はじまりのあの日14 秘密の贈り物
このタイミングだ、と、座る彼に
「がっくん」
「ん、どした」
「あのね、渡したい物があるの。ちょっと抜け出さない」
小声で打ち明ける。一瞬、呆けたような顔をした彼。次の瞬間、微笑んで
「偶然じゃない。俺もリンに渡すモンがある。抜け出しちゃおうじゃない」
「え、ホント」
耳元で打ち明けられる。二人して、コッソリ抜け出す。IA姉達が援護してくれたからだろう。気付かれることなく、すんなりと抜け出せたもの。彼は、一度自分の部屋に寄る
「さ~て、貸し切り状態だから何処でも良いけど、何処行くか」
「ちょっとだけ、部屋から離れたところがいいなぁ」
思案する彼に告げてみる
「そっか、ならあの場所がイイかな」
「じゃあ、がっくんが思った場所に行こ~う」
「そうしようじゃな~い」
わたし、彼の腕を取る
「でもびっくりじゃない。いきなり俺に渡すモノって」
歩きながら会話。今は彼と『二人だけ』状況を知っている、めぐ姉とIA姉。でも、どんな会話が交わされているか、彼と過ごす時間の内容ついては知り得ない。二人っきり状態
「うふふ、ちょっとね~」
その状況に、ご機嫌わたし。つれられ行った先は、ロビーラウンジ
「ココ、良いんじゃない、今の時間は人も居ない。ま、貸し切り状態も相まって、じゃない」
さすがに人の気が無い。改めて向かい合う。込み上げてくる『正体不明』の照れくささ。さて、どう切り出すか、考えていると
「はい、これリンに。似合うんじゃないって」
手渡される包み。促され、開けてみる。出てきたのは、椿の花。紅白の椿が施されたリボン。あの日は、椿の花だと知らなくて。綺麗な花が施される、可愛い髪飾りと思った
「がっくん、この髪飾り」
「ああ、簪(かんざし)の店見つけてさ。その中で見つけた、リボン。これなら、今のリンに合うんじゃないかって。紅白の椿の花。さっきみんなも言ってたけどさ、俺も思う。少しずつ大人びてきてるじゃない。今日付けてた可愛い系も似合うけどさ。今ならこういう、大人っぽいのもいいんじゃないって」
『大人びてきている』『今のリン』『今なら似合う』心のどこか、反応する。それはきっと、紫の彼と『対等な立場』が近づいたと感じたから。その理由、やっぱりわたしは気付かない。なぜ、彼と『対等』を、無意識のなか望んだのか。機嫌が良くなり、照れくささも吹き飛んで
「ありがと~がっくん。わたしもね、お返しのプレゼント。いつも、優しくしてくれてありがとう。さっきも、お菓子ありがとう。だから感謝のプレゼント~」
手渡した包み。促して、開けて貰う。出てきたループタイに、驚きの顔と、喜ぶ声
「おいおい、高かっただろコレ~。無理するなよ。ありがとう、リン。趣味もいいじゃない。大切にする。ありがとう」
彼に気に入ってもらえたのが嬉しくて。撫でてくれるのも嬉しくて
「ありがとうがっくん。これ、今年の誕生日プレゼントでしょ。わぁ綺麗~」
彼はまた、一瞬呆けた顔をして。その後少し、微笑んで
「いや、誕生日のは、家にもう買ってあるんだけどさ。なんか贈りたくなって、リンに。それ、付けたリン、イイんじゃないって。この贈り物は、リンだけ。レンにはナイショ。ま、剣道用具一式とアイコで良いじゃない」
照れたような彼の顔。初めて見せる表情
「がっ、くん」
鼓動が少し、跳ねた覚えがある。その跳ね方は初めての感覚だった。しばらく見つめあう。無言。何とも言えない空気が流れる
「がっくん」
「ん、どした」
「あのね、渡したい物があるの。ちょっと抜け出さない」
小声で打ち明ける。一瞬、呆けたような顔をした彼。次の瞬間、微笑んで
「偶然じゃない。俺もリンに渡すモンがある。抜け出しちゃおうじゃない」
「え、ホント」
耳元で打ち明けられる。二人して、コッソリ抜け出す。IA姉達が援護してくれたからだろう。気付かれることなく、すんなりと抜け出せたもの。彼は、一度自分の部屋に寄る
「さ~て、貸し切り状態だから何処でも良いけど、何処行くか」
「ちょっとだけ、部屋から離れたところがいいなぁ」
思案する彼に告げてみる
「そっか、ならあの場所がイイかな」
「じゃあ、がっくんが思った場所に行こ~う」
「そうしようじゃな~い」
わたし、彼の腕を取る
「でもびっくりじゃない。いきなり俺に渡すモノって」
歩きながら会話。今は彼と『二人だけ』状況を知っている、めぐ姉とIA姉。でも、どんな会話が交わされているか、彼と過ごす時間の内容ついては知り得ない。二人っきり状態
「うふふ、ちょっとね~」
その状況に、ご機嫌わたし。つれられ行った先は、ロビーラウンジ
「ココ、良いんじゃない、今の時間は人も居ない。ま、貸し切り状態も相まって、じゃない」
さすがに人の気が無い。改めて向かい合う。込み上げてくる『正体不明』の照れくささ。さて、どう切り出すか、考えていると
「はい、これリンに。似合うんじゃないって」
手渡される包み。促され、開けてみる。出てきたのは、椿の花。紅白の椿が施されたリボン。あの日は、椿の花だと知らなくて。綺麗な花が施される、可愛い髪飾りと思った
「がっくん、この髪飾り」
「ああ、簪(かんざし)の店見つけてさ。その中で見つけた、リボン。これなら、今のリンに合うんじゃないかって。紅白の椿の花。さっきみんなも言ってたけどさ、俺も思う。少しずつ大人びてきてるじゃない。今日付けてた可愛い系も似合うけどさ。今ならこういう、大人っぽいのもいいんじゃないって」
『大人びてきている』『今のリン』『今なら似合う』心のどこか、反応する。それはきっと、紫の彼と『対等な立場』が近づいたと感じたから。その理由、やっぱりわたしは気付かない。なぜ、彼と『対等』を、無意識のなか望んだのか。機嫌が良くなり、照れくささも吹き飛んで
「ありがと~がっくん。わたしもね、お返しのプレゼント。いつも、優しくしてくれてありがとう。さっきも、お菓子ありがとう。だから感謝のプレゼント~」
手渡した包み。促して、開けて貰う。出てきたループタイに、驚きの顔と、喜ぶ声
「おいおい、高かっただろコレ~。無理するなよ。ありがとう、リン。趣味もいいじゃない。大切にする。ありがとう」
彼に気に入ってもらえたのが嬉しくて。撫でてくれるのも嬉しくて
「ありがとうがっくん。これ、今年の誕生日プレゼントでしょ。わぁ綺麗~」
彼はまた、一瞬呆けた顔をして。その後少し、微笑んで
「いや、誕生日のは、家にもう買ってあるんだけどさ。なんか贈りたくなって、リンに。それ、付けたリン、イイんじゃないって。この贈り物は、リンだけ。レンにはナイショ。ま、剣道用具一式とアイコで良いじゃない」
照れたような彼の顔。初めて見せる表情
「がっ、くん」
鼓動が少し、跳ねた覚えがある。その跳ね方は初めての感覚だった。しばらく見つめあう。無言。何とも言えない空気が流れる
作品名:はじまりのあの日14 秘密の贈り物 作家名:代打の代打