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はじまりのあの日13 一緒と内緒の古都巡り

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「でもリンちゃん、本当に珍しいね、ぽ兄ちゃんと別れて行動」

そんなにわたし、彼にくっついていただろうか、などと思った。が、どう考えたって確実に、引っ付いている時間が多かった。今にして思う

「う~ん、そんなにわたし、がっくんと居るかなぁ。がっくん、もしかして迷惑かな、めぐ姉」
「わわ、大丈夫だよ、リンちゃん。ぽ兄ちゃん、いつもリンちゃん可愛がってるものっ」

わたしの反応に慌てるめぐ姉。もの凄く必死の弁解

「えとえとね、突然お別れ行動だったから、どうしたのかな~って」
「ゎ~たしもちょっと気になるな~。ど~して~、リンちゃん」

今だ慌てている、めぐ姉。IA姉、興味深げにのぞき込んでくる

「ん、あのね、ん~、みんなにナイショ、して貰って良い」

何となく気恥ずかしい、ちょっと照れる。いつも図々しく甘えるから、そのお返しを贈りたい。そんなことを口にするのが。みんなに知られるのが。と言って、今行動する姉二人、秘密にするのは難しい。ならいっそ、味方にした方が上手くいく。浅知恵ながら、よく瞬時に頭が回ったものだ

「がっくんに贈り物、したくって」

めぐ姉、IA姉、束の間顔を見合わせた後

「ど、ど~してかな、リンちゃん。ど~いう贈り物かなっ」
「そ~れは、どういうことを伝えたいの~リンちゃ~ん」

目を燦々輝かせて聞いてくる。めぐ姉の手に力がこもる

「えっ、あ、う、うん。あのね、いつも優しくしてくれるでしょ、がっくん。さっきもお菓子買ってくれたし、プレゼントだってくれると思う。帰ったら誕生日来るから」

背の高いめぐ姉に、上からのぞき込まれ、低いIA姉には、やや下からのぞき込まれる

「わたし、去年までがっくんの誕生日に、きちんとした贈り物もしなかった。でも、がっくん、わたしの誕生日には絶対、プレゼントくれてさ。さっきお菓子買って貰った時、思っちゃった『このままじゃダメだ~』って」

お土産通りの一角、黄色いの一人が、二人の美少女に囲まれる。なかなかに無い構図だったであろう

「何時までも子供じゃないんだからって。ちゃんと言わなきゃ」

その台詞を言った瞬間、めぐ姉、IA姉、瞳の星。少女漫画の十倍は輝いた

「きちんとお礼したいの。がっくんにお礼のプレゼント、選びたくって」

何故だか歓喜しながら二人の姉は

「ん~リンちゃん、わかった、応援するよ~」
「ょ~うやく進展するかな~ぐみちゃ~ん」

わたしを抱きしめてくれた。ただ、この時は『勘違い』に終わったんだけどね、二人の。わたし自身の『勘違い』も含まれる『このままじゃダメだ、子供じゃない』思ったくせに気付かない。もう、この時には抱いていただろう自分の『想い』

「何を贈るの~リンちゃん」
「ん~、何にしよっかな、決めてないんだ~」
「でゎ~、イ~ロイロめ~ぐり~ましょ~」

目が輝いたままの二人に連れられ、店巡り。雑貨、衣類など、多種多様お店旅。巡り巡ってあるお店に入ったときのこと。わたしが目にしたのは、一本のループタイ。銀色の刀の鍔がデザインされた、彼に似合うであろう品。二人の姉から離れ、手に取る。彼がこのタイを絞めた姿、想像する。うん、完璧。購入を決意する。値段は、あの時持って行ったお小遣いぎりぎりだった。この後、買い物は出来なくなる。それでも構わなかった

「リンちゃん、それ買うの」
「カッコイイデザインだね」

いつの間にか近くに居ためぐ姉、IA姉

「あ、う、うん、めぐ姉。みんなにはナイショ、IA姉」
「ふふっ、わかったよ、リンちゃん」
「ぅふふ~、頑張ってね~リンちゃん」

そう言って、励まされる。確かに、少し緊張する、内密に渡せるか。頑張らねばと、あの日は勘違いした。レジで会計。少し良い紙で包装をして貰う

「リンちゃ~ん、ホテルに戻るよ~」
「戻ろ~リンちゃん」

IA姉、めぐ姉の声

「あ、わかった~待ってぇ~」

店を後にする。タクシーのなか、わたしは考えていた。どう渡すか、いつ渡すかを。彼は、喜んでくれるか、を。結構、心拍が上がったっけ。玄関の呼び鈴が鳴る音で、意識が記憶図書館から強制退館。モニターに映る荷物屋さん。受け取るため、料理の火を止めて。急ぎ足で向かう―