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代打の代打
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はじまりのあの日17 中華の街へ

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「スタッフさんは、一昨日からステージ作ってくれてるって、殿」
「この阿吽の呼吸。さすがPROJECTTEAMだな、カイト」

朝食を済ませ、一旦着替えに各々家へ。先行しているプロデューサー三人のもとへ向かうため。つまり、公演や稚児行列の舞台、商店街へ移動しようと。車のガレージスペース前へふたたび集合する。と、嬉しい出来事が

「がくサン、それ、かっけぇす。刀の鍔、デザインいっすね」
「だろう、気に入ってんだ。季節も良くなって、ようやくシメられるじゃない」

談笑する男性陣、上下お揃い。明るめのベージュ、ジャケットとパンツスタイル。シャツや靴、ベルトが違うくらい。ああ、弟だけが七分丈スリット入りのパンツ。さて、その彼。グレーのワイシャツの胸元、緩く結ばれたループタイ。白銀、刀の鍔が輝く。わたしが彼に贈ったもの。気に入っているの声にうれしさが込み上げる

「リンちゃんのかみかざりきれ~、お花はなぁに~」
「ありがとう、いろはちゃん。これね、椿の花なんだ~」
「あら、リン、ホント良いじゃないの。そんな良いの持ってたかしらね~」

いろはちゃん、めー姉が、髪飾りを褒めてくれる。そのわたしたち、紫様曰く『お嬢組』の格好もお揃い。薄桃色ドレスワンピースに黒のボレロ。バックやアクセサリーなど、小物は違う。天使様は、白のロングベストにスプリングセーター。男の子は、ハーフパンツ。女の子はプリーツスカート。仲良しメンバーの『お揃い』衣装。わたしの頭上に咲き誇る、紅白椿。あの日は、覚え始めた化粧をして

「あ、リンちゃん似合ってるね、それ~。ちょっと大人っぽい。椿の花『和』のお花だけど、今日のお洋服にも合ってるね~」
「神威のに~さんのタイもカッコイイ。センスが光ってますね~、あ、刀の鍔でこちらも『ゎ(和)』で~す」

多少の事情を知っているめぐ姉、IA姉。あえて『二人を一緒』に褒めてくれる。珍しくイタズラっ子モード

「でねでねリンちゃん、ぽ兄ちゃんどうかな、カナかな~」
「に~さん、リンちゃんどう思ぅ~、ご感想~ぅ」

互いの姿の感想を求めてくる。彼とわたし、目が合う。数秒間見つめあっていると

「ナイスツーショット、がくリン」

ミク姉の声で、意識が帰ってくる。どうやらわたしは魅入っていたようだ。完璧な彼の格好良さに。当の彼がどう思って数秒間を過ごしていたかは、今になっても分からない、が

「うん、リン、カワイイじゃない。いや、化粧の効果もあるな『綺麗』に寄ってる感じ。今日のドレスにもよく似合う」

そう言って、頬を撫でてくれた。嬉しさ、照れくささが込み上げて

「がっくんはいつも通り」

なんて返した、やや早口で。変わらず微笑む彼の鳩尾(みぞおち)辺りに、頭突きをカマシテ

「だって、い~っつもカッコイイもん。今日もかっこいい」

歯が浮く台詞を言ったものだ、と今は感じる。身じろぎ一つしない彼が抱き留めてくれる格好。一応学習して、お化粧が付いてしまわないように『頭突き』を選択

「うっあ~何このフンイキ~。周りにキラキラが付きそ~う。ぐっじょぶ、がくリン」
「ま、カッコイイなんて言われれば嬉しいじゃない、リン。さて、というか、まだ撮ってたのかミク」
「でも、これって完全オノロケじゃね~の~」

わたしの肩に手を載せ替え告げる彼。撮影中のミク姉にツッコミを入れる。その彼に突っ込むリリ姉

「ゎあ~、すっごくいいフンイキだったよ~。リンちゃんと神威のに~さん。朝から良いのみた~」
「って、照れくさいっ、これ。どうしよ~ピコきゅ~ん。うわ~ほっぺた熱いよ~」
「じゃ~、Mikiちゃんが付けてる、もふもふファーもかわいいですよ。なんてど~ですか~」

両頬を包み、悶えているIA姉。の横で、ピコ君にのし掛かるMikiちゃん。に向けて、照れる台詞をいうピコ君。益々頬を染め、のし掛かりに行くMikiちゃん

「な~に言ってんの、Miki。おまえ達、どこから観ても『バカップル』って感じじゃない、ピコ」
「ぅわ~、こっちも萌え萌え~」

上手に切り返す紫様と、益々もって悶えるIA姉

「も~ちょっと観ていたいけどね、あんた達。そろそろ出発しないと間に合わないわよ~」
「首都高って、何時渋滞が起こるか分からないんだよ。さ~あ、出掛けよう」

『新婚さん』の二人に声を掛けられる。さすが夫婦。イヤ、始まりの二人。わたし達のリーダーだ

「よっしゃぁ、向かおうじゃない目的地へ」
「ぃくぞ~、ぉ・ま・え・達~」
「「「「「「「「「「お・ま・え・達~」」」」」」」」」」

彼の口調を真似したのはわたし、ではない。元『おまえ』嫌いのIA姉。その号令で向かう街。わたし号車の車内では

「あら、レン君、今日のFragrance(フレグランス)も良い香りですわぁ」
「甘い、い~にお~い。レンくんのにおいと混じるからかな~」
「ちょ、くつきすぎっ、ルカ姉っ。ミク姉、乗せないで、膝に頭ぁ」

レンが大変にかき回されていた

「ぅ~ゎ~、も~ぇ~。レン君もてもて~」
「IAね~変な勘違いしないで~ぇっ」

あはは。たどり着いた商店街。店の佇まい、昔ながらの良いアーケード街。商店街の会長さん、わたし達を案内してくださる。まぐろ専門店二軒、お刺身やうなぎのお店が多いことに喜んだルカ姉。わたし達の地元とは、少し違う空気感。でも、温かな雰囲気は通じるものがある。商店街の皆さんと交流し、暖かい空気が生まれる

「では、打ち合わせに入らせていただきます。まず衣装合わせから」

わたし達のプロデューサーが告げる。案内されたのは、服屋さん。衣装は商店街の提供で、という希望だった。なんと、この日にあわせ、衣装はすべて作って下さったのだという。天使様、稚児行列の衣装はさしずめ『オダイリサマとおひな様』という風情

「わ、想像してたのと違う。やった、おれ足軽だ~」
「ははは、レン、似合ってるよ」

足軽の鎧を着けるレン。カイ兄に褒められてご機嫌。ルカ姉ミク姉も黄色い声を上げ、レンを褒め称える。そういえば片割れは『神威道場』で剣道着の他、最近、面や銅も着けて練習している。それも相まってか

「リンちゃん、たいがドラマのおひめさまみたい~」
「うふふ~ぅ、ありがとうっユキちゃん。わたしも想像と違って嬉し~い」

褒められてテンションが上がる

「いあいあも似合ってる。かあいい」
「ありがとぅ~カルちゃん。ぉ稚児さん、楽しみだな~」

わたしは十二単『風』の着物、やや重い。IA姉は少し違った稚児和服。髪飾りの瓔珞が倍、かわいらしい

「楽しみだね~、IA姉」
「神威のに~さん、早く来るとぃぃね~」

カル姉に商店の皆様に『大人扱い』されたことがうれしいわたし。IA姉が『お稚児さん』なのに、わたしは『姫』役に選んでもらったから。数日前に文句を言ったのは、何処の誰か。完全に上機嫌。着替えを済ませた彼もやって来て

「お、みんな似合ってるじゃない。これは、本格的な出陣行列になるな。気合い入れ直そうじゃな~い」