はじまりのあの日13 一緒と内緒の古都巡り
「ごめん、殿、オレも別の店行くよ」
「がっくん、わたしも別のお店行きた~い」
メンバー全員、またも驚きの表情が浮かぶ。そうだろう、あれだけ彼にくっついていたわたし。別行動を申し出たからだ
「あら、珍しい。いいの、リン、神威君と一緒じゃなくて」
「うん。別のお店が良い」
「メイコ、刀なんか興味なくて当たり前じゃない」
ただ、ひっつかれていた彼だけは、納得の顔をする。実は、別行動をしたかったわけではない。模造刀とはいえ、刀を構える彼。想像しただけでかっこいい。片割れの意外な姿も見てみたかった。でも、わたしの意思は、もう一つの目的に動かされる。さっきから考え、思いついた。彼に、何かお返しを贈りたい。さっきもお土産を買ってくれた彼に。もう、すぐそこの誕生日。きっと誕生日プレゼントをくれる彼に。このお土産の聖地で『お返しの品』を選ぼうと
「そういう事じゃないんだけどな~、神威君。まあ、分かれてお店みましょ。アタシはバッグとか小物を見に行くわ。プロさん達から、軍資金渡されてるの。カイト~付いてきて、男物は任せるわ。ルカ、一緒に選んでよ」
複雑そうな苦笑い、めー姉、カイ兄に従者を命ずる
「喜んで同行しますわ、メイコ姉様」
「うちも~メイコアネさん」
「ははは。オレは完全に従者だね。おおせのままに、お嬢様方」
腰を折り頭を下げて、カイ兄、めー姉の一歩後ろに続く
「かるも、めいさまにつづきます」
「あ、カイトさん。ぼくも、従者に加わりま~す」
その後ろ、ルカ姉、カル姉、Mikiちゃんが続く。ピコ君も、従者というよりお嬢様。わたしは、状況を見ていた。どの集団に付いていけば、目的のものに出会えるだろう、と。ただ、何を贈るか、それは思いついていなかった。めー姉が行く装飾品のお店ということは、ここ一番の時身につける一張羅。プロデューサー、直々の調達命令なら尚更。きっと高い店、わたしには手が出せない品ばかりだろう。この一団に付いていくのはムリだ
「すみません、私はホテルに戻らせていただきます。みなさん、そろそろお疲れのようですから」
「なら、ウチも戻ろっかな。センセ、一人じゃ大変じゃん。戻ったら、二次会の追加とか買っとこ~ぜ、センセっ」
「すみません、リリィさん。では、タクシーを拾いますか」
ユキちゃん、リュウト君と手を繋ぐ、キヨテル先生の心遣い。さすがに少しお疲れの天使様。大人達の議論の間に、眠くなったのだろう。目をこすり始めている、オリバー君、いろはちゃん。手を繋ぐリリ姉。通りの出口へ向かう。ホテルに戻るという選択肢は、さすがにない
「わったし、このお店入ってみよ~。なんか面白そ~」
「ボクもここ入るぜ。お、ヌンチャク発見」
興味が湧いたらしい。彼らと残る選択をする、ミク姉。初めから、入る気満々の顔だったテト姉も続く『付き合って』入った風情、彼の顔。この店にも目的のものは無い。それにわたし、刀や武器の知識は皆無『架空』の武器なら多少はあるけれど。ビームの刀とか、勇者の剣とか
「ゎたしは、すこしだけぶらついて、気に行ったお店に入ってみるよ~ぅ」
「IAちゃん、わたしも一緒にいく~。良いところで帰ろ~ね」
「あ、めぐ姉、わたしも一緒に行く~」
IA姉の申し出に賛同する。この二人に付いていくのがいいと判断。おみやげ通りのぶらり旅を希望
「じゃ、みんな、ホテルで落ち合おうじゃない」
「また後でね~がっくん」
別れ、歩き出す。あ、ほんの一瞬のお別れなのに、なに、この寂しさ。あの日思った。紛らわすため、めぐ姉と手を繋ぐ。誤解の無いよう申し上げたいが、めぐ姉と手を繋ぐのだって、大変に心地イイ。紫様の手繋ぎが『唯一無二の至高』というだけで。わたしが勝手にしている思い出訪問で、一体誰に言い訳しているのだろう。すると、思い出のめぐ姉が質問してくる。あの日へ戻るわたし
作品名:はじまりのあの日13 一緒と内緒の古都巡り 作家名:代打の代打