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08:かみさまの死因

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「……俺もだよ。ああ、そうだね、人間回帰を為すのは俺じゃなくて彼の役目か。いや、まだ時期尚早かな」
 自己完結。沙樹に入り込む余地はない。臨也の言う彼は正臣のことだろうか。人間回帰とは私のことなのだろうか。そんなことを思ううちに、臨也がデスクの上の携帯に手を伸ばした。沙樹の視線が追いかけていることを知って、臨也は不敵に笑う。その携帯は一種の歴史書なのかもしれない。過去と現在と、不確定の未来を綴る。
「君は何も心配することはないよ。どっちに転んでも悪いようにはならない。すべては俺の、予定調和の、内にある」
 予定調和と口にする彼の顔は、どこかつまらなそうだったし、沙樹に答えは与えられないままだった。けれど、沙樹がそれで満足したのは、心配することはない、と臨也が明言したからだ。それだけで安堵する理由には十分だった。彼にはどこまで見えているのだろう。沙樹は手のコップを見下ろしてみる。これがガラス製じゃないのは、臨也が知っているからだ。ガラスのコップは、投げられると痛いということ。沙樹がそれを身を以て知っていて、今でも時々身構えてしまうということ。今はまだ夏で暖かいから、冷たいジュースなのだろうけれど、冬になったらどうなるのだろう。冬になっても、プラスチックのコップに、ジュースを入れて差し出されるのだろうか。あるいは。
 ジュースをのぞき込んでも、沙樹には未来のことなんてさっぱり見えやしない。それは、彼の赤い眼をのぞき込んでも、何も変わらなかった。すべてを知ってるかみさまみたいな目。ただ、彼はかみさまになったら退屈で死んでしまうのだろう。だから沙樹は、臨也がかみさまだったらいいのにとは口にしない。



かみさまの死因
臨也と沙樹

作品名:08:かみさまの死因 作家名:きり