二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Lovin’you afterCCA17

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
Lovin’you afterCCA17


今日は総帥の誕生祭ということもあり、総帥府内は朝からバタバタとしている。
そんな中、真っ赤な総帥服に身を包み、ウンザリとした顔で執務室の机に頬杖をつく総帥の姿を見て、傍らに控えるアムロがクスクスと笑う。
「そんな顔しないで」
「道化もここまでくると馬鹿馬鹿しくてな」
ネオ・ジオンは総帥であるシャアが率いてはいるが、かつてザビ家が支配したジオン公国のような王政ではない。
だから総帥の誕生日など祝う必要はないのだ。
しかし、少しその辺りを混同した者たちが勝手に行事を作り上げていく。
「実際の主催は我々ではなく、このコロニーの住人達です。主に商売を生業とする者達がイベントを立ち上げ商売に利用していると言うのが本当のところです」
ナナイがコーヒーを手に二人の元に現れる。
「商売人はいつの時代も強かだよね」
「そうですね。しかし、このお祭り騒ぎでの経済効果が結構なものなのは事実ですから」
「それはそうだが…」
ナナイの言葉に、シャアも複雑な表情を浮かべ溜め息混じりに答える。
確かに、このお祭り騒ぎで観光客も多く訪れる事からコロニーにかなりの収入が入る。
そしてそれに合わせて雇用も増える。
スウィート・ウォーターの住人にとっては当然ながらプラスになるのだ。
それに古いコロニーの維持に頭を悩ませる政府としても、シャアひとりが道化になる事で収入を得られるなら進んで行事のひとつくらい企画しようというものだ。
「コロニー内のこのお祭り騒ぎの中、こちらが何もしない訳にもいきませんし、こうして行事を設けて大佐には民衆の前で演説をしていただく事になってしまう訳です」
「私は客寄せパンダか」
シャアがブスリと不機嫌そうな表情を浮かべ、大きな溜め息を吐く。
「まぁ、そうなるよね。でもそれで景気が良くなるならいいじゃない。頑張んなよ、シャア」
容赦の無いアムロの言葉に、シャアが机に突っ伏する。
「アムロ…」
良くも悪くも合理的なアムロとしては、それで経済が潤うならば仕方しと割り切れる。
「しかし、人が集まれば揉め事も起こる。良からぬことを考える輩も現れるからな。警備に金が掛かるのが問題だな」
シャアはブツブツ文句を言いながらも警備体制についての計画書を確認し、指示を出していく。
「そうだね。何も起こらなければ良いけど…」
「そういえばアムロ、君はなぜ軍服なんだ?私の伴侶としてドレスの一つでも着てくれればいいじゃないか」
こうなったら少しでもメリットを求めようとシャアが訴える。
「え?別に王政な訳じゃないんだから家族が式典に出る必要ないだろ?私はモビルスーツ隊の隊長として出席するよ」
そんなささやかな望みもバッサリと打ち捨てられ、シャアはまた机へと突っ伏する。
「…アムロ…」


コロニーの外では、テロなどを警戒してレウルーラとラー・カイラムが巡回に当たっていた。
「ポイントAー1、Aー2問題無いか?」
〈こちらポイントAー1異常なし!〉
〈ポイントAー2も異常なし!〉
「よし、引き続き警戒に当たれ」
〈了解〉

「やれやれ、中はお祭り騒ぎだってのに、こっちは警備かよ…つまんねーなぁ」
オペレータの一人がボヤくのを、ブライトが肩を竦めて宥める。
「まぁ、そうボヤくな。きっと今、一番ボヤきたいのは今日の主役だろう」
「ははは、まぁそうでしょうね」
「さぁ、そろそろ式典の始まる時間だ。何が起こるか分からん。気を引き締めていくぞ」
「了解!」


総帥府前の広場には、大勢の人々がひしめき合い、今か今かと総帥が現れるの待っている。

「スゲェ人だな。流石はスペースノイドの希望の星ってか?」
細身の身体にグレーのスーツを身に纏い、鋭い目付きをした男が、皮肉を言いながらその光景をカメラに収める。
「アポ取ってねぇけど取材に応じてくれるかね」
総帥が現れるであろう総帥府のテラスへと視線を向けると、側近達が次々と姿を現し始める。その中の一人、赤茶色の髪の女性士官を見つめ、男は口角を上げる。
「まぁ、いざとなりゃコネは幾らでもあるか」

男が呟いた直後、民衆が一斉に歓声を上げる。
見上げると、テラスに真っ赤な総帥服を身に纏った金髪の美丈夫が姿を現し、歓声に応えるように右手を挙げている。
「凄い人気だな。とても地球に隕石落とそうとした男とは思えないな」
そしてふと、視線を周囲に向けると、男達が数人、私服だが警備兵と思われる者達に取り押さえられて連行されていく。
「まぁ、この機会に事を起こそうって輩も当然いるか。しかし手際がいいな。ありゃ予め目星つけて泳がせてたな」
当然ながら反感を持つ者がいる事も確かだ。
人類の革新の為、スペースノイドの独立の為とは言え、あれだけ多くの犠牲を出したのだ、反感を持つ者がいるのは致し方あるまい。
それでも尚、この男には未来を懸けてみたいと思わせるカリスマ性がある。
そして、それを成し遂げる力も。
あとは、その力を正しい方向へと導く“導き手”がいれば、間違いなくスペースノイドの未来を切り開く事が出来るだろう。
男は総帥の隣に寄り添うように立つ、赤茶色の髪の女性士官へと視線を向ける。
「“あいつ”が傍にいる限りはあの男が暴走する事は無いだろうな」
そう言って笑うと、男は数枚の写真を撮ってその場を後にした。


演説が終わり、執務室に戻ってきたシャアがマントを無造作に外してドカリとソファに座る。
そして襟元を緩めて息を吐くと、傍に優しい気配を感じる。
「お疲れ様」
「ああ、君も疲れただろう?」
側に立つアムロを引き寄せて頬にキスをする。
「私は横に居ただけだから」
「そんな事は無かろう」
そのまま唇にキスをしながら、アムロのインカムを外す。
「あそこから君が指示を出してくれたお陰で“ネズミ”達をスムーズに追い払えた」
「ふふ、あの場所が一番、貴方に向かう悪意を感じ易いからね」
アムロはシャアの隣に立ち、シャアに向けられる悪意の思惟を感知して警備へと指示を出していた。
予めナナイやカイルが犯罪予測プログラムで予測し、対処はしていたが、当日のあの瞬間までに全てを対処する事は難しい。
だからこそ、最終的な警備はシャアのすぐ側でアムロがすると進言した。
正直、シャアとしてはアムロを危険に晒すのは賛成し兼ねたが、周囲をカミーユとジュドー、カイルやライラも固めるからという事で渋々了承した。
「私はいつも君に助けられる」
「私は私の大切なものを守ってるだけだよ」
今度はアムロからシャアにキスをしてギュッと抱きしめる。
「ちゃんと守れて良かった」
「ああ、ありがとう」
そのまま二人、互いの存在を確かめるように深いキスをして抱きしめ合う。
と、そこにドアをノックする音が響き渡る。
離れようとするアムロをシャアが引き止めるように、抱き締める腕に力を入れる。
「ん!んん」
アムロが焦ってもがいている間にドアが開かれ、入ってきた人物の「げっ」と言う小さな叫びが耳に届く。
「おい、ノックしたの聞こえただろうが!」
その声に、ようやくシャアがアムロを解放し、口角を上げて入ってきた男に視線を向ける。
「ああ、すまない。アムロに夢中で気が付かなかった」
「嘘つけ!」
作品名:Lovin’you afterCCA17 作家名:koyuho