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代打の代打
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はじまりのあの日21 ミクの誕生日

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またも、新しい休日が加わる。ニュースキャスターが読み上げる。休み、増えすぎじゃないかと思う。なんとかの日、というのもやたらと増えた。こじつけて、休日にするのは良いけど。では、なぜ超過労働や黒企業が減らないのか。その点は、わたし達、本当に恵まれていると思う。しっかりOnとOff、仕事、休みは分けられている。まあ、わたし達に、カレンダー通りの休日は無いけれど。大体が皆様の大型連休などに公演が入るから。休日か。彼との最大のきっかけ。その序章も休日の大宴会だったな。ごめんね、ミク姉。主役の座、奪ったみたいになって。でも、あの日が無ければ、きっと『今』もなかっただろうな。記憶の図書館の重要文献、わたしは手を掛ける―

「誰のリクか、当てていこうじゃない、カイト母さんや。リクエスト当てクイズ」
「おもしろそうだね、ぽお父さん。間違ってたらツッコんで、み~んな」
「「「「「「「「「「は~い、兄さんフ夫婦~」」」」」」」」」」

八月中旬、熱い日だった。なんと大人組全員、三日連続で休暇がとれた。一月後の夏休みでもないのに、こんなことは二度とないだろう。通学組は、夏休みの真っ最中、が、仕事はほぼ毎日。しかし、休暇が取れたのだ。この機会を逃す手はない、と、めー姉。夕方からのパーティーを発案。ミク姉の誕生日も近いことだと、お祝いモード。その至高の提案を聞き、天使様たちは大はしゃぎ。おのおの全員もテンション沸騰。この高いテンションのメンバーに、ぽ父さんとカイトお母さん

「「じゃ、何食べたい」」

なんて素敵なことを聞いてくるので、もはや制御不能のリクエスト。次々あがる声に、メモをしとけと彼の指令。午前九時、マンションに集合。リク当て大会が開催されたあの日。先手はカイ兄だった

「まず、先手、オレねっ。ローストビーフ」
「リリィの字だな。丸い」

メモをのぞき込んだ彼、即座に答える

「さすが兄妹だね殿。次はえ~と、さ・ん・ど~」
「Sandwich(サンドイッチ)オリバーの字。英文だからすぐわかる。次、俺の攻め。お造り盛り合わせ、大間産は必須で。ぶっちゃけ、俺誰か分かった」
「うん、まあ、ルカだろうね。流通してるかな、大間産。さて、又、オレからいくよ。チカメの煮付けを。え、ちかめってなんだろ」

首をかしげるカイ兄、のぞき込む紫様、首を縦に振る。どうやら、望みの料理を理解したようで

「字が近目(きんめ)になってるじゃない。誤字はアルだな、金目鯛の煮付けってことだろ」
「Sorry、その通りデゴザル、神威殿」

申し訳なさそうに頭をかく、アル兄

「ふふふっ、なるほどね。さて、この『ろぶすたあ』は」
「カルの字。ひらがなだし、好物だ。後手、俺。九条ネギと夏野菜のサラダ」
「ミクの字、カックカク。ネギ好きだし」
「さすがカイ兄じゃな~い。ミク、今日の主役なのに、そんな安物でいいのか~」

愉快そうに笑う、紫様。筆記のクセで、誰がリクエストしたか分かってしまうほどに。共同生活を送る、メンバー縁(えにし)が深い証

「だあ~って、がくさんの作るお任せサラダ、絶品だも~ん。今日もお任せっ、その代わり美味しいの作ってよ~」

みんなに貰ったプレゼント、囲まれてご機嫌、大手を振るミク姉。解ったと微笑み返す紫様

「あはは、安上がりに出来てるよね、メンバーの一同、さ。次ぎも、多分原価安いよ。がくサンの『ゴロホロ肉ジャガ』がいっす」
「勇馬か。書き文字に『ス』を付けんな勇馬。じゃが芋なら、家庭菜園が生きるな。肉は牛様豚様、どっちがイイ」
「っす、サーセン。豚バラでお願いしまッス。畑のじゃがいも、食べ頃っすかね」

愉快という笑いの紫様。頭を下げる勇馬兄。ゴロホロ肉ジャガとは、ジャガイモはゴロリと大きいのに、箸を入れるとホロリと崩れる、柔らかな絶品肉ジャガのこと。昔、ミク姉が命名した

「肉まで安い方だね、っはは~。さぁて、え~っと、おつまみ適当にってこれは」

カイ兄、言った瞬間、紫様と目を合わせ

「「メイコ様しかない」」

即座に理解、言い放つアニキ様

「「「「「「「「「「メイコ様しかな~い」」」」」」」」」」

吹き出すメンバー

「何よ~いいでしょ」

苦笑いの女王様

「作っていけば、何かおつまみ出来るよ、め~ちゃん。さて、にんじんのグラッセ。あま~くしてね、は~」
「めぐ、好きなもので解るじゃない。しかし好きだな、にんじん。俺達の作るご飯アテは、イコールツマミになるじゃない」

紫様、めぐ姉、めー姉に話しかける。と

「だって、にんじん好きにしてくれたの、ぽ兄ちゃんだよ~。グラッセで、にんじん嫌い、治ったんだから~」
「食ドラマでも言ってたわねぇ『おつまみがおかずとして立ち上がる』って」

応える、彼、の料理でにんじんが好きになったのだろう。めぐ姉の言葉で、容易に想像がつく。メンバー共通のことだもの。がく×カイ様のお料理で、好き嫌いが極端に減る。おつまみ要求、めー姉、喜ぶ。セリフは素敵な叔父様がご飯を食べる、美味しそうなドラマのもの

「あ~、殿が『好物』にしてあげたってやつだね。次ぎ、和風ラーメンたべたい『にゃ』」

そのカイ兄『にゃ』でにゃんこのポーズ、あらかわいい。その問いに紫様

「ど~うもそうらしい。麺はいろは。にゃ、ってわざとだな。中華麺好きじゃない」
「にゃ~、せいかいで~す」

いろはちゃん、両手を挙げて嬉しそう

「カツオ出汁の、野菜大盛りにした奴だね、。作ってあげるよ、いろはちゃん。これは、殿、セルフクレープ、トッピングにチョコバナナ必須で」
「バナナ大好き、レンなんじゃない。生地作っといて、ホットプレートで勝手焼きだな。これもすぐネタが割れるじゃない。それならイロイロ具材、用意して、ご飯クレープもイクか」
「なんだよ~いいじゃん、好きなもの~」

正解の苦笑い、弟。カイ兄は優しく微笑み、紫様、やや茶化す。次のリクエストを読み上げる

「ケイジャン・ステーキ、その他肉料理」
「肉好きの重音。てか、リクが二つだ、欲張るんじゃない。さて、この辺りで、フェイズ、俺。あじふらい、連名。ふふふふふ」

顎のした、拳を当てて微笑む彼

「ハハッ。リュウト君とユキちゃん。殿が吹き出すってことは。ふふっふ、想像だけで可愛くて、オレもムセそう、ははっ。返し手で、味噌漬け玉子をお願いいたします。だって」
「テル。そこまで丁寧に申告するのは」
「次ぎ、カニクリームコロッケおねがい、がっくん」

正解ですと告げるキヨテル先生。の、後に読み上げられる自分の注文。ちょっと緊張する。だって、万一、間違えられたら滅茶苦茶ショック

「リン。がっくん呼びは、リンしかない。カニコロも好物じゃない」
「大正解~っ―」

正解で、すごく安堵。微笑み掛けてくれる彼、わたし嬉しい、のだけれど『結婚』を考え、彼の夢を観たあの日から。彼の事を考えると、彼と居ると。何か胸が締め付けられる感がある。不快な感覚でなく、何かの高揚感が伴った、胸の痺れ。それがジャマになって、今までみたいに飛びつくことが出来ない

「ん、どした、リン。今何か『妙』な間があったじゃない」
「あ、ん、んん何でも無い。コロッケ楽しみだな~って」