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代打の代打
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はじまりのあの日16 バレンタインとリップサイン2

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キッチンに入った先、カイ兄、真剣な眼差しで、ケーキをデコレーション。オーブンでも、何やら焼かれている真っ最中

「カイトお疲れ様。もう、見たまんまおいしそうじゃないの」
「あ、め~ちゃん。あ、みんなも。ってことは、テルさん達が帰ってくるのかな」

気付いて、顔を上げる、エプロン姿のカイ兄。ただ、ケーキに気を取られ、わたしの変化に、この時点では気がつかない

「カイ兄、やっぱり似合ってる~」
「カイトのに~さん、萌え萌え~」
「ははは、何か、リアクションに困るね」

着けているのは、白いフリルエプロン。所々、過剰なほどフリルが付いたドレスデザインの。声を上げた、ミク姉とIA姉が最近贈った。調理の時、黒の腰巻き前掛けをする、紫の彼。キッチンでゼヒ並んで欲しいと。どんな意図か『多少』分かる。まあ、この日、そのツーショットは無かったけれど。それを身につけてくれる兄、冗談が通じすぎている

「うん、カイトアニさん。ついさっき連絡あったの、もうすぐ着く~って。うっわ~超おいしそう、コレ何~」

デコレーションされた、美しいケーキに興味津々なのはMikiちゃん。だって、本当に美味しそう

「いちごのレアチーズケーキ。殿が、越後の有名いちご用意してくれてさ。ハウス物だけど、すっごく甘いよ。味見しちゃった、いちご。もう少しで完成。あとは、食べるまで冷やしておくだけ」
「すご~い、これ絶対美味しいよ。ありがと~カイ兄」

衝動的に声が出るわたし。微笑んで、作業に戻る兄。作業に集中しているため、やっぱりわたしの変化に気付かない。するとタイミング良く、焼き上がりを告げる電子音

「このにおい~。もう一つは、焼いた方かな~カイトのに~さん」

目を閉じて、香りを堪能、IA姉。デコレーションを終えたカイ兄が首を回しながら

「よっし、かんせ~い。IAちゃん正解。ベイク・ド・チーズケーキ。今年はチーズしばり。こっちはもう、リビングに運んで良いよ~」
「ゎ~い、運びま~す」
「わたしも手伝う~IAさ~ん」

オーブンを開けると、放たれる、焼きたてのケーキの香り。食事で戟闘を繰り広げる漫画のごとき破壊力。ミク姉と、オーブンから二人がかりで取り出す。キャスターに乗せる。ある意味では拷問だ

「では、ワタシは、飲み物の容器を準備しますわ」
「ウチも。取り皿とか、ケーキナイフ出しとくかっな~」
「じゃ、ボクは酒だぜ。かむいが、漬けたウォッカは鉄板だな。抹茶とコーヒーのリキュールも出そうじゃねぇか」

みんな、徐々にテンションが上がっていく。最も、前日から、みんなの気持ちは高揚しているけれど。それに拍車がかかる。それぞれの品をキャスターに乗せる。わたしも、舌休めのソルトピーナッツ、クラッカーや漬け物を手に、リビングへ。向かっていくと、何やら楽しげな声が漏れている。つまり誰か帰ってきている。変化した自分への評価、どう下されるか不安。タジログわたし

「大丈夫ですわ、リンちゃん。さあ、行きましょう」
「ぜぇ~ったい大丈夫っ、さあ見せつけちゃおっ。可愛いリンちゃんを」

ルカ姉に手を引かれ、Mikiちゃんに押されて、入るリビングルーム

「あ、ただいま~。タイミングばっちりじゃんっ痛っ」
「今、帰りました~。わあ、おいしそうです~ぅ」
「戻ったス。うっわ、美味そうなのが来るっ」

大テーブルに、買ってきた飲み物を並べていたのは、弟とピコ君。室内用、耳当てとぽんぽんの着いたニットキャップ姿の勇馬兄。ケーキを見て、目が輝く。が、急に動いたレン、筋肉痛に襲われたようで呻く

「あ、みんなお帰りなさ~い。カイトのに~さんね、もぅ一つぉいしそうなの作ってくれてたよ~」
「おかえり、レンくん、ピコ君も~。勇馬兄、先生と、アル兄は」

キャスターを押すIA姉。まだ、二人の姿が見えない。聞く、ミク姉。その答えは、本人さんの声で返ってきた

「あ、今戻ったでゴザル。車をGarage(ガレージ)に入れていたでゴザルヨ」
「簡単なおつまみや、お菓子も買って参りました。アルさんだけにお持ちさせるのは、忍びないので」

袋やケースを手に、リビングに来る先生とアル兄。二人は袋を置き、手を洗いに向かう。袋から、スナックやおつまみを取り出す、レンとピコ君、勇馬兄。三人は、先に手を洗ったらしい。飲み組のため、海鮮オードブルや、スパイスポテトも買ってある。天使様を意識した、子供オードブルは、ナゲットやソーセージ。戻って来た先生、わたしを見て

「ああ、リンさん、大変に素敵ですね」

変身に、真っ先に気がついてくれる。破顔し、自分の目を指さして、アイラインを分かってくれる

「だろ~センセッ、さっすが解ってる~」

わたしの変化に気付いたこと、それがキヨテル先生であったこと。どちらにも喜ぶリリ姉。駆け寄って、先生の背を叩く

「あ、本当だ~、リンちゃん良いよ、わぁかわいい。良い色です~」
「オオ、リン殿、Berry ℃-uteでゴザル」

この声を呼び水に、気がついてくれる、ピコ君、アル兄。ただ、気付いてくれる人が居る一方

「ん、あ~リボン変わってんだ。何か洒落っ気出してるじゃん、リン」

その程度にしか、変化に気付かないレン。そう言う弟よ、整髪料で髪、整えたな。香水も付けただろう、紫様に頂いた

「あ~、ヘアピン変えたんだ、リン。へぇ~」

勇馬兄も、髪飾りの変化に気付くのみ

「ええ~勇馬そんだけ~」
「れんれん、めっ」
「「は」」

Mikiちゃん、カル姉、お叱りに、眉をひそめる両者。全く気付かない

「どんだけ~って感じだな。まいっか、これで後は、おにぃと天使様だけだな。主役を待つだけ~」

今度は呆れ顔のリリ姉。キヨテル先生、アル兄、手を洗いに行く

「テンションがあがって来るぜ。お、ツマミもあるじゃね~か。よっしゃ、飲みながら待とうぜ、メイコちゃん」
「良いわね、アネキ。ウィスキーも持ってきといたわ。甘い物に合うものね」

言うが早いか、あたりめやチーカマの袋を開ける。飲み始めてしまう姉二人。銘々皿や、スプーン、フォーク。それぞれ、並べられる。高まっていく、祭典への期待感。わたしは緊張感。彼がどう思うかへの。レン、勇馬兄のように、気付いてさえ貰えなかったら、という焦燥感。気に入って貰えなかったら、という不安感

「さすがピコきゅん、気付いたね。カラオケの電源、入れちゃお~」
「良いですね~、Mikiちゃん。マイクも準備しま~す」

何故、今まで無かったのか、不思議で仕方ない。カラオケセットは、京都から帰って、一週間後。めー姉の提案で購入した。今までのリク合戦は、簡単にギターやキーボードでメロディーを奏でていた。紫様、カイ兄やアル兄が。まあ、それも凄いのだけど。周辺に民家はない。騒音の心配なし。アホ毛ペア、Mikiちゃん、ピコ君が向かう。二人のアホ毛、♪マーク

「お、みんな帰ってきたね。これで後は殿達だけか」
「あ、カイトさん。今ね、ぽ兄ちゃんから連絡入ったの。取りに来てほしいものがあるって。わたし行ってくるね。カルちゃんもお願い」
「めぐねえさまに続きま~す」

カイ兄がリビングにやってくる。同時に入った連絡。めぐ姉とカル姉、自宅へと向かう。その前に