はじまりのあの日12 古都と公演とガールズトーク
一大観光都市、京の都。昨今では、ホテルが予約できないと、問題になっているそうだ。そうか、考えもしなかったな、あの日は。わたし達は『歌う』事によって泊まることが出来た。老舗と呼ばれる素晴らしい宿に。京の都。わたしとレンが、14歳を迎える一週間前の出来事。歌い手総勢21名。西の古都で公演をすることになった冬の日。わたしは又、記憶の扉に手をかける―
「忘れ物はありませんね、みなさん」
「「「「「「「「「「は~い、先生」」」」」」」」」」
修学旅行の学生のように手を挙げ、微笑みあう一同。実際、メンバーでの修学旅行のようなものだった
「戸締まりも確認してきたよ、殿」
「よし、出かけようじゃない」
新幹線に乗るため、最寄り駅まで車で移動
「大人数になってからの全員公演、楽しみだよね~」
「子供達が緊張してなきゃいいけどな」
当然のように、彼が運転する車。その助手席で約三十分。駅の駐車場で預かって貰う
「お、来たね、おはようみんな~」
「時間に正確じゃねえか、感心感心」
「電車も遅れは無いみたいよ~」
プロデューサー、スタッフと合流、構内を歩く。たかれるフラッシュ、あがる歓声。PROJECTが、世の中に浸透した証。だけど、奢ってはいけない。慢心してはならない『人の心を癒やせるよう』願いが籠もったPROJECT。鼻に掛ければ、その願いが台無しになる。新幹線を待つ間、記念写真やサインに応じる。一人一人に頭を下げる。握手を交わす。喜んで貰える事が、本当にありがたい事だと感じた
「車両、二区画借り切ったから~」
「好きに座ってくれ。他の乗客に迷惑はかけんなよ」
「あたし達は、スタッフと別の車両にいるから」
特急列車の車両二区画。先頭車と二号車を借り切る。歌い手に、一般の方が殺到しないようにとの配慮。プロデューサー、スタッフが二号車。わたし達は一号車に乗り込む。私物を網棚に乗せ、思い思いに腰掛ける
「がっくん、隣座ってイイ~」
「良いんじゃな~い。よし、カイト配っちゃおう」
図々しく陣取るわたし。そして、包みを開ける彼、兄。出てくる、使い捨てケースに入れられたお弁当
「お弁当、作っておいたから。中身は、皆一緒だよ。あ、大人組と子供組は違うけどね」
「飲み物、お茶と牛乳。好きな方選ぼうじゃない。回してさっさと食べちゃおう。ヨーグルトはデザートな」
「お、気が利くじゃね~かカイト、かむいも」
紫の彼と兄の優しい心配り。自分たちだって、これから歌いに行くというのに。三時起きして、お弁当を作ってくれていた
「アザッス。がくサン、カイサン」
「ぽ兄ちゃん、カイトさん、本当にお疲れ様です」
「やった~朝からごちそうだ~。ありがと~、に~さん達~」
「ヤハリ、朝餉(あさげ)はワショクが良いでゴザルナ」
メンバー各々取りに来る。受け取って座る、勇馬兄とめぐ姉。向かいの席にはIA姉とアル兄が座って、ご馳走朝ご飯に盛り上がる
「さあみなさん、お礼を言って頂きましょうね」
「力つけておかないとなっ。良く噛んで食べよ~ぜ」
天使様にお配りするキヨテル先生。リリ姉、飲み物を手渡す
「わ~おいしそう。すごいね、リュウトくん」
「だいこうぶつばかりです、ゆきちゃん」
「ゴホカ(豪華)ナアサゴハンデフ、イロハチャン」
「ね~、オリバーくん。がくおにさん、カイトさん、ありがとう~」
椅子を向かい合わせて腰掛ける天使様。みんな揃っての公演は初めて。緊張していた様子だったけど。お弁当の蓋を開け、宝石箱でも見るように目が輝く。気持ちをほぐす効果もあったようだ
「がっくん、カイ兄、ありがと~」
「よし、頂こうじゃない」
いただきますの大合唱。向かいの席にはカイ兄、めー姉。対面で座る。お弁当の蓋を開ける。からすガレイの照り焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたし。甘くて大きなうめぼしに、かまぼこ一切れ。肉団子、揚げない唐揚げから成る、お手製弁当。子供達には、野菜と豆腐で作ったハンバーグ、揚げないフライドポテト、ナポリタン。エビフライ。卵焼き、別ケースの野菜サラダは共通のおかず。二人のご飯を口にしてしまうと、下手な駅弁では、とうてい満足できない。あちこちで美味しいの声が上がる
「しかし、アタシら幸せ者よね~」
「ん、どしたのめーちゃん」
「だって『歌う』って自分たちが一番好きなことをしてさ。人から喜んで貰って。そうして、食べていけるって幸せでしょ。しかも、タダで作ってくれる専属シェフが二人もいるのよ~」
お弁当、ノンアルコールビールと一緒に食べるめー姉。ご機嫌の様子で、カイ兄の背中をたたく。確かに、幸せなことだと思う。好きなことで食べていけることは。その分、しんどい時もあるけれど
「はは、メイコ、そいつはさ。お前達が必死で築き上げたからじゃない。このPROJECTの土台を。俺なんか、その上に乗っかってるだけ。食事くらい世話させていただこうじゃない」
軽い口調で言った彼。するとめー姉、カイ兄、真剣な顔つきになって
「神威君、あなたもよ。貴男も、その土台を一緒に固めてくれた。カイトと一緒に、ね。アタシはそう思ってるんだから。乗っかってるだけ、なんて言わないで」
「そうだよ殿。何時かも言ったけどさ。オレも頼りにしてるんだから、殿のこと。苦しい事だって、このメンバーだから乗り越えていけるんだしさ」
真面目にかえす。紫の彼、ありがとうと返答し、お茶の缶をノンアル缶と合わす
「そういやさ、来年の秋だったかな。修学旅行で都に行くの。おれとリン、フライングで京の都じゃね」
真後ろに座るレン。膝立ちで身をのり出してくる。思い出したように、言う。確かにそうだ
「はは、レン。別に、いつ行ったって良いじゃない。それに、友達と行くのも楽しいだろうけど、俺らメンバーで乗り込むのも、格別じゃない。恭悦至極~」
「そっか~。そだね、がく兄」
そのレンを見上げ、撫でながら返した彼
「そうですわ、レン君。このメンバーで古都。公演も観光も、おおいに楽しまないと損ですわぁ」
「わたしも京の古都初めて~。楽しみだね、ルカ姉、レンくん」
レンの隣、座っているルカ姉。その正面ミク姉。公欠や、早引けが多い学生組。正直、友達は少なかった。仲良しの子はいたけど
「みんなでミヤコ~。もう、すでに楽しいで~す」
「カルも、ふらいんぐ古都でびゅ~」
「盛り上がっちゃお~ね、ピコきゅん、カルちゃ~ん」
ピコくんと座るMikiちゃん、正面カル姉。今日も三人、お揃いのフリルドレス。相変わらずドレスが似合うピコくん、末恐ろしい
「修学旅行か~来たなぁ。あん時は、ウチも中坊だったな~。やっぱ全然気分がちっがうな、みんなで来ると~。じゃ、センセは引率のセンセ~だな」
「ですか。でも私、学校の教員ではなかったので」
天使組の後ろに座るリリ姉。嬉しそうに、隣のキヨテル先生に話しかける
「あはっ。細け~ことは良いじゃん。ウチはセンセに先導して貰いたいだけダカラ。はい、センセあ~ん」
「あ、す、すみません」
リリ姉が素早く差し出す卵焼き。有無を言わさない気配に押され、食べるキヨテル先生。リリ姉は、先生の反応に上機嫌
「忘れ物はありませんね、みなさん」
「「「「「「「「「「は~い、先生」」」」」」」」」」
修学旅行の学生のように手を挙げ、微笑みあう一同。実際、メンバーでの修学旅行のようなものだった
「戸締まりも確認してきたよ、殿」
「よし、出かけようじゃない」
新幹線に乗るため、最寄り駅まで車で移動
「大人数になってからの全員公演、楽しみだよね~」
「子供達が緊張してなきゃいいけどな」
当然のように、彼が運転する車。その助手席で約三十分。駅の駐車場で預かって貰う
「お、来たね、おはようみんな~」
「時間に正確じゃねえか、感心感心」
「電車も遅れは無いみたいよ~」
プロデューサー、スタッフと合流、構内を歩く。たかれるフラッシュ、あがる歓声。PROJECTが、世の中に浸透した証。だけど、奢ってはいけない。慢心してはならない『人の心を癒やせるよう』願いが籠もったPROJECT。鼻に掛ければ、その願いが台無しになる。新幹線を待つ間、記念写真やサインに応じる。一人一人に頭を下げる。握手を交わす。喜んで貰える事が、本当にありがたい事だと感じた
「車両、二区画借り切ったから~」
「好きに座ってくれ。他の乗客に迷惑はかけんなよ」
「あたし達は、スタッフと別の車両にいるから」
特急列車の車両二区画。先頭車と二号車を借り切る。歌い手に、一般の方が殺到しないようにとの配慮。プロデューサー、スタッフが二号車。わたし達は一号車に乗り込む。私物を網棚に乗せ、思い思いに腰掛ける
「がっくん、隣座ってイイ~」
「良いんじゃな~い。よし、カイト配っちゃおう」
図々しく陣取るわたし。そして、包みを開ける彼、兄。出てくる、使い捨てケースに入れられたお弁当
「お弁当、作っておいたから。中身は、皆一緒だよ。あ、大人組と子供組は違うけどね」
「飲み物、お茶と牛乳。好きな方選ぼうじゃない。回してさっさと食べちゃおう。ヨーグルトはデザートな」
「お、気が利くじゃね~かカイト、かむいも」
紫の彼と兄の優しい心配り。自分たちだって、これから歌いに行くというのに。三時起きして、お弁当を作ってくれていた
「アザッス。がくサン、カイサン」
「ぽ兄ちゃん、カイトさん、本当にお疲れ様です」
「やった~朝からごちそうだ~。ありがと~、に~さん達~」
「ヤハリ、朝餉(あさげ)はワショクが良いでゴザルナ」
メンバー各々取りに来る。受け取って座る、勇馬兄とめぐ姉。向かいの席にはIA姉とアル兄が座って、ご馳走朝ご飯に盛り上がる
「さあみなさん、お礼を言って頂きましょうね」
「力つけておかないとなっ。良く噛んで食べよ~ぜ」
天使様にお配りするキヨテル先生。リリ姉、飲み物を手渡す
「わ~おいしそう。すごいね、リュウトくん」
「だいこうぶつばかりです、ゆきちゃん」
「ゴホカ(豪華)ナアサゴハンデフ、イロハチャン」
「ね~、オリバーくん。がくおにさん、カイトさん、ありがとう~」
椅子を向かい合わせて腰掛ける天使様。みんな揃っての公演は初めて。緊張していた様子だったけど。お弁当の蓋を開け、宝石箱でも見るように目が輝く。気持ちをほぐす効果もあったようだ
「がっくん、カイ兄、ありがと~」
「よし、頂こうじゃない」
いただきますの大合唱。向かいの席にはカイ兄、めー姉。対面で座る。お弁当の蓋を開ける。からすガレイの照り焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたし。甘くて大きなうめぼしに、かまぼこ一切れ。肉団子、揚げない唐揚げから成る、お手製弁当。子供達には、野菜と豆腐で作ったハンバーグ、揚げないフライドポテト、ナポリタン。エビフライ。卵焼き、別ケースの野菜サラダは共通のおかず。二人のご飯を口にしてしまうと、下手な駅弁では、とうてい満足できない。あちこちで美味しいの声が上がる
「しかし、アタシら幸せ者よね~」
「ん、どしたのめーちゃん」
「だって『歌う』って自分たちが一番好きなことをしてさ。人から喜んで貰って。そうして、食べていけるって幸せでしょ。しかも、タダで作ってくれる専属シェフが二人もいるのよ~」
お弁当、ノンアルコールビールと一緒に食べるめー姉。ご機嫌の様子で、カイ兄の背中をたたく。確かに、幸せなことだと思う。好きなことで食べていけることは。その分、しんどい時もあるけれど
「はは、メイコ、そいつはさ。お前達が必死で築き上げたからじゃない。このPROJECTの土台を。俺なんか、その上に乗っかってるだけ。食事くらい世話させていただこうじゃない」
軽い口調で言った彼。するとめー姉、カイ兄、真剣な顔つきになって
「神威君、あなたもよ。貴男も、その土台を一緒に固めてくれた。カイトと一緒に、ね。アタシはそう思ってるんだから。乗っかってるだけ、なんて言わないで」
「そうだよ殿。何時かも言ったけどさ。オレも頼りにしてるんだから、殿のこと。苦しい事だって、このメンバーだから乗り越えていけるんだしさ」
真面目にかえす。紫の彼、ありがとうと返答し、お茶の缶をノンアル缶と合わす
「そういやさ、来年の秋だったかな。修学旅行で都に行くの。おれとリン、フライングで京の都じゃね」
真後ろに座るレン。膝立ちで身をのり出してくる。思い出したように、言う。確かにそうだ
「はは、レン。別に、いつ行ったって良いじゃない。それに、友達と行くのも楽しいだろうけど、俺らメンバーで乗り込むのも、格別じゃない。恭悦至極~」
「そっか~。そだね、がく兄」
そのレンを見上げ、撫でながら返した彼
「そうですわ、レン君。このメンバーで古都。公演も観光も、おおいに楽しまないと損ですわぁ」
「わたしも京の古都初めて~。楽しみだね、ルカ姉、レンくん」
レンの隣、座っているルカ姉。その正面ミク姉。公欠や、早引けが多い学生組。正直、友達は少なかった。仲良しの子はいたけど
「みんなでミヤコ~。もう、すでに楽しいで~す」
「カルも、ふらいんぐ古都でびゅ~」
「盛り上がっちゃお~ね、ピコきゅん、カルちゃ~ん」
ピコくんと座るMikiちゃん、正面カル姉。今日も三人、お揃いのフリルドレス。相変わらずドレスが似合うピコくん、末恐ろしい
「修学旅行か~来たなぁ。あん時は、ウチも中坊だったな~。やっぱ全然気分がちっがうな、みんなで来ると~。じゃ、センセは引率のセンセ~だな」
「ですか。でも私、学校の教員ではなかったので」
天使組の後ろに座るリリ姉。嬉しそうに、隣のキヨテル先生に話しかける
「あはっ。細け~ことは良いじゃん。ウチはセンセに先導して貰いたいだけダカラ。はい、センセあ~ん」
「あ、す、すみません」
リリ姉が素早く差し出す卵焼き。有無を言わさない気配に押され、食べるキヨテル先生。リリ姉は、先生の反応に上機嫌
作品名:はじまりのあの日12 古都と公演とガールズトーク 作家名:代打の代打