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鳥籠の番(つがい) 2

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研究員連れられ、アムロはいつもの検査室へと足を踏み入れた。
「すみません、腕を出してください」
椅子に座らされ、いつものように何か薬物を注射される。
しかし、今日はいつもとは違った。
薬物を注射された瞬間、グラリと身体が揺れて意識が遠のく。
「なっ…」
意識が途切れる直前に見た研究員の目が、憎悪に歪んだ色を見せていた事にアムロは恐怖を覚えつつも意識を失ってしまった。



アムロが意識を取り戻した時、そこはいつもの検査室ではなく、色々な器具が置かれた部屋だった。
シート式の検査台に座らされ、四肢はシートに固定されている。
「…こ…こ…」
そして、そこがかつて苦しい実験をされていた実験室だと言う事に気付いた瞬間、アムロの脳裏に恐怖が蘇る。
「いっ嫌だ!!」
ガクガクと震える身体を必死に動かしてシートから降りようとするが、固定された両手首に痛みが走るだけでびくともしない。
「嫌だ!降ろせ!ここから出してくれ!」
叫ぶアムロの元に、先ほどの研究員が姿を現わす。
「あまり暴れると怪我をしますよ」
「これを外せ!」
「ダメですよ。これから貴方にある体験をして貰うんですから」
研究員は冷たい笑みを浮かべてアムロの頬をそっと撫でる。
「アムロ・レイ、“連邦の白い悪魔”…貴方の所業を…身を以て味わってもらいたいのです」
「俺の…?」
「ええ」
研究員はある一枚のディスクをアムロの前にヒラヒラと見せる。
「これは、貴方に撃墜された兵士の記録データです」
「……」
「貴方にはこれから、“彼”の最期の瞬間を体験して貰おうと思います」
「なっ…⁉︎」
「面白いでしょう?貴方ならきっと、このデータから“彼”を感じ取れる筈だ。“貴方”に撃墜される“彼”は最期に何を思ったのでしょうね?」
その昏い笑みに、アムロは背筋をぞくりと震わせる。
「や…やめろ…」
「ふふ、楽しみだなぁ」
「嫌だ!」
研究員はそのディスクにキスをすると、楽しそうに笑ってディスクをセットしていく。
「さぁ、ショーの始まりだ」

シートの上部からドーム状のカバーが降ろされていき、アムロの頭を覆い隠す。
そして、頭部に嵌められたヘッドギアが音を立てて動き出すとアムロの脳に直接何かの信号が送られる。
次の瞬間、アムロの視界は真っ黒に染められ、意識が取り込まれていく。
「うわぁぁぁ」

気付くと、アムロは宇宙空間の中にいた。
目の前に広がる星の輝き、そして閃光。
操縦桿を握り、ビームが飛び交う戦場を飛行している。
『ここは…戦場?』
アムロは荒い呼吸音を聞きながら、自分が誰か他の人間の“中”に入っていて、その人物の目から周囲を見ている事に気付く。
俺は…この人の中にいる…。
そして、早鐘を打ち心臓の鼓動と恐怖に震える身体。操縦桿を握る腕に汗を掻いている事すら生々しく感じる。
このパイロットの状況に、アムロの心臓も引きずられるように鼓動が早くなる。
「はぁはぁはぁ」
男の荒い息づかい響くコックピット。
すぐ横を掠める閃光。
「クソ!少しでも戦績を残してやる!」
コックピットの操作パネルの端には、女性と子供の写真が貼ってあった。
この男の家族なのだろう。
必死にビームを放ち、目の前迫るジム向かって攻撃を仕掛ける。
『ああ…そんな攻撃じゃダメだ、やられる!』
アムロは思うが、この身体を動かしているのはパイロットの男で、アムロはただ中から見ているだけで何も出来ない。
そして、視線の先に白い物体を捉える。
その瞬間、男の心臓が跳ね上がるのを感じる。
「奴だ!あの白い奴だ!」
恐怖に慄く男に引きずられるように、アムロの鼓動も早くなる。
『ああ…ダメだ…やられる』
そして次の瞬間、目の前に白い機体が現れ、ビームサーベルが振り下ろされる。
「わぁぁぁぁ!」
まるでスローモーションようにサーベルが自分向かってくるのが見える。
その光はコックピットを赤く染めていき、目の前が眩しく光る。
パイロットの男は一瞬視線を写真へと向けると、誰かの名前を大声で叫ぶ。
「“ ”!“ ”!」
写真の人物の…家族の名前だろう…。
次の瞬間、激しい衝撃が身体を襲い自身の身体を炎が焼いていく。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!」
身を焼く熱と絶望の心がアムロに襲いかかる。
アムロの心臓の鼓動が大きく脈打った次の瞬間、ヒューと息が止まる。
アムロの心臓は痙攣しながらその脈動を止め、呼吸が苦しくなる。
「あっがっぁぁ」
呼吸が出来ない苦しみと死の恐怖が襲いかかり、アムロが目を見開いて身体を痙攣させると、目の前の景色が遠のいていく。
「あっぐぅ…」
『死ぬのだ』そう思った瞬間、脳裏に美しい金髪とスカイブルーの瞳が浮かぶ。
「シャ…ア…!」
最後にその名を呼ぶと、アムロの意識は完全にブロックアウトした。

「…ああ、心臓が止まりましたか…」
研究員はそう呟くと、徐ろにアムロの元へと足を進めた。


to be continued...


作品名:鳥籠の番(つがい) 2 作家名:koyuho