はじまりのあの日16 バレンタインとリップサイン2
次にいつ、彼が話し始めるか。さざ波のような会話。みんなも甘い物を口に運ぶ。IA姉、湯気立つ紅茶を持ってきてくれる。わたしの隣に座り、チョコムースを一口。一息にお酒を流し込む彼。同じものを注ごうとするリリ姉。それを辞して、今度はウイスキーを手酌で。おつまみのチーズに手を掛け
「結果、今こうして、み~んなで楽しめてるじゃない。生まれも育ちも、血筋も。国さえ違う俺達が、さ。すごいことじゃない。ある意味完璧に体現してる。主らが立ち上げたPROJECTの理念を、俺達が」
銀紙を取って、一口で放り込む。ウィスキーで流す
「そうか、もう六年ね。神威君がやってきて、間違いなく変わったわ。メンバー同士の空気感、接し方。初めて来てくれた『親族』以外の貴方様、今の仲良し空気を作り出してくれたわ」
「そうか、メイコ様。それはさ、貴女達『家族』の仲が良かったからってだけじゃない。俺なんかそこに、土足であがりこんだエセ侍ってだけじゃな~い」
もう一口、お酒を含む。褒められたミク姉、照れくさげ。わたしと弟は誇らしい。やっぱり双子だ。ルカ姉は感動的表情
「いや、変わったよ殿、間違いなく。殿が来てくれて。今、みんながここで楽しく暮らしていること。こんな風に、楽しいパーティー。オレ思いつかなかった」
「リリ姉言ってたけど、初めてバレンタインパーティーしたときのケーキも、美味しかったよがく兄」
めー姉に寄りかかり、目を閉じる。やや、眉毛が濡れているカイ兄。弟は朗らかだ
「さ~て、ね。ま~ぁだとすればそれは、あのホワイトチョコからだった、かもじゃな~い。あの日、リンがくれた、魔法のホワイトチョコ。ありがとう、リン。その魔法が、今この宴を開かせてる」
見つめあって、微笑む彼とわたし。撫でてくれる紫様
「だから、えこひいき。リンには贈ってあげたい、チョコレート」
「ありがとがっく~ん」
わたしの肩に、腕を回してくれる彼。嬉しくて、抱きつくわたし。と、失敗したと瞬時に思った
「あっ、ごめん、付いちゃった」
あの日、日常で初めてした化粧。意識などせずに飛びついたせいで
「ああ、別に気にしなくてイイじゃない」
セーターの胸に、付けてしまったリップ。慌てて離れる
「あら~、気を付けなきゃ、リン。神威君、落ちないかも知れないわよ~」
苦笑のめー姉
「え~、ごめんねがっくん」
「あはは、だったらさ、ケーキのお礼って考えちゃわない、コレ」
謝るわたしを、いつものように撫でてくれ
「リンが俺にくれた、お礼のし・る・し」
胸のリップサインを示す彼。何故照れたのか、あの日は思いつかなくて。でも、ただタダ照れくさくて。照れ隠しの『つもり』で
「お礼かぁ、なら、もっとあげちゃおっか」
自分の下唇に人差し指をあて、上目遣いで言ったはず
「こ~ら、調子に乗らな~い」
少し身をかがめ、指でおでこをつついて来る紫様。二人で、こんなやり取りをしたところ
「ぅあ~、神威のに~さ~ん」
「リ~ンちゃ~ん、もぉぅぅ~」
「ううう、あしのさきがむずむずむず」
悶え出すIA姉、自分を抱く。めぐ姉、自分の膝を叩く。カル姉が内股、膝をさする。慌ててわたし、彼から離れる
「じ、じれったい。確かにコレハジレッタイ」
アル兄、片腕を何度もさすり
「リリちゃん、ど~したの」
「なんでもね~。しばらくこのままで」
ユキちゃんに抱きつく。というか、先生もろともに、抱きつくリリ姉。抱きつかれ、困り果てるキヨテル先生
「う~ん。デリケートな問題だから何とも言えないけど」
「本当に気付かないだけか、不安になりますわ~」
困り顔のめー姉。ため息交じりのルカ姉
「つ~か、みんな何言ってんの」
「どうかしましたかみなさん」
「なんでもありませんよ。仲良きことは、美しきかな、というお話です」
分からない弟、リュウト君と天使様。困りながらも、神がかり対応のキヨテル先生
「仲良しでこまるの~」
「ミンナコマッハカオ(困った顔)シテマフ~」
もっともな疑問の、いろはちゃん。首をかしげるオリバー君
「ちゃうんだ~、もっと仲良くなりゃ~って思ってんの」
顔をあげたリリ姉、困り顔
「何だか、自分にも、何だかその~。はぁ~」
「気長にいこうか~」
何かに嘆息する、勇馬兄。カイ兄が背をさする
「その目が気になる。意味が分からん」
「本当っ。さっき変な目で見ないって言ったのにぃ」
不満を言うわたし、彼から離れる。きっと顔中不機嫌。言って、ササミの燻製を噛みちぎり、ウイスキーを一息で飲み込む。獰猛笑顔を浮かべる彼。腰が退けるメンバー。さっきとは違う静けさ。気まずさを誤魔化すため、無言で、甘い物をムサボル。めー姉や彼、テト姉はお酒とおつまみ。少しずつ回復する、会話のキャッチボール。ただ、彼とわたしのことには、もう触れない
「何かテンション低いぞ~、カラオケでもしようじゃな~い」
「はは、カラオケ大会始めましょ~」
「わ~い、リク合戦で~す」
やや、あきれ声のMikiちゃん。甘いお菓子で、テンション沸騰中のピコ君。彼の号令によって。始められたカラオケ大会。飛び交ったリクエスト合戦。あらゆるジャンルの曲、メンバーの持ち歌。飛び交うリクエスト。本当に歌好きなみんな。リリ姉と紫の彼、有名アーティストの歌を歌う。リリ姉の歌と、彼ラップが格好よかった。リュウト君は、アル兄と炭酸飲料歌を踊り付きで可愛く歌う。いろはちゃんの演歌は力強い。勇馬兄は、歌いながらダンスを披露。アクロバティックな踊りは、メンバー随一。楽しい時間だった。下ゆでしたじゃがいもを、蒸し器に並べる。ちょっと熱いな。熱の出る料理をしているんだから、当然か。ひょんな事で、意識が今へと帰ってくる。汗を拭き、わたしは又、調理に集中する―
「結果、今こうして、み~んなで楽しめてるじゃない。生まれも育ちも、血筋も。国さえ違う俺達が、さ。すごいことじゃない。ある意味完璧に体現してる。主らが立ち上げたPROJECTの理念を、俺達が」
銀紙を取って、一口で放り込む。ウィスキーで流す
「そうか、もう六年ね。神威君がやってきて、間違いなく変わったわ。メンバー同士の空気感、接し方。初めて来てくれた『親族』以外の貴方様、今の仲良し空気を作り出してくれたわ」
「そうか、メイコ様。それはさ、貴女達『家族』の仲が良かったからってだけじゃない。俺なんかそこに、土足であがりこんだエセ侍ってだけじゃな~い」
もう一口、お酒を含む。褒められたミク姉、照れくさげ。わたしと弟は誇らしい。やっぱり双子だ。ルカ姉は感動的表情
「いや、変わったよ殿、間違いなく。殿が来てくれて。今、みんながここで楽しく暮らしていること。こんな風に、楽しいパーティー。オレ思いつかなかった」
「リリ姉言ってたけど、初めてバレンタインパーティーしたときのケーキも、美味しかったよがく兄」
めー姉に寄りかかり、目を閉じる。やや、眉毛が濡れているカイ兄。弟は朗らかだ
「さ~て、ね。ま~ぁだとすればそれは、あのホワイトチョコからだった、かもじゃな~い。あの日、リンがくれた、魔法のホワイトチョコ。ありがとう、リン。その魔法が、今この宴を開かせてる」
見つめあって、微笑む彼とわたし。撫でてくれる紫様
「だから、えこひいき。リンには贈ってあげたい、チョコレート」
「ありがとがっく~ん」
わたしの肩に、腕を回してくれる彼。嬉しくて、抱きつくわたし。と、失敗したと瞬時に思った
「あっ、ごめん、付いちゃった」
あの日、日常で初めてした化粧。意識などせずに飛びついたせいで
「ああ、別に気にしなくてイイじゃない」
セーターの胸に、付けてしまったリップ。慌てて離れる
「あら~、気を付けなきゃ、リン。神威君、落ちないかも知れないわよ~」
苦笑のめー姉
「え~、ごめんねがっくん」
「あはは、だったらさ、ケーキのお礼って考えちゃわない、コレ」
謝るわたしを、いつものように撫でてくれ
「リンが俺にくれた、お礼のし・る・し」
胸のリップサインを示す彼。何故照れたのか、あの日は思いつかなくて。でも、ただタダ照れくさくて。照れ隠しの『つもり』で
「お礼かぁ、なら、もっとあげちゃおっか」
自分の下唇に人差し指をあて、上目遣いで言ったはず
「こ~ら、調子に乗らな~い」
少し身をかがめ、指でおでこをつついて来る紫様。二人で、こんなやり取りをしたところ
「ぅあ~、神威のに~さ~ん」
「リ~ンちゃ~ん、もぉぅぅ~」
「ううう、あしのさきがむずむずむず」
悶え出すIA姉、自分を抱く。めぐ姉、自分の膝を叩く。カル姉が内股、膝をさする。慌ててわたし、彼から離れる
「じ、じれったい。確かにコレハジレッタイ」
アル兄、片腕を何度もさすり
「リリちゃん、ど~したの」
「なんでもね~。しばらくこのままで」
ユキちゃんに抱きつく。というか、先生もろともに、抱きつくリリ姉。抱きつかれ、困り果てるキヨテル先生
「う~ん。デリケートな問題だから何とも言えないけど」
「本当に気付かないだけか、不安になりますわ~」
困り顔のめー姉。ため息交じりのルカ姉
「つ~か、みんな何言ってんの」
「どうかしましたかみなさん」
「なんでもありませんよ。仲良きことは、美しきかな、というお話です」
分からない弟、リュウト君と天使様。困りながらも、神がかり対応のキヨテル先生
「仲良しでこまるの~」
「ミンナコマッハカオ(困った顔)シテマフ~」
もっともな疑問の、いろはちゃん。首をかしげるオリバー君
「ちゃうんだ~、もっと仲良くなりゃ~って思ってんの」
顔をあげたリリ姉、困り顔
「何だか、自分にも、何だかその~。はぁ~」
「気長にいこうか~」
何かに嘆息する、勇馬兄。カイ兄が背をさする
「その目が気になる。意味が分からん」
「本当っ。さっき変な目で見ないって言ったのにぃ」
不満を言うわたし、彼から離れる。きっと顔中不機嫌。言って、ササミの燻製を噛みちぎり、ウイスキーを一息で飲み込む。獰猛笑顔を浮かべる彼。腰が退けるメンバー。さっきとは違う静けさ。気まずさを誤魔化すため、無言で、甘い物をムサボル。めー姉や彼、テト姉はお酒とおつまみ。少しずつ回復する、会話のキャッチボール。ただ、彼とわたしのことには、もう触れない
「何かテンション低いぞ~、カラオケでもしようじゃな~い」
「はは、カラオケ大会始めましょ~」
「わ~い、リク合戦で~す」
やや、あきれ声のMikiちゃん。甘いお菓子で、テンション沸騰中のピコ君。彼の号令によって。始められたカラオケ大会。飛び交ったリクエスト合戦。あらゆるジャンルの曲、メンバーの持ち歌。飛び交うリクエスト。本当に歌好きなみんな。リリ姉と紫の彼、有名アーティストの歌を歌う。リリ姉の歌と、彼ラップが格好よかった。リュウト君は、アル兄と炭酸飲料歌を踊り付きで可愛く歌う。いろはちゃんの演歌は力強い。勇馬兄は、歌いながらダンスを披露。アクロバティックな踊りは、メンバー随一。楽しい時間だった。下ゆでしたじゃがいもを、蒸し器に並べる。ちょっと熱いな。熱の出る料理をしているんだから、当然か。ひょんな事で、意識が今へと帰ってくる。汗を拭き、わたしは又、調理に集中する―
作品名:はじまりのあの日16 バレンタインとリップサイン2 作家名:代打の代打