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鳥籠の番(つがい) 5

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α・アジールのコックピットに座るアムロの姿を確認して、リ・ガズィのパイロットがコックピットから降りて、アムロの元まで飛んでくる。
「アムロさん!俺です!カミーユです!」
「カミーユ…?」
「そうです!覚えていますか?」
アムロは目の前のパイロットの顔をバイザー越しに見つめる。
しかし、懐かしい気はするが、その顔に覚えは無かった。
「知ら…ない…」
「アムロさん!クワトロ大尉を止められるのはあなただけなんです!お願いです!俺たちと一緒に大尉を止めましょう!大尉だって本当は止めて欲しい筈だ!」
「クワトロ…大尉?止め…る?」
〈そうです!シャア・アズナブルですよ!〉
「シャア…」
《アムロ大尉!》
そこにアムロの異変に気付いたギュネイがα・アジールとリ・ガズィに近付く。
「ギュ…ネ…」
「こいつ!アムロ大尉から離れろ!」
「クソっ!アムロさん!」
カミーユは最後にアムロ抱きつくと、α・アジールのコックピットから飛び出し、リ・ガズィのコックピットに戻った。
リ・ガズィに向かってヤクト・ドーガがライフルを放ち、α・アジールから引き離す。
〈アムロさん!〉
その瞬間、リ・ガズィから青いオーラの様な光が放たれ、α・アジールに伸びていく。
〈お願いです!アムロさん!〉
青い光がα・アジール内のアムロを包み込み、カミーユの思惟が更に強くアムロへと届く。
「や…やめろ…」
アムロが更に強くなる頭痛にもがき苦しむ。
その光景をそばで見ていたギュネイはリ・ガズィのパイロットがニュータイプである事に気づく。
「何だ!この光…それに強烈なこの思惟…このパイロット、ニュータイプか!?」
そう、このパイロットはかつてグリプス戦役でエゥーゴに属して戦ったニュータイプ、カミーユ・ビダンだった。
その、アムロをも凌ぐ高いニュータイプ能力を持つが為、戦いで心を壊したカミーユだったが、なんとか正気を取り戻し、医師を目指して月のフォンブラウンで勉強していた。
しかし、シャアの宣戦布告を受け、ブライト率いるロンド・ベルに入隊したのだ。

カミーユの強烈な思惟に飲み込まれ、ギュネイの身体が硬直する。
「なんだ!この感覚!引きずられる!」
ニュータイプ同士の共鳴と言うには、あまりにも激しすぎる思惟。
それはアムロをも飲み込み、強化の為に記憶を封印されたアムロを苦しめる。
「あっああああうううううああ!!」

《アムロ!!》
アムロを呼ぶ声と共に、真っ赤な光がアムロを包み込んでカミーユ青い光を断ち切る。
そして、リ・ガズィを赤いファンネルが取り囲む。
「クワトロ大尉!?」
《アムロ!コックピットを閉じろ!》
シャアの言葉に、アムロが震える腕を伸ばしてコックピットを閉じる。
「クワトロ大尉!!あなた、アムロさんにこんな事してどうするつもりですか!!」
「カミーユか?まさかお前がパイロットに復帰するとはな」
「大尉が馬鹿な事をするからでしょう!?」
「ふふ、言ってくれる」
サザビーがリ・ガズィに向かってライフルを連射する。
それと同時にファンネルからもビームが照射され、リ・ガズィの右脚が爆音をあげる。
「大尉!こんな事やめて下さい!」
「ならば止めてみろ!」
サザビーの体当たりを受けてリ・ガズィが吹き飛ぶ。
「うわぁ!」
「そんな機体で私を止められるのか?君がかつて乗っていたZならともかく、汎用機のそんな機体ではこのサザビーに歯が立つまい?」
圧倒的な機体の性能差にカミーユが舌打ちする。
『クソっ!ならアムロさんだけでも』
「アムロさん!一緒にラー・カイラムに来て下さい!ブライト艦長も待っています!」
「ラー・カイラム?…ブライト?…ううううあああああ!」
ブライトの名を呟き、またアムロを頭痛が襲う。
「アムロさん!?」
「やめろ!カミーユ。アムロを殺す気か!?」
「え?」
その瞬間、サザビーがリ・ガズィにビームを連射する。
「うわぁ!」
カミーユはどうにかそれを躱して離れるが次の瞬間、リ・ガズィにサザビーのライフルの照準が合わされる。
《カミーユ!引け!》
そこにもう一機、別のリ・ガズィが弾幕を張りながら現れ、カミーユのリ・ガズィの腕を引く。
「ジュドー!離せ!アムロさんが!」
《死ぬ気か?サザビーは本気だ!》
ジュドーの言葉に、カミーユは顔を顰めると、ジュドーと共にその場を離脱した。

ジュドー・アーシタ。
彼もまた、かつてブライトと共に戦った、ニュータイプのパイロットだ。
木星に渡り、任期を終えて戻ってきた後、再びブライトの元に配属されたのだ。

カミーユはジュドーと共に離脱しながら、シャアの言葉を思い出す。
「アムロさんを殺すって…どう言う事だ?」


そして、ロンド・ベル隊の攻防も虚しく、5thルナはラサへと落下し、多くの市民の命が奪われた。
「クソっ!」
それをモニターで見ながらカミーユが壁を殴りつけ、ズルズルと座り込み頭を抱える。
そんなカミーユを、ジュドーが悲しそうに見つめ、胸の痛みを抑えるようにノーマルスーツの胸元を握る。
カミーユよりは劣るとは言え、ジュドーもニュータイプだ。
地球と宇宙、こんなに遠く離れていても、ラサから伝わる人々の恐怖と悲しみの思惟が心を襲う。
おそらくカミーユはこの何倍もの思惟を感じている筈だ。
そしてそれは、同じくニュータイプであるアムロ・レイも同じだろう。

レウルーラの自室で、アムロはシャアの胸に抱かれていた。
ガタガタと震える身体を、シャアがギュッと抱きしめてくれている。
無数の思惟がアムロの身体を通り抜け、その恐怖と悲しみがアムロを襲う。
「シャア…シャア…」
「大丈夫だ…私が傍にいる…」
シャアはアムロを抱き締めながら。
自分の犯した罪を受け止めていた。

to be continued...
作品名:鳥籠の番(つがい) 5 作家名:koyuho