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はじまりのあの日14 秘密の贈り物

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「さ、戻ろうか。心配されても困るじゃない。お互いナイショの贈り物、見つかんないように」
「あ、う、うん。そ~だねっ」

その気まずさを振り払うかのように言った彼。というか、わたしだけが、勝手に空気感を感じただけかもしれない。くれた簪、バレないように、袂にしまう。あげたループタイ、懐に隠す

「がっくん―」
「ん、ああ、繋ごうじゃない」

手を差し出すと、繋いでくれる。わたし『違う感じの空気』などと思ったのに、どういう神経なのか。まぁ、やっぱり彼の側に居たい。それが本音。大きな彼の手、優しく包んでくれる。無言で歩く。いつもとすこし違う空気。無言がわたしの不安を呼び、心なしか彼にすがりつく。自然に、撫でてくれる彼。嬉しくなって、ますますすがりつく

「ど~した、リン、疲れたかな。甘えんぼさんじゃない」

そのわたしに、悪戯っ子モードで聞いてくる彼。声が聴けたのが嬉しくて

「んぅ~、なんか―、なんかこうしてたい」

はい『何故か』そうしたかったのです。にやけながらだったろう応えるわたし。腕を組んで、頭を彼の方にもたげる

「そっか。あったな、めぐにもそんな時が。やたらと甘えんぼになった時が。あんな感じかな」

益々もって、撫で回される。蕩けるわたしの心。そんなことをしながら歩く。誰も観ていないのを良いことに。と、部屋への通路の前、袋を手に佇む人物

「ぽ兄ちゃん、リンちゃん。お帰んなさい。あ、ぅふふIAちゃん」
「ゎたせた~リンちゃ~ん。ぉ何だか、ょ~さげなフンイキだね、ぐみちゃ~ん」

めぐ姉、IA姉『作戦』を実行。どうやらわたし達のため、暗躍してくれていたようだ。ただ掛けられた声で、彼から離れてしまう

「ありがとう、めぐ姉。渡せたよ、IA姉」
「ん、めぐ、IA。お前達、一枚かんでたのか」

不思議そうな顔の彼

「かんでたって程じゃないよ~。ちょこっと応援ってとこかな。でも、良い雰囲気ってことは~」
「今、に~さんとリンちゃん、ゎたし達と飲み物追加してるって事に~。上手くいったのかな~」

袋の中身は缶ジュース。自販機で購入した物

「めぐ姉も、ありがとう。ちゃんと渡せたよ~」
「言えたかな、気持ち」
「うん、言えた。ちゃんと『お礼』言えたよ~」

一瞬、目を丸くする。その後、困ったような笑みを浮かべ

「そっか。違ったのかぁ。脈ありだと思ったのにね、IAちゃん」
「ぅ~フカヨミだったのかなぁ~グミちゃ~ん」

残念がる二人。何の事だか気付かない『二人とも』紫の彼、めぐ姉から、飲み物を取る。持ってあげる

「何だかわかんないけど、気遣いありがとな、めぐ。いつの間にか、リンと仲良く成りすぎじゃない。もう、完全に姉妹だな」
「えへへ~、嫉妬~、ぽ兄ちゃ~ん」
「んなわけないじゃない」

イタズラっぽく返すめぐ姉を、撫でる彼『嫉妬してくれた方が~』小声でIA姉の声

「ふふふ、二人だから教えてあげる。がっくんに貰ったの」

袂から、リボンを出して見せる。驚きのめぐ姉、またイタズラっぽく微笑んで

「ぽ兄ちゃん、誕生日のは買ってあったよね。双子ちゃんの分。リンちゃんだけに、どしてかなぁ」
「すると、この贈り物の真意ゎ何ですか~神威のに~さ~ん」

IA姉までも悪戯っ子モード。おそらく、だけど。あの日、彼から『何か』を引き出したかったのかもしれない。が

「なんだ。別に、贈ったていいじゃない。似合うと思ったから。レンには、竹刀贈ったから、おアイコじゃない」

そう言い放った彼。めぐ姉IA姉、さらに困った顔をして

「う~ん」
「ぅぅ~」

そう言ったきり、黙ってしまう。その顔は、切なさまで浮かんでいた。あの後、贈り物をしまってから二次会部屋へと戻る。会場に戻って、彼の膝。乗るわたしに集まる、生温かな視線。それが、何故だかイヤだったっけ。鍋が噴きこぼれる。おっと、いけないイケナイ、浸りすぎた。じゃがいも用のお湯だったのがまだ幸い。何かの『煮汁』だったら、コンロが焦げ付いてしまうから。火を止める。一度、軽く下ゆでしてから、食べる前に蒸かすと、芯がなくて美味しいじゃがバターが出来上がる。このバターには、食塩も含まれてるから、塩を振るかはお好みだと、彼に教えて貰った。マヨネーズ派もいることだし。そうだ、彼が好きなトッピング、粗挽き胡椒も用意しておこう。胡椒、ミルに足しておかなくっちゃ―