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はじまりのあの日18 おやすみの魔法

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一つ上のランクのホテルはどうですか、そんなTVCM。でも、ホテルにしろ、旅館にせよ。ランクがどうのじゃあなくて、泊まってから居心地は、TVからは伝わってこない。インターネットのサイトなんかの書き込みも、信用ならないところがあるし。それに、みんなでだから楽しい。誰かと一緒だから、心地良いんだよね。そっか、あの日まで無かったな、一人部屋。子供組は、ソロのお仕事でも、絶対誰か付いてきてくれたから。保護者代行。ああ、護られていたな、わたし。さっき『熊』でも思った。紫様なら護ってくれる。えへへ、今でも護ってくれてる、紫の彼。あの夜も言ってくれたな、護るって。うん、記憶書庫さん、読ませてね。さっきその『熊』のせいで読むことができなかった『わたしの王子様』とのお話しを―

「ごめんね感もあるけど、ぅ~れしいよね~。こんなに歓迎してもらえて~」

さっき反芻した、IA姉の可愛いほわほわボイスで、思い出脳内上映が始まる

「ほんとうですね。たいへん、ありがたいことです」

丁寧に腰を折り、あたまを下げるリュウト君。お利口様につられて、わたしも

「ありがたいよね、リュウト君。こんな風にしてくれて。IA姉、感謝しないとね~。わたし達、大好きな『歌う』ってこと、してるだけなのにさ~」

思わずつぶやく、ありがたさ

「ッハハ、リン、な~んか、メー姉みたいな事言うな~。言ってることはマジだけどさ」
「大事なことじゃないの、リリ。何度でも思っちゃおうじゃない。イイ子だぞ~リ~ン」

リリ姉、やって来て、お総菜を置いた紫の彼、共に撫でてくれる。どちらの感触も素晴らしいけど、やはり、紫様のが格別だった。お総菜を置いて、手を洗って荷解。賜り物を並べ始めるころ

「ただいま~、あはっ。何かみんなも同じみたいよぉ、カイト~」
「色々と頂いちゃってさ。ついでにめ~ちゃん、試飲ですでにご機嫌」

酒瓶やおつまみを手に、腕組みで入ってくるめー姉、カイ兄。試し飲みが、本番呑みになっているめー姉、上機嫌。困り顔のカイ兄、少しだけ嬉しそうなのは、姉を独占出来るからだろう。酔っためー姉、お世話できるのは、カイ兄の特権

「拙者モご相伴に預かってしまったでゴザルヨ」
「じゅ~すのお試し、うまうまごめん」

やや、顔が赤いアル兄。新婚二人の後方、酒瓶の包みを両手に来る。カル姉の包みはソフトドリンクか。酔っているとはいえ、別段、足取りも意識もしっかりしているのは『さすが』のめー姉とアル兄。カイ兄も、惣菜並べに加わる。その辺りで

「こんなの安くして貰っちまったぜ、申し訳ねえ」

テト姉が両手持ちで持ってきたのは、丸々一羽。アヒルの香草焼き。お腹の中には、ご飯が詰められているという

「ゎ~あ、鳥さんだ。ゎたしはちょっとニガテかな~」

肉が嫌いではない、が、どちらかと言えば、お野菜やお魚派。骨付き肉や、分厚いお肉が苦手なIA姉、たじろぐ

「ふぇふぇふぇ、絶対美味いぜ、IAたん。このアヒルたんは」
「すっげ~。豪勢じゃ~ん、重音さん」
「わぁぁ、鳥さんだ~。おいしそ~う」

どす黒い笑みを浮かべるテト姉。ザ・肉好きのリリ姉、いろはちゃんは興味を示す。早くもコップ酒を手にするめー姉は

「アタシも苦手かな~。焼き鳥とか、鳥モツ煮込みなら、大好きだけどね。でも、お店の皆さんには感謝だわ~」
「ナカノRiceガキニナリマフ~」

鳥味ご飯が好きなオリバー君。各々方、種類別好みを述べる。何時か思った『好き嫌いが無くなる』と。ちょっと違ったか。でも、食べられない野菜は無いし、魚や納豆もみんな大好きだ。多少の味付けや、目玉やきの黄身の堅さ肉など、好み分かれるメンバー。その辺は仕方ないよね

「しかしコレ、しまっておかないとフラグじゃない。倒れちゃう」
「あ、だね、殿。テト姉さん、切り分けるか、しまうかするから―」

そう、この丸ごとアヒルはかなり、いや、決定的にまずい

「ただいま~。中華ちまきも、団子も美味そうだよ~。ヒッ」
「わわ~レン君ッ」

遅かった。卒倒するレンを抱き留めるミク姉。最悪のタイミングで帰ってきた

「言わんこっちゃナイ。取り敢えず、今からでも閉まっとけ重音」
「あ、オレこの間に切り分けちゃうよ。中華包丁借りてくる」

額に手を当てる紫様。調理場へ向かうカイ兄。わたしの弟は、丸焼きの鳥、というか、鳥の肉がが『食べられなく』なってしまった。わたしと片割れの故郷、酪農実家『〆て食べる』事は良くあるのだという。ただ、直接目にするには覚悟がいる。紫の彼が言う『命を頂く』顕著な証

「ダラシナイぜ~レンたんよう。鳥たんの捌きゴトキ」
「重音、おまえと一緒にするんじゃナイ。ほとんどのヤツは見たことがないんだ、〆るトコ」
「うん、テト姉さん。ぶっちゃけオレもない」

そう、五歳で実家を離れたわたし達『命を頂く』場面は、見たことなどない。酪農牧場は、五歳年上の兄と姉『倫人兄と蓮香姉』が跡継ぎ。二人がしっかりと継いでくれているおかげで、わたしとレンは歌い手に専念できるのだ。その実家、昨年帰省したおり、運悪く『頂く場面』を見てしまったレン。以来、卵を除いた、鳥全般が食べられなくなったほど。それはトラウマとなっていた。克服のため、カイ兄、紫様が苦心。調理方法を見直し、カレーやシチューに入れる。挽肉にするなど、形を変えれば、ようやく食べられるようになったのが、つい最近。今だその段階の片割れ。この丸々の鳥さんは、あまりにもハードルが高い

「う~レン君、しっかり~」

レンを抱き上げて、ソファに運ぶ。膝枕してあげるミク姉。IA姉がおしぼりを手渡し、弟の額に当てる。はて、僅かに嬉しそうなのは何故だろうと思った

「レン君のお世話は、ワタシとミクさんでいたしますわ」

水を手に、ルカ姉、ミク姉の隣に座る。こちらもおしぼりで、片割れの頬を拭う。ミク姉の手にも水を渡してあげる。レンの脚を、膝に乗せる。姉二人に介抱される弟。真心のお総菜を温め直し、テーブルの準備が整い始める頃、ようやく復調し始める弟。意識を取り戻したとたん、真っ赤になって跳ね上がる。爆笑メンバー。リリ姉と勇馬兄が、大層片割れを冷やかした。あの夕方から始まった宴も大盛り上がり。どのお総菜も、真心が籠もった味で美味しかった

「みんな~、明日は『皆さん』のために気合い入れるわよ~」

酒瓶を三本空け、解散する前に声だし。大いにご機嫌のめー姉の宣誓に、メンバー、一同大賛同。酒瓶三本は、かなり手加減をしたほうである

「あ、みんな~プロさん達からの言伝。商店街の皆さんがね、好意で、個室とってくれたんだって。しかも、ダブルを一人で使えるって。それぞれフロントで、鍵受け取ってね」
「天使様は三人一部屋な。男女分け、保護者は、リリとテル、お願いしようじゃない」

後片付けを済ませ、部屋に向かう前、聞かされる

「了解しました、神威さん。では、オリバーさん、リュウトさん、私と同室、同じ部屋です」
「ラッジャ~、おにぃ。ユキ、いろは、ウチと一緒~」
「「わかりました~せんせ~」」
「「は~い、リリちゃ~ん」」

キヨリリ『先生』に呼ばれる天使様、それぞれ喜ぶ。ホテルの部屋に一人で泊まったのは、この日が初めて