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鳥籠の番(つがい) 7

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しかし、その事でネオ・ジオンが不利になるような状況になるのは本意ではない。
それに、先日の戦闘で、自分はロンド・ベルに多大な被害を与えた。
そんな兵士を簡単に解放するなどありえない、拷問にあってもおかしくない状況だ。
しかし、このブライトという艦長は、拷問どころか、何故か自分を心配する様な事を言ってくる。
アムロは怪訝な表情を浮かべ、上目遣いにブライトを見上げる。

アムロのそんな仕草に、ブライトは昔のアムロを思い出す。
『こんな仕草は昔と変わらないな』
「今日の尋問は終わりだ。営倉に戻る前に食事を用意させる。カミーユ中尉とジュドー少尉を呼ぶ。ちょっと待ってろ」
そう言うと、ブライトは尋問室から去っていった。

尋問と言いながら、ネオ・ジオンの事は一切聞かず、自分の事だけを聞いて去っていくブライトに、アムロは呆気にとられてその後ろ姿を見送る。
そして、ブライトと入れ替わりでカミーユとジュドーと呼ばれたパイロット達が入って来た。
「アムロさん、食事に行きます」
そう言って、二人に連れられて来たのは一般士官の食堂。
そこの一角にある席に座らされると、カミーユが食事を運んで来た。
「アムロさん、魚より肉のが良いですよね」
そう言って渡された食事はアムロ好みのメニューだった。
「どう言う事だ?何で捕虜をこんな所で食事させる?脱走するかもしれないだろう?」
「脱走したいんですか?」
「え?そりゃ…早く解放されたい」
「今、ブライト艦長があなたの解放について副艦長と協議してます。明日、ネオ・ジオンとの話し合いで貴方の処遇が決まります。下手に脱走してネオ・ジオンを不利な状況に持って行きたくはないでしょう?正式な手続きで堂々と解放されたくないですか?」
食事のトレイを置きながら、カミーユが淡々と話す。
「…それはそうだが…それにしても…この待遇はおかしくないか?」
「良いじゃん、わざわざ営倉に食事を運ぶの面倒くさいし、ついでに俺達もメシ食いたいしさ!」
隣でニコニコ笑いながら食事を始めるジュドーに呆気にとられる。
「そんないい加減な…」
「良いって良いって!さぁさ、食べよう!って、ごめん。手錠したままじゃ食べれないよね。手、出して」
そう言うと、あっさりと手錠を外してしまう。
「いいのか?」
「え?だって脱走しないでしょ?」
「……」
確かに迂闊な行動をとって大佐に迷惑は掛けたくない。ナナイ大尉が連絡をして来たと言う事は、大佐が何かしら対応をしていると言う事だ。
そう考えて、アムロは小さく息を吐くと、フォークを持って食事を始めた。
「あ、美味い…」
思わず呟いた言葉に、カミーユがにっこりと笑う。
何も聞かずに自分の好みのメニューを持ってきてくれたカミーユ。
戦闘中も必死に俺に呼びかけて来た。
おそらく彼は過去の俺を知っているのだろう。そして、ブライト艦長も。
自分には何も記憶がないと言うのに、こんな風に接して貰える事に少し引け目を感じる。
過去の自分はどんな風に彼らと接して来たのだろう。
過去を思い出したいと思う。しかし、そうすると、シャアと一緒に居られなくなってしまう気がして怖かった。
今の自分にとっては、シャアが全てだ。
彼が居れば他には何も要らない。
アムロは顔を横に振り、自分の迷いを振り払う。
『そうだ。俺のマスターはシャアただ一人。あの人の側にずっといると約束した。ならばその約束を果たそう』
そう覚悟を決め、食事を再開した。
そんなアムロを、カミーユがクスクス笑って見つめる。
「なんだ?」
「あ、すみません。トマトと人参嫌いなんですか?」
「え?」
しっかりと皿の横に避けられている野菜達の事を言われ、羞恥に顔が赤く染まる。
「あ、これは…!」
「良いですよ、無理に食べなくても」
思わず口をつぐむアムロの横から、ジュドーがその野菜達を奪っていく。
「要らないなら俺貰うね」
明らかに自分よりも年若い二人に子供っぽい部分を見られ、更に顔が赤くなる。
「べ、別に食べられない事はない…ただ…好んで食べないだけだ…」
「うんうん、そう言うのってあるよね」
ジュドーにフォローされて更に情けなくなり、もう少し、好き嫌いを無くす努力をしようと思ってしまう。
そして、この二人と過ごすのが少し心地いい事に気付く。
自分と“同じ”気配を感じる二人。
ギュネイといる時よりも気が楽に感じる。
『彼らはニュータイプなんだろうか…』
未だに自分がニュータイプだと言う自覚のないアムロは、二人をまじまじと見つめ、人ごとのようにそんな事を思った。


◇◇◇


「ナナイ、アムロは大丈夫だろうか?」
落ち着かない様子で執務室の机に肘をつき、指を組んで溜め息を吐く金髪の上司に、ナナイはコーヒーを差し出す。
「落馬の怪我も大した事はなかったようですし、大丈夫でしょう。大佐と離れた事で少し精神的に不安定にはなっていると思いますが、三日ほどなら問題ありません」
「それはそうだが…」
「それよりも、本当にロンド・ベルに例の計画を漏らしてもいいのですか?」
「ああ、おそらくブライトはそれを交換条件にしてくるだろう」
「ですが…危険では?」
「確かにロンド・ベルは侮れん、しかし、連邦の上層部は私たちの作戦を甘く見ている。おそらく連邦軍本部からの応援はないだろう。それに先日の戦闘でロンド・ベルの戦力はアムロが大分削いだからな、ロンド・ベルだけでは我々を止められんよ」
先日の戦闘で、アムロはシャアの命令通り、多くの敵モビルスーツを戦闘不能にした。
「撃墜しろ」と命じなかったのは、己の甘さだろう。
相手がかつて共に戦ったブライトだったから、そして、アムロにとって大切な仲間を殺せとは命令出来なかった。
おそらく撃墜しろと命じれば、アムロは迷う事なくコックピットを狙い、撃墜しただろう。
しかし、いつか正気に戻った時…それを知れば彼は苦しむ。正気に戻る事などあり得ない筈だが、何処かで自分はその望みを捨てきれていないのかもしれない。
「私も甘いな…」
「大佐?」
「いや、何でもない」


◇◇◇


食事を終えて、ジュドーはアムロに再び手錠を掛ける。
「すみません、一応『コレ』規則なんではめさせて下さい」
「謝る必要はない。当然の事だ」
「ホントすみません」
「だから良いって。可笑しな奴だな」
捕虜に対してとは思えないジュドー態度に、アムロがクスリと笑う。
「あ!アムロさんが笑った!」
「は?俺だって笑うよ」
「へへ、なんか良いもん見た」
「何だそれ、本当に変な奴だな」
少し照れながら、笑みを浮かべるアムロに、カミーユの表情も緩む。
『やっぱり、アムロさんはアムロさんだ…』
営倉に向かって歩いて行くと、フリールームからハサウェイとクエスが出てきた。
「あ、カミーユさん、ジュドーさん」
「ハサウェイ、クエス」
二人はカミーユとジュドーに挟まれるように歩くアムロに視線を向ける。
「あ…えっと、アムロさん…。怪我は大丈夫ですか?」
「え?君は…ああ、あの時エレカに乗っていた…」
「はい、ハサウェイ・ノアです。彼女はクエス・パラヤ」
あの時、クエスがカミーユから銃を奪ってくれたお陰でシャアは逃げる事が出来た。
作品名:鳥籠の番(つがい) 7 作家名:koyuho