はじまりのあの日21 ミクの誕生日
「料理人二人は、買い出し除外確定ね。あとのお手伝いさんは~、リン当確~」
めー姉、にこやかに宣言。買い出しの担当を決めていく。調理担当は兄貴様確定。アシスタントも選別。最も言われる間でもなく
「うんっ、わたし、がっくんとお料理してる~」
初めからそのつもり。めー姉のお気遣いには気付かないバチアタリ者
「ゎたしもお料理の係がぃいな~」
「かるもおてつだい、だ~い」
IA姉がわたし達と行動を共にするのは自然なこと。カル姉が残った理由はよく解らない、けれど
「じゃあ、勇馬も残ってもらえるかな。結構料理力たかいから」
「天使組もな。車割りの都合じゃない、お手伝いしてくれるか~」
残って調理や手伝いを願い出るカイ兄、紫様
「「「「は~い」」」」
「っす、了解っす」
朗らかなエンジェルスマイル。勇馬兄、少しだけ残念そうなのは何故だろうか、と、あの日は思っていた
「じゃあ、あたしは酒屋行く。アル、一緒に選びましょ」
「是々非々でゴザル、メイコ殿。車出し申す」
グータッチの大酒家二人、お酒屋さん行き、意気投合
「じゃ、グミちゃんとレンも行って。飲み物、選んでおいで」
「グ、グミさ~ん、ヨロスっす」
カイ兄の指示。めぐ姉にやや弱々しいというか、何とも言えない声をかけた勇馬兄
「は~い、行ってくるね、勇馬君」
「らじゃ~、カイ兄」
両手を胸の前で振って、微笑むめぐ姉。Vサイン、弟。二人も加わりめー姉たちが、女王様と従者という風情で、華やかに出かけていく
「神威さん、ワタシ、魚介を見て参りますわ~」
「お任せしようじゃない。お魚姫ルカが行くなら、お野菜姫ミク、一緒に行ってくれ。肉食獣重音、車出してもらおうじゃない。ついでに肉、選んでこい」
「「了解」」
二人からびしっと敬礼がかえってくる。特に、テト姉は『隊』仕込みの本物。肘を張る陸上仕様。キレが良い
「ああ重音、フランスパン多めに仕入れてこい」
「お、イイのか、かむい」
「どうせ買うんだろ。バゲットに使おうじゃない。食パンも一緒にな。サンドに使う。ただし、パンと肉、買い『過ぎ』るんじゃないぞ」
フランスパンも大好物のテト姉が小躍りする
「ミク、シュウマイの皮も忘れずにね。今日は贅沢にカニシュウマイとエビシュウマイ」
「やった~おいしそ~う」
カイ兄の美味しそうなシュウマイ案、ミク姉目が輝く
「じゃ、ウチ、センセとデザート関連かってくる」
「私ですか」
「スイーツなかまっ」
なんとなく、それ以外の何かがありそうな雰囲気のリリ姉。カル姉がお残りを申し出たのは、このWのお出かけをジャマしないためだった、のカモ
「そうだね、テルさんとリリちゃんにまかせた」
「デザート、任せた、リリ『ザ』抜きじゃな~い」
笑むカイ兄。口の端だけで笑う彼。両者共通しているのは『ですよね~』という表情
「サンキュッカイト。おにぃ分かってる~ぅ。でもナラ、何でわかんね~かな~」
複雑そうな表情のリリ姉に
「リリね~さん、うちとピコきゅんも良い。お総菜みた~い」
「お邪魔してもいいですか~」
微笑みながら話しかけた、ピコ君Mikiちゃん。今度は先生、リリ姉共に破顔しながら
「もちろんですよ。行きましょう、皆さん」
「い~よっ。Mikiピコイエ~イ。Wデザートレッツゴ~」
さっき紫様が言ってた『ザ』抜き。デザートから『ザ』を抜くと。そういうテンション、今ならわかる。いくよセンセッと、リリ姉がキヨテル先生の腕をとって。Mikiちゃんがピコくんと腕組みで、出かけていった。人数が減って、少しだけ静か。最も、調理を始めれば騒がしくなることに変わりなし。現に
「何から作りますか~に~さ~ん」
キッチンへ向いながら、賑やか会話。連れだって、みんな笑顔。調理計画を促すIA姉に
「じゃ~まず、おつまみとサラダからいこっかな、IAちゃん。野菜なら困らないからね。どう、殿」
「いや、サラダと刺身は、鮮度が命。ミクリクの九条葱も無いじゃない。だからつまみと煮物系で行こう。いちど冷ますと味がよくしみて美味いから。食べるとき温め直せばいいだけになる」
案に同意しかけた兄に、待ったを掛けた紫様
「味染み肉ジャガ、チョ~楽しみスっ。ここでしか食えねっす」
「勇馬兄、食ったって言っちゃダメ~」
『生意気言ってんじゃね~』と勇馬兄に撫でられる。うん、彼のと全く違う
「リ~ンの言うとおりじゃな~い、勇馬食った言うな、食べ物様に感謝しろ~。エラいぞ~リン」
はいっ、撫でてくれた彼。やっぱりコレ。彼でなきゃ味わえない~。積極的に行動できなくても、彼から『される』事には歓喜。喜んで撫でられます『サ~セン、ガクサン』と、いつものやり取りは勇馬兄。みんなで楽しくキッチンへたどり着く。それぞれにエプロンを着ける。彼、腰巻きエプロン、カイ兄フリルエプロン。女性陣得の構図。まあ、今、そんなに女性いないけど
「ああ、そだね~、殿の言うとおりだ『寝かせておく』と美味しいもんね、煮物系って。でも不思議だよね、放っておいても美味しくなるって。煮物マジックって感じ」
まな板を用意しながらカイ兄
「ああ、料理ってのは、冷めていくときに味が染みるんだ。大事じゃない『寝る子は育つ』ぞ~」
「あ~そ~なんだぁ」
「そ~ぅいう事なんですね~」
漠然、感性で料理していたわたし。仕組みというか理論というか、味が染みる工程を知る。お手伝いIA姉納得
「よく眠るから、リンみたいにイイコが育つじゃない。さて、野菜は~、菜園からもいくか」
「あ、カイサン、がくサン自分が採ってきまっす」
「ゆ~ま~、かるも行く~」
野菜収穫を名乗りでる、勇馬兄、カル姉
「カルちゃん、お願~い」
「たのむ勇馬」
言われるが早いか、大型キッチンボールを手にする二人。ミク姉と彼が始めた畑。最近では、メンバー全員で協力して、営を手伝う家庭菜園へと向かう。二往復して、大葉、きゅうり、長ネギ、トマト、ジャガイモ、茄子と枝豆。泥を落として取ってきてくれる
「お、センス良く選んできたね。サラダ、煮物につかえる」
「大葉も、造りには欠かせないからな。分かってるじゃない」
褒めてあげるカイ兄、頭を撫でてあげる紫様。嬉しそうな勇馬兄、カル姉
「ぅ、あざっす」
「いいこいいこ、わ~い」
勇馬兄なんで頬まで赤いのか、カル姉、ちょっと羨ましい。だからわたしも褒められたくて、撫でてほしくて
「がっくん、肉ジャガのお出汁取っとくね」
「ありがとリン、お利口さん」
行動する。しっかりと撫でてくれる彼、もの凄く嬉しいわたし。胸の奥がジンジンする。調子づいて調理、みりん、料理酒を沸騰させて、アルコールを飛ばす。煮込まないと、本みりんは味が出ない。昆布とタップリのかつお節。もちろん、取り方は、彼に教わった。味付けも煮加減も
「リン、ついでに、鍋にお湯、沸かしとこうじゃない。ゆで玉子作って。沸騰した鍋に、玉子入れて、十分。煮るだけだ」
「おっけ~がっくん」
彼と、ハイタッチを交わす。ああ、楽しい。ただ、彼が『ハイタッチ』しようとすると、わたしの手は届かない。彼自身は『ミドルタッチ』くらい
作品名:はじまりのあの日21 ミクの誕生日 作家名:代打の代打