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自分らしく
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彼方から  第一部 第一話

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彼方から ― 二次創作 ―

始まり

「また、夢見ちゃった」
 いつも、一緒にお昼ご飯を食べている友達に囲まれながら、少し幼さの残る顔立ちをした女の子が、そんな事を言ってくる。

 リボン型のネクタイの高校の制服は彼女に良く似合っているが、その制服を着ていなければ中学生ぐらいに見える。
 箸を口元に当てながら、最近よく見る同じ夢の話を彼女はしていた。

「例のわけのわからん世界の?」
「うん」
「見た事もない鳥が空飛んで?」
「うん」
「見た事もない風景が広がって?」
「うん」
 彼女の友人たちは、それぞれがそれぞれに、毎回同じ話を聞く度にしているであろう質問を、彼女にしている。
 それに答える彼女の言葉も、きっとまた、毎回同じなのだろう……
 学校の教室でお昼を食べているその様は、どこでも見かける、本当にどこにでもある風景だった。
「あたしって、前世、その世界に住んでいたのかなぁ」
 そんな風に思えるほど、彼女はその『同じ夢』を、最近、何度も見ていた。

 それはそれは きれいなところで
 透き通るような花が咲いて
 小川が流れて
 かなたには 金色に輝く 鳥の姿
 青はなんとも言えない 青い青い色
 穏やかな顔をした動物達が 暮らしている
 でもみんな 少しずつ『変』
 だってそこは 異次元世界だったから

 それが、その夢を友人たちに話す時の、彼女の口癖のような説明だった。


第一話
「本日、午後2時ごろ。各地で起こっていた、無差別爆弾の犯人が逮捕されましたが、なお数個の爆弾を仕掛けていることが判明し、警察では、設置場所の確認を急いでいますが、放送をごらんの皆様も、不審な紙バッグには充分気を付けて……」
「まぁ、こわい」
 町の商店街にある電気店のテレビの中で、アナウンサーが不穏なニュースを読み上げている。
 それはどこか、現実的なものではなく、絵空事、架空の話、今、自分が居るここではないどこか違う場所での出来事のような、そんな錯覚を覚えさせる。

「多重宇宙論って知ってる?」
「何それ」
 そんなニュースが流れているのにも気づかず、彼女たちは連れだって、商店街を闊歩していた。
「あたし達が暮らしているこの宇宙以外にも、いろんな宇宙があって世界があるという……」
「へー」
「ほら、この子のお父さんってSF作家じゃない」
「想像力がたくましいのよ、血、受けついで」
 帰宅路を話しながら歩いてゆく四人。
 仲睦まじく、いつもの日常をいつものように楽しんでいる。
「ねっ、その線でいくとさ、典子ってば、いずれ例の夢の世界に戦士として赴いたりして?」
「おっ、かっこいい。新井素子の『扉を開けて』みたい」
「げー、戦士ィ? やめてよ、このおとぼけもんの典子が?」
 三人の友人は、同じ夢を何度も見るというこの女の子を『典子』と呼び、彼女の話を笑い話へと変えてゆく。
「おとぼけもんは悪いわよ。せめて緊迫感のない奴とか」
「それより、ちょっと世間からずれてると言った方が」
「いや、私はどっか抜けているという方が妥当だと……」
「その上、超能力もなんもないただの女子高生じゃ、ギャグキャラにしかならないわね」
 と、公道で大笑いしている。
 彼女自身、そんな友人たちの話を、

 ――こいつら、言いたいこと言っとるなー

 そう思いながらも特に怒ることなく、多少ムカッと来てはいるようだが、『笑顔』で聞いている。
 言いたいことを言い合える、高校生と言う、大切な一時期を共に過ごす友人として、互いが互いを大切に思っているであろうことが窺える。
 とても平和で、のんびりとした日常の風景だった。
 本当に、『いつもと変わらない』日々の中の一日……そうなるはずだった。
 それは典子自身が一番そう思っていたことだろう、自分の身の上にこれから起こる事柄など、想像することも――いや、気づくことすら出来ないのだから。

 ――ポーン……

 彼女たちが通り過ぎた四つ辻から、ボールが転がり出てきた。
 遠くで、『ボールー……』と子供の声がする。
 塀に当たり跳ね返るそれに気づいたのは、一番後ろを歩いていた典子だけだった。
「よしよし、取ってあげよう」
 そう言って、跳ね返って弾む勢いが少し失われたボールに、典子は足を向けた。
「あ」
 ボールは、偶然にも彼女の足元にあった小石に当たり、ポーン、ポーンと、典子から離れるように弾んでいく。
「あら、あらら」
「どんくさーい、足でけとばしたんでしょお」
「どこまで行く気よ」
 その様子に気づいた友人たちは、ボールを取りに来た子供と一緒に、転がって行ってしまったボールを走って取りに行く典子を笑って見ている。
「あたしのせいじゃないわよ、そこの石に当たったんだから」
 笑われ、自分のせいではないにしろ、ボールが余計な所へ転がってしまったのは事実なので、典子は焦りと照れくささから顔を少し赤らめて、そう言い返す。
「石?」
 友人と子供は、典子の言葉に一緒に足元を見た。
「どこに?」
 だが、その足元に、典子が言ったような小石など、どこにも見当たらなかった。

 結構な勢いで、ボールは道端に置き去りにされていた紙のバッグに当たり、典子の方に跳ね返ってきた。
 それをタイミングよく片手で受け取る。
「……? なんでこんなところに紙バッグが……」
 落とし物だろうか? それにしてはまるで態とそこに置いたかのように、ちゃんと、電信柱に立てかけてある……

 その先、典子が不審に思う間は、そこには無かった。

 ――ド……ドォンッ!
 最初に感じたのは、眩い閃光。
 次いで、激しい衝撃と爆風が周囲を破壊し、叫び声とガラスが壊れる音と共に、それらの破片は家屋を襲い、壁や塀を傷つけ壊してゆく。
 典子の身体も、そうなっていてもおかしくない、はずだった。

 
 ――あれ、ここどこ?

 最初、そこは暗く、身体は宙に漂い、見えてはいるが場所を認識できるものは確認できず、典子は自分がどうなったのか、どこにいるのか、全く分からなかった。

 ――みんなはどこ行ったの?

 そう意識して辺りを見回し、探す。

 ――あ……

 そうして見えて来た景色は、警察官に何やら話をしている友人たちの姿だった。
 上から、俯瞰で見ているのが分かった。
 だが、通常の状態で、そのように見えることなどあり得ない。
 典子は今の自分の状態すら把握できていない、それが、不自然な事だとは認識できない。
「あの……本当に典子のふっとばされた破片もないんですか?」
「ちょっと、何怖いこと言ってんのよ」

 ――ねぇ

「だから、そんな形跡もないんだよ。きみ達の勘違いじゃないのか?」
「えー! だってー!」

 ――ねぇってば……聞こえないの?

 必死で友人に話し掛ける典子。だが、それは声にならず、見える景色に戻ることすら出来ない。
 自分がさっきまでいたその現場に、警察官や野次馬がたくさん押しかけている。
「じゃ、典子、本当にふすま開けて行っちゃったんだー」
「ふすまじゃなくて扉でしょ、座敷童じゃないんだから」
「そんなバカなこと」
 人が一人いなくなったというのに、友人たちの言葉にまるで緊迫感は感じられない。