CoC:バートンライト奇譚 『盆踊り』後編
今度はバリツが切り出す。
もはやなりふり構ってられなかった。
「私の年収は三千万だ。耳そろえて新品で返すとも」
今度はタンが、露骨に顔をしかめる。
「ならもっと給料増やしてよ……」
「ぜ、善処する。だが今はちょっとまってくれ!」
「本当に?」好子は、バリツに詰め寄る。
「本当の本当に?」
「そうだとも!」
「口先紳士の本領発揮ね」
アシュラフの呟きがぐさりと胸に来る。
年収は事実ではあったが、バリツの内心で、弁償代の見積もりが早速スタートする。
というか待てよ……ブルドーザーとか、新品だと私の年収ひっくるめても買えるか怪しくないか? 最悪我がへそくりが……。
ええい! なんとかなるだろう!
バリツは懐の手帳に走り書きをした。重機を借りる旨・弁償する旨の誓約。
自らの連絡先。日付とサインを施し、破いた容姿を好子に手渡す。これだけでもないよりはずっとマシであろう。
「まあ、いいでしょう。あなたたちを信じます」
好子は観念した様子で肩をすくめると、一同を自らの家へ案内した。
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『盆踊り』後編 作家名:炬善(ごぜん)