はじまりのあの日17 中華の街へ
「あれ、わたしとユキちゃん、いろはちゃんは、なんでズボンなの」
デザインの違いに気付くわたし。三名だけ、異なる箇所
「ああ、ま、気にしなくて良いと思うわよ、リン。そっちのが似合ってるわ」
「それ、うちも思うよメイコアネさん。リンちゃんいいっ。元気いっぱい、チャイナ娘娘(にゃんにゃん)ってカンジで」
多分、理由は分かっていたんだろうが、言わないめー姉。本心の感想を述べてくれただろう、Mikiちゃん。単純なわたしは、見事煙に巻かれ、上機嫌で着替えを終える。更衣室にあてがわれた部屋を出る。男性陣と合流
「お、センセ似合~う。そ~きたか、以外~」
「これなら、少しは見栄えるかと思いまして」
髪をセットし、眼鏡を外したキヨテル先生。確かに『先生モード』より『ロックモード』の方が似合っている
「ああ、リリィさんもお似合いですよ。大腿部は、もっとしっかり隠して頂きたい所ですが」
おもむろに眼鏡を掛け、リリ姉を観た先生の感想。褒められた当の本人、照れ隠し。キヨテル先生の背中を何度も叩く
「アルさん、迫力がありますわ」
「ホント~、天下一の武道会とかにでてそ~ぅ」
ルカ姉、Mikiちゃんの言葉に、構えを見せるアル兄のサービス精神。男性陣、女性陣。デザインは多少異なる。女性は提灯半袖、男性は袖無し。スリットは女性の方が深く、腰まで入り、脚はハイニーソックス。履く靴はハイヒール。男性は、中華ズボンとカンフーシューズ。ファーの付いた扇は共通のアイテム。わたしと、天使様は同じ格好。膝丈の中華ズボンにカンフーシューズ。差異はあっても、全員お揃いの格好
「ほっほ~う。分かってるじゃね~か、主催者様。が、一点惜しいな~。生足か、網タイツにすればもっとエロ―」
「おい、我が主様よ、文句あるか」
「何一つ問題ありませんよね」
獰猛笑顔。胸の前、拳の指を鳴らす紫様。ふたたび、眼鏡を外すキヨテル先生。神威組プロデューサー、光の速度で、わたし達に背を向ける
「ははは、でも素晴らしい出来映えだね。これからは衣装として使わせていただきます」
『提供元、しっかりアピールして』とわたし達のプロデューサー。お店の皆さんに頭を下げる
「ってゆーかさ、おれは、すっげえ不満なんだけど」
足軽衣装には大喜びだったレン
「え~、レンちゃん超似合ってるよ~。ピコちゃんも激萌え」
男組の中、2人だけ提灯袖。深めのスリット、腰履きのスパッツ。頭の上にはサンザシの花飾り。レンに至っては、オデコを出して、括っていた髪は解かれている。さあ『どちら』と聞かれたら『中華男子』より『中華娘娘』のレン、顔中不満。完璧に『娘娘』のピコ君は、女性陣と同じ格好。こちらは、心底楽しそうだ。これは、主催者様の意向ではない。女性プロデューサーの悪ノリだ
「かるには分かる。おひめさまも~どの素晴らしさ。うふふふふ、かあいい『レンちゃん』と『ピコちゃん』」
「俺、カイト、レン。三人ユニットのレン、造語まで出来ちゃったじゃない」
「あ~、レンと天使を混ぜたヤツだよな、おにぃ。マジ、ピコと並べると完璧ドルフィー『薔薇の~』みたいな」
朗らかな神威の兄妹。ゴスロリドール様のソフトホラーアニメ、その主題歌を口にするリリ姉。益々沈んでいく弟
「あ、でも頭の花飾り、リリ姉と一緒~。ちょっと羨ましい、姉妹みたいでさ」
「服の色も同じよねぇ。リンとレン、リリィで『三姉妹』ね。ふふっ、可愛いわぁ」
爽やかに無自覚にトドメをサスわたし。にこやかに引導を渡すめー姉。二人の『爆撃』で沈没しかかる弟
「まあ、レンのチャームポイントなんだよ。男の娘に見えるのって。お姉ちゃんがリンの双子ちゃん。可愛いわけだよね」
慰めに行くカイ兄。ただ、その言葉も『雷撃』と聞こえてしまったようで、完全に撃沈される弟。ただ、その言葉で吹っ切れるレン。沈んだ船はよみがえって宇宙(ソラ)を飛ぶ
「明日商店街で歌いま~す。お団子、ちまきの直販もするから、み~んなでき・て・ね~」
「歌って踊りもしちゃいま~す。とっても良い商店街だから、皆さん、脚を運んで下さ~い」
中央駅の前、ロケバスから降り立つわたし達。たちまちに人波に囲まれる。わき起こる、ありがたい歓声。駅前でのゲリラコマーシャル。ピコ君と共に、超積極的に『男の娘』な仕草をレンパツしたレン。お姉様方から、黄色い悲鳴を浴びていた。帰りのロケバスで燃え尽きていたけれど
作品名:はじまりのあの日17 中華の街へ 作家名:代打の代打