず反論出来るアムロ大尉は流石ですよ!」
「反論って別に本当の事を言っただけで…!」
「いやいや、普通はあの顔を前にしたら言えないから!それも怒った総帥に向かってなんて!」
「だって、別に悪い事をしてた訳じゃないし、怒ってたって言っても心配してくれてたからで…」
「はいはい、ご馳走さま!」
「だから~!」
設備関係の部署には以前から個人的に何度か顔を出している為、アムロはここのスタッフとも親しい。
アムロの気さくな態度と、技術屋同士で会話も合う事から、総帥夫人とはいえ自然と打ち解ける事が出来た。
いや、確かに初めは元連邦のパイロットであるアムロに反感を持つ者も居た。
しかし、テロ事件で配信された映像や直接アムロと接する事で、皆がアムロの想いを理解し受け入れてくれたのだ。
「それにしても今日は何かあるのか?」
チーフの問いにアムロがうーんと悩む。
「うーん。いや…何だろう。今朝、娘に早く帰って来てとは言われたけど…思い当たらないなぁ」
「まぁ、何はともあれ、さっさと作業を始めるか」
「そうだね…って、本当にシャアを尻に敷いてなんかいないからな!」
「はいはい」
「はいはいって!分かってる!?」
総帥府に向かうエレカの中で、シャアが「はぁ」っと溜め息を吐く。
「ふふ、アムロ大尉は完全に忘れてますね」
クスクス笑うナナイに、シャアも同意する。
「そのようだな」
「スタッフに時間も伝えた事ですし、おそらく大丈夫でしょう」
「折角、今日はアムロと公務を合わせて一緒に行動をしようと思っていたのに…」
コロニー「スウィートウォーター」
ネオ・ジオンの本拠地として発展を続けるこのコロニーは、難民収容用として急ごしらえで作られたコロニーで、密閉型とオープン型を繋ぎ合わせた歪な造りとなっており、その無理な造りから、不具合の多いコロニーだった。
「こっちは接続完了!そっちはどう?」
「こっちもOKだ!撤収するぞ」
「了解」
コロニー外部の太陽光パネルの不具合を修理する為、作業用モビルスーツでコロニー外に出て作業をしていた作業員がドックへと戻ってくる。
それを、真っ赤な総帥服を着たこのコロニーの最高権力者が怒りを露わにしながら迎えた。
「君は一体何をしている!」
コックピットから降りてくるパイロットに向かい叫ぶと、パイロットがヘルメットを脱ぎながらその人物の元まで飛んでくる。
「何って、パネルの修理だけど」
「そんなものは見れば分かる。私が言いたいのはアムロ、なぜ “君が” 作業をしているかという事だ!」
「なぜって、故障を見つけたから?」
ヘルメットに押し込んでいた長い癖毛を手櫛で簡単に整えながらアムロが答える。
「見つけたからではない!君は作業員ではないだろう!?」
「まぁ、違うけど…みんな忙しくて手が離せそうもなかったから、それなら出来る人間がやればいいだろう?」
尤もな答えだが納得は出来ない。
「しかし、危険な作業だ。君に何かあったらどうする!?もう少し自分の立場というものも考え給え!」
「危険って、別に戦闘する訳じゃないし、第一私の立場だからこそ積極的に行動すべきだろう?このコロニーの人々が快適に暮らせるように尽力するのが私の仕事だ」
「しかし…!」
「大佐、そろそろお時間です」
シャアが反論しようとするのを、側近のナナイが止める。
「…ナナイ…」
「大佐もこの程度の作業でアムロ大尉がどうにかなるとは思っていらっしゃらないでしょう?それにアムロ大尉の言う通り、作業の手が足りない事も事実です」
「それはそうだが…」
「技術者の養成体制や雇用の確保は今後の課題です。早急に進めなければなりませんね」
「そうだね、その辺は私も思う。私に案があるんだけど時間がある時に相談に乗って貰ってもいいかな?ナナイ大尉」
「勿論です、アムロ大尉」
「ありがとう」
シャア抜きで話を進めるアムロとナナイにシャアが溜め息を漏らす。
「分かった…すまなかった」
降参とばかりに両手を上げてアムロを見つめると、アムロもそれに応えるように微笑む。
「勝手な事してごめん、それに心配してくれてありがとう」
「いや…私の方こそすまなかった」
「いいよ」
二人の言い争いが収まって、周りのスタッフたちから安堵の声が聞こえる。
「アムロ、私たちはこれから総帥府に戻るが、君も一緒に戻るか?」
「いや、まだ調整が残っているし、簡単なトラブル処置について説明しときたいから後でギュネイと戻るよ」
「そうか、分かった。しかしあまり遅くならないように!君は夢中になるといつも時間を忘れて…」
「あー!分かった、分かった!」
いつもの説教が始まりそうになり、アムロがストップを掛ける。
「分かってるって!それに、なんか今日はライラに早めに帰るように言われているから、ちゃんと帰るよ」
今朝、珍しく娘のライラがお願いをしてきた。
何か相談事でもあるのだろうかと心配しつつ、それを了承した。
「ならば良いが…できれば18時には戻ってきてくれ」
「18時?うん、分かった」
シャアはそれとなく他のスタッフにも聞こえるように時間を指定する。
「では私は戻る。アムロ、くれぐれも時間に遅れないように!皆も大変だと思うが宜しく頼む、今日視察した内容を元に新しい設備への予算を組むので安心してくれ給え」
スタッフ達への労いの言葉を掛けると、ナナイに引き摺られるように去って行った。
その姿を見送り、見えなくなったところでその場にいた全員の肩から力が抜ける。
「はぁ、やっぱり目の前に来られると緊張するな…」
スタッフの一人が大きく息を吐きながら呟く。
「ああ、でも流石に対応が早いな、先週予算追加の要望を上げて今日の視察だろ?直ぐに対応もしてくれそうだし、これならなんとかなりそうだ」
「ああ、そうだな」
「しかし、本当に良い男だな。年齢を重ねてまた男前が上がったっていうか…男の俺でもドキッとするぜ」
「ナナイ大尉も相変わらず綺麗だったな!それに結婚して子供を産んでから、なんか雰囲気が少し丸くなったっていうか…」
「そうそう、なんか前みたいな怖い感じが無くなった」
ナナイは昨年アルと結婚し、女児を出産した。
彼女らしく直ぐに職務に復帰しシャアを支えてくれている。
夫のアルからしてみれば、カイルとライラに続いて三人目の子育てなので、余裕でサポートが出来るのでナナイも安心して職務に戻れたのだ。
スタッフ達の会話を聞きながら、二人の印象が皆に概ね良好だと知り、自然とアムロの顔に笑みが浮かぶ。
過去に大罪を犯した人間だ、このコロニーの人々は元々彼を支持している人が多いが、やはり中には嫌悪する人間も居る。
アムロは時々シャアと共にこうして視察に赴きながら、人々の声に耳を傾けて安堵する。
が、次の瞬間、チーフの一言でアムロが固まる。
「それにしても、総帥がカミさんの尻に敷かれているって言うのは本当だったんだな!」
その一言に皆がドッと笑い出す。
「なっ!チーフ!そんな事ないだろう!?」
慌てるアムロにスタッフみんながその顔を見つめ、更に笑い出す。
「おいおい、今の二人の会話を聞いててそれはないだろう?」
「あの総帥に怯まず反論出来るアムロ大尉は流石ですよ!」
「反論って別に本当の事を言っただけで…!」
「いやいや、普通はあの顔を前にしたら言えないから!それも怒った総帥に向かってなんて!」
「だって、別に悪い事をしてた訳じゃないし、怒ってたって言っても心配してくれてたからで…」
「はいはい、ご馳走さま!」
「だから~!」
設備関係の部署には以前から個人的に何度か顔を出している為、アムロはここのスタッフとも親しい。
アムロの気さくな態度と、技術屋同士で会話も合う事から、総帥夫人とはいえ自然と打ち解ける事が出来た。
いや、確かに初めは元連邦のパイロットであるアムロに反感を持つ者も居た。
しかし、テロ事件で配信された映像や直接アムロと接する事で、皆がアムロの想いを理解し受け入れてくれたのだ。
「それにしても今日は何かあるのか?」
チーフの問いにアムロがうーんと悩む。
「うーん。いや…何だろう。今朝、娘に早く帰って来てとは言われたけど…思い当たらないなぁ」
「まぁ、何はともあれ、さっさと作業を始めるか」
「そうだね…って、本当にシャアを尻に敷いてなんかいないからな!」
「はいはい」
「はいはいって!分かってる!?」
総帥府に向かうエレカの中で、シャアが「はぁ」っと溜め息を吐く。
「ふふ、アムロ大尉は完全に忘れてますね」
クスクス笑うナナイに、シャアも同意する。
「そのようだな」
「スタッフに時間も伝えた事ですし、おそらく大丈夫でしょう」
「折角、今日はアムロと公務を合わせて一緒に行動をしようと思っていたのに…」
作品名:Lovin’you afterCCA16 作家名:koyuho