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代打の代打
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はじまりのあの日12 古都と公演とガールズトーク

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「頂くだけでは、申し訳ありませんので。お返しの卵焼きです。リリィさん、どうぞ」

手を添えて、差し出される卵焼き。不意打ちだったのか、リリ姉顔が深紅になる。でも、次の瞬間、思い切り嬉しそうに口をあける。夢見心地の顔で食べている、と

「いや~これまた、い~い画(え)が撮れた。ナイス、先生、リリ姉」
「何してるんですか、ミクさん」
「撮ってんじゃね~よミクっ」

この場面も、ミク姉によってすっぱ抜かれ、ディスクに保存されている。ミク姉、どんな趣味なんだろう。まあ、総じて賑やかに朝食を終える

「「「「「「「「「「「ごちそ~さまでした~。おいしかったよ、おに~ちゃ~ん」」」」」」」」」」
「「おそまつさま~」」

使い捨てのケースを回収してくれる、アル兄。買っておいた、食後のお茶でくつろぐ。と、さすがに朝早かった兄と彼。疲れからか、船を漕ぎ出す

「ふふふっ」

もたれかかる兄を笑みながら撫でるめー姉。わたしに微笑みかける、姉。人差し指一本、口の前。静かにというサイン。なんとなく羨ましかった。チビのわたしと彼では、それができない。体格に差がありすぎて。あの日のわたしは、なぜ姉達のようにしたかったのか。考えも及ばなかった。それでもせめて、と。コートを彼に掛けてあげたっけ。そうするわたしを見て、生暖かく微笑む姉。なぜ、そんな顔で見つめられるのか。当時のわたしは分からない。声にせず『なに』と咎める。めー姉『なんでもない』と口だけ動かし、手を振る。益々生暖かくなる視線。胸に芽生える、おかしな感情。恥ずかしさ、情けなさ、悔しさ。怒りに嫉妬。どれも当てはまるようで、全てズレているような。混ざった感情。めー姉に、悪気など無かっただろうに。子供だったんだよね

「みなさん、お兄さん達はお疲れです。起こしてしまわないよう、後ろの座席に移動しましょう」
「静かにな。後ろでトランプでもやろ~ぜ」
「「「「は~い」」」」

声を潜め、先生、リリ姉、天使様。微笑ましいやりとりに、わたしもめー姉も頬が緩む。わたしは芽生えた感情も、穏やかに引っ込む。彼の綺麗な寝顔を見る余裕も生まれる『まつげ長いな』と、何故だか鼓動が速くなった覚えがある