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代打の代打
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はじまりのあの日14 秘密の贈り物

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届けられた、箱二つ。一つは箱一杯のじゃがいも。もう一箱は、修道院のバターとクッキー。わたしの『生まれの実家』からの心遣い。同封の手紙、いつも観ているとのこと。帰省する機会もめっきり減った。それでも、思いやってくれるのはありがたい。そうだ、これでじゃがバターでも作ろうか。台所へともどってくる。家族のために料理を再開。他の家へもお裾分けをしよう。家族も好きなんだよね、このクッキー。あ、今自然に思ったな『家族』って。両親には、際限なく感謝をしている。ただ、申し訳ないけれど。わたしも、みんなも、もう同じ『メンバーが家族』『今、住んでいる家が実家』何時か、誰かが言った。じゃがいもの皮を剥きながら、はて、さっきまで何を想っていただろう。届け物の中『密封』の文字が目に入る。ああ『密』の字で思い出した。結構大切な思い出だ。京の都で贈り物を交わしたあの夜。記憶の図書館さん。今度は、わたしの方から入館、希望いたします―

「ただいま、お待たせじゃな~い」
「っす~、良いモンが買えたっす~」
「楽しかったぜ~」

最後に帰ってきたのは、紫様の一団。と言っても、わたしたちがホテルに入った時間と、そこまでの差は無い。発声は彼、ホクホクの勇馬兄。ヌンチャクを振り回し、ポーズを決めるテト姉

「あらあら、皆すっかり刀剣男子ね~」
「帰るまで、箱から出してはいけませんよ」

めー姉が笑う。彼とレン以外、男性陣の手には長い箱。おそらく、模造刀が入っていると思われる。すでに浴衣のキヨテル先生苦笑い。眼鏡を外した先生は、少し目が細められる。視力が悪いので、とのこと。一足先に戻った、先生、リリ姉、天使様。男の子を先生、女の子をリリ姉が引率して、入浴を済ませたとのこと。すでに、お部屋で夢の中

「お、レンまで買ったの、模造刀。でも、箱に入ってないね」
「違うんだ、カイ兄。これ、竹刀。がく兄が買ってくれてさ。剣道着は、帰ったらって」
「わたしも、何か楽しくなって買っちゃった~」

嬉しそうな弟。笑顔、声も弾んでいる。ミク姉、十手を見せてくれる。何に使うのだろう

「レンにさ、まずは剣道教えようって。一式揃えてあげようじゃな~い」
「ありがと~、がく兄」

図々しく思った。買って貰った、そして剣道談義で盛り上がって、頭を撫でられている片割れが。羨ましいと

「さ~、それじゃお風呂入って。二次会始めるわよ~」
「でも寒い中を歩いたからね。ゆっくり入ってこようよ」
「しっかり暖まって来て下さい」
「その間に、会場作っちゃお~ぜセンセ」

めー姉、カイ兄。促されて、浴場へ。二次会の準備は、リリ姉とキヨテル先生がしてくれる

「あら~、お風呂も良いわね~。身に余る贅沢だわ~」
「やっぱ日本人は温泉だよね~、メイコのアネさ~ん」

めー姉の言うとおり、広々、高い天井。暖色の照明と湯気が仄かに立ち上る浴場

「広々~、あ、かけ湯してあげる~リンちゃん」
「ありがと~めぐ姉~」

言ってくれる、めぐ姉を観る。この頃から気になり始める、特に、めぐ姉、ルカ姉との差。めー姉も含め、大いに恵まれた人達と、自分の体つきの差。くらべて何故か、すごく悲しくなった。残念ながら、今でもカナワナイ。何でかは、あの日は考えつかなかったけど。そのめぐ姉に、背中を流して貰う、洗いっこする。頭も洗って貰って、湯船につかったとき

「リンちゃん。さっきのループタイ。帰ってから渡す、今日渡す」

声を潜めて聞かれる

「今日渡したいなぁ」

その問いに出した答え。さっきのレンの楽しげな、嬉しそうな顔が浮かぶ。それに嫉妬しただろう、あの日のわたし

「なになに~、作戦会議~」

IA姉、声を潜めてやってくる

「うん、IAちゃん。じゃあさ、二次会出るよねリンちゃん」
「でる~、めぐ姉」
「その途中にね、抜け出すのがいいと思うよ。でね、二人っきりで渡すの、ぽ兄ちゃんに」
「誰か気付いたら、ゎたし達が誤魔化しておくよ~」

提案してくれためぐ姉。考えてみれば、あの頃から、わたし達を応援してくれていた、神威の姉。IA姉の気遣いも嬉しかった

「ありがとめぐ姉。そうする、IA姉」
「頑張ってね、リンちゃん」

めぐ姉、言って抱きしめてくれる。何となく、至福の感触だった。そういえば、だ。神威の一族は呼ぶ。姉のことを『めぐ』と。そこに、姉がつくかつかないかだけが違う。でも、他の人は違う。なぜか『グミ』と呼ぶ。わたしは、彼が呼んでいたから、自然とそうなった『めぐ姉』という呼称。姉の名は『めぐみ』だ。わざわざ、なぜ下の二文字を取るのか、今でも分からない

「まあまあ、リンちゃん。本当に、神威さんのお姉様が、実のお姉様のようですわね」
「うん、ごめんねルカちゃん。わたし、リンちゃんをホントの妹って思ってるんだ~」

微笑みながら、ルカ姉が言う。めぐ姉は、ますますわたしを抱きしめる。その言葉に、うれしさが倍増する

「ふふふ。りんりんは妹。かる達の妹」

わたし抱っこに加勢してくる、カル姉

「ゎ~リンちゃんが可愛がられてる~。ゎたしもリンちゃんかわいがろ~ぅ」
「あ~、この光景、ゼヒ撮影したかった~」
「ミク。本当にやったら、お姉ちゃん、オ・コ・ル・ワ・ヨ」

めー姉に、笑顔で睨み付けられ、縮み上がるミク姉。当然だろう。それをやったら、イタズラでは済まない。わたしは、IA姉にも抱きつかれる。完全に体が温まる。というか、ややノボセタくらいの状態で、浴場を後にする。脱衣所で、髪を乾かす

「ルカたん。手伝ってやるぜ」
「すみません、テト姉様」
「ミクちゃ~ん、手伝ってあげる~」
「わたしも~ミク姉~」
「グミ姉、リンちゃん、ありがと~」

髪の毛の量が多い面々が多い女性陣。必然的に、時間がかかる

「いあさま、かるが手伝う~」
「ごめんね~カルちゃん」

比較的短い側のみんな。乾かし終わった者から手伝って乾かす

「わたしはMiki~」
「ありがと~メイコアネさん」

楽しいお手伝い。はしゃぎながら、髪型セット。舞台に上がるわけでないので、簡素に。テト姉も、本来のサラサラヘア。ドリルツインテールなんて言われるけど。いつも、あの髪型を作るのに、三十分近くかかる

「男の子、待たせてるかな~」
「しょ~がないよIAね~さん。男の子の方が簡単で済むから」
「確かに。女性の方が身支度に、時間がかかりますわ」

心配そうなIA姉。朗らかにMikiちゃん。クールにルカ姉。髪を乾かし終えて、着替えを済ます。脱衣所から出て、部屋へ向かおう、と