Lovin’you afterCCA17
そんな二人の会話に顔を赤く染めながら、アムロはその来訪者の名を呼ぶ。
「カイさん…」
「おう、アムロ。久しぶりだな」
「お久しぶりです…」
羞恥で顔を手で半分隠しながらも、久しぶりの再会に笑みが浮かぶ。
「お前もこんな男のお守りで大変だな」
「アポも無く来訪してきて何を言う」
「どうせ俺が来ることなんてとっくに知ってただろうが」
スウィート・ウォーターに入港した時点で既にカイの動向は全てシャアに逐一報告がされており、だからこそアポ無しでもスムーズにここまで入って来る事ができたのだ。
「それを分かっていての来訪だろう?」
「まぁな。っていうか、分かってんならあんな出迎え方すんなよ」
「君が私とアムロの時間に割って入ったのだ」
「あーそうですか」
ああ言えばこう言う総帥に、カイも文句を言うのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
「それで、私に何の用だ?」
「ジャーナリストがネオ・ジオンの総帥に会いに来てする事って言ったら取材だろ?お時間頂けますかな?シャア総帥」
「ゴシップ記事はお断りだ」
「俺をそんな輩と一緒にしないで欲しいんだけど?」
互いに視線を合わせてニヤリと笑う。
「三十分だ、この後まだレセプションがあるのでな」
「承知してます」
カイはシャアの向かいのソファに座ると、シャアに向かって不敵な笑みを浮かる。
「では、総帥。宜しくお願いします」
「よかろう」
「えっと、それじゃ私は席を外すよ」
部屋を出て行こうとするアムロの腕を、シャアが引き寄せ自身の隣に座らせる。
「シャア!?」
「君も同席してくれ。その方が良いのだろう?カイ・シデン」
「そうですね。ネオ・ジオンのモビルスーツ隊隊長殿にも取材を申し込みたい。いいか?隊長殿」
「カイさん…」
アムロが困った顔をするのを、カイとシャアがニヤリと笑って見つめる。
「私の何を取材するのさ」
「まぁ色々とな」
意味深な表情のカイに嫌な予感しかしないが、シャアにガッチリと腕を掴まれていて逃げる事も出来ず、大きな溜め息を吐く。
「なんか嫌な予感しかしない…」
カイの取材の後、ぐったりと疲れ切ったアムロはレセプションへの出席準備をする為に屋敷へと戻ってきた。
「なんだかお疲れですね?」
準備を手伝ってくれているメイドにまで心配されてしまう。
「ああ、大丈夫…なんか精神的に疲れただけだから…」
カイにアクシズショックの時の事と、その後のシャアとの関係をあれこれ聞かれ、どこまでどう話すべきか悩んでいたら、シャアが横から恥ずかしい事までベラベラと話し始めるから、それを止めるのに疲れて果ててしまった。
そうこうしている間に、メイド達によってアムロはレセプション用のドレスに着替えさせられ、普段薄っすらとしかしない化粧もしっかりと施されていく。
気付けば、白いドレスにサファイアのネックレスを着けられて準備が完了する。
前から見た感じではシンプルなラインのドレスで、少しホッとする。
『今日はレースやフリルも無くて良かった』
普段あまり着る物に頓着しないアムロを着飾るのはメイド達の密かな楽しみで、毎回これでもかと言うくらい飾り立てられる。
それが今回は思いのほかシンプルで、ようやく自分要望を受け入れてくれたのかと安堵する。
しかし、背後を見ようと鏡に背を向けた瞬間、アムロの目が鏡に釘付けになる。
「え!?何だこれ!」
ドレスの背中がかなり広く開いており、と言うか殆ど生地がない、そこにあるのはチェーン状に連なるダイヤだけ。
少し背中がスースーするなとは思っていたが、思った以上の露出の多さにアムロが思わずメイド達に抗議しよう振り向くと、みんなが胸の前で指を組み、うっとりとこちらを見つめてくる。
「素敵です!折角綺麗なお背中なので、今日は少し露出を増やしてみました!すっごくお似合いです!」
「あ、いや。その…もう少し…」
「シャア総帥もきっと気に入って下さいますわ!」
「でも…コレちょっと背中が…」
「ああ!本当はスカートに大きめのスリットもあれば良かったんですが…!」
「これ以上の露出は無理!」
「それじゃ、せめてネックレスをもっと大きなサファイアのものに…総帥の瞳の色に合っていて、隣に並ぶときっと映えます!ああ!それともティアラを…」
「いや!もうこれでいいから!」
結局、皆に押し切られ、そのままレセプションの会場に行く事になってしまった。
とりあえずはファーコートを今は羽織っている為背中は見えないが、流石に会場に着いたらコートは脱がなきゃいけない。
会場に向かうエレカの中で、どうしようかと頭を悩ませていると、隣のシャアが心配気にこちらを見つめてくる。
「どうした?体調が悪いのか?」
「え?あ、いや、そんな事はないけど…」
「ならばいいが、体調が悪くなったら直ぐに言うんだぞ」
「う、うん。ありがとう…」
『うーどうしよう…恥ずかし過ぎる…、シャアもどんな反応するかなぁ…やっぱり他のドレスに替えてもらえば良かった…でもみんなが頑張って準備してくれたしなぁ』
結局どうする事も出来ないまま会場へと着いてしまう。
会場に着き、入り口でコートを脱ぐように促され、意を決してコートを脱ぐと、背後でシャアが息を飲む音が聞こえる。
『ああ、私がこんな色っぽいドレスなんてやっぱり変だよなぁ』
そう思った瞬間、シャアに背後から抱きしめられた。
「え?シャア!?」
「成る程、こう言うことか」
「は?」
首元でシャアがクスリと笑う。
「や、やっぱりこのドレス背中開きすぎだよね…私には似合わないし…こんな格好でみんなの前に出るのは恥ずかしいよな」
「確かに、皆には見せられないな」
シャアの言葉に胸が痛む。
「あ…やっぱり…みっともない…よな…」
「そんな訳なかろう。勿体無くて皆には見せられんと言うことだ」
「は?」
「綺麗だ、アムロ。最高のバースデープレゼントだ」
そう言いながら、シャアは手に持っていた薄手のショールをアムロの肩に掛け、一枚のカードをアムロに差し出す。
「何これ?」
「君の準備をしてくれた彼女達からのメッセージだ」
カードを開いて中を確認し、アムロの顔が真っ赤の染まる。
〈シャア総帥、お誕生日おめでとうございます。私達からのプレゼントです。アムロ様が恥ずかしがると思いますので、こちらのショールを掛けて差し上げて下さい。アムロ様のお背中は総帥だけのものですから♡〉
「な、これ…」
「なかなか粋なプレゼントだな」
シャアがニヤリと笑いながらそっと背中にキスをする。
「ひゃっ!」
「帰ったら存分に頂くとしよう」
「シャ、シャア!」
「さあ、行こうか」
シャアはアムロの腰に手を添えると来場客の待つ会場へと優しくエスコートして行く。
「さぁアムロ、胸を張って。私の伴侶として堂々と隣に立ってくれ」
そう言われ、アムロは顔を上げると隣のシャアを見上げる。
そして、その優しい瞳に心が落ち着いていく。
「うん…」
自分はこの人と共に生きていこうと決めた。
だから、いつだって胸を張って隣に立ち、支えていきたい。
会場の扉が開き、歓声と共に光が降り注ぐ。
「行こう、シャア」
◇◇◇
レセプションが終わり、屋敷に戻るとそのままシャアに寝室へと連れて行かれる。
作品名:Lovin’you afterCCA17 作家名:koyuho