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夏祭りのHAPPY

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「どっからどう見てもお祭り好きのヤンチャしてたお兄さんだよ〜。すげー。」………この能天気な笑顔の一六にアイアンクローをかましたいと思ってしまうのは昔喧嘩ばかりしていただろうか………と思うが、まあいいか。と力が籠る拳を抑え、兄に行ってくると伝えて屋台を出る。
しばらく行くと、七緒先輩がおかえりーと迎えてくれた。
「やっぱりテキ屋の兄ちゃんは太子くんでしたか。」
「はい。お見苦しい所をお見せしました。」
みんなでやきそばを食べたあとフラフラと屋台が並ぶ方へ向かった。
「なぁなぁ、太子〜!!射的屋行こうぜー!!」
一六が射的の屋台を指さす。
「嫌だ。そんな子どもっぽい事しない。」
「あー。太子、射的出来ないのー??」
「あ"ぁ"!?………んんっ、そんな訳ないでしょう。」
「………チロって結構たいたいの扱い分かってるよね………?」
「たしかに………」
「おバカの挑発にも乗るんですね………。」
「せんぱーい!!早く行きましょうよー!!」
俺は射的屋の前に着くと店のおじさんが声をかけてくれた。
「おう、万座さんとこの次男坊か。でっかくなったなぁ。」
「はい。おかげさまで。射的、6人分でお願いします。」
「おう。1人3回ね。」
おじさんの声に促され、台の前に立つ。棚に数字が書かれた札が並んでおり、その番号に合わせて賞品が割り振られているようだ。
「あ!ぷれすてあんじゃん!!俺、ぷれすて狙いね!!間違いで取れたらくださーい!!」
「…………安眠枕か………よし。これ取ろう。」
「あ、お掃除セットある。取れるかな………」
各々、賞品に狙いを付けたようだ。
俺は高々と1番の札がかけられた温泉のペアチケット3枚組に狙いを定めた。久しぶりに家族全員で温泉旅行というのもありだろう。
最初に動いたのは以外にも鏡太郎先輩だった。
パンパンパンと3発リズム良く発砲音が鳴り、コトンと5番の札が倒れた。
「お、兄ちゃんは安眠枕ね。でっかいからちゃんと持って帰るんだぞ。」
鏡太郎先輩はうさぎの形をした少し大きな枕を抱きしめた。
「あの枕、ちょっと鏡太郎先輩に似てない??」
一六の声に枕と先輩を見比べると少し眠そうな赤い刺繍の目にモフモフと触り心地の良さそうな白い生地………たしかに似ている。
次に前に出たのは、一六と龍馬先輩だった二人とも苦戦しているようですぐに弾を使い果たしてしまった。
「仕方ないですね。僕は欲しいものが見当たらなかったので龍馬くんに僕の分もあげますね。」
しかしそれはすぐに消えてなくなってしまった。
「あらら、龍馬くんてばへたっぴですね。」
七緒先輩の残念そうな声に龍馬先輩は静かに項垂れた。
「鏡太郎、ぼく、あのお菓子がほしい。」
そう言ってカルルスが指さしたのはお菓子の詰め合わせだった。鏡太郎先輩がはいはいと返事を返し、一発で12番の札を倒し、その後8番の札も倒していた。
「わーい。鏡太郎!!ありがとう!!!!」
「鏡太郎………?」
「はい。お掃除セット。あ、自分で取りたかった………??勝手に取ってごめんね。」
「いや………ありがとう。」
「あと一発はチロにあげる。」
「鏡太郎先輩!!あざっす!!!!」
一六が放った一発の弾丸は隣の札に当たり、横にそれたその札は目当ての2番の札と共に倒れた。
「…………ィヨッシャァ!!!!!!!!!!!!!!」
「良かったね一六。」
「あとは、太子くんだけですね。」
「………クソッ当たらない………」
俺は龍馬先輩2週目あたりから弾をぶつけているはずなのに当たらない………惜しい所までは行っているが札が斜めになってしまったため当たらないのだ。
だんだんとイライラが増し、「もう一回」の声もどんどん強くなってしまう。すると背後に鏡太郎先輩が回って手が重ねられる。
「………たいたい、落ち着いて。あの辺に標準を合わせて、そう。で、撃つ。」
パン!!と乾いた音を立てて斜めになっていた札がコトンと倒れた。
「やった…………っしゃオラァ!!やっと取れたぞコルァあああぁぁぁ…………」
やばい、隣に部のみんながいたんだった………
「良かったね。太子。」
「頑張りましたね。」
「太子すげぇじゃん!!」
「………よく出来ました。」
先輩方に頭を撫でられ、一六に抱きつかれた。
俺はもらった温泉券をそっと撫でた。
「ありがとうございます。」
「あー。太子がデレてる〜!!」
「うるさい!!」
そこへ聞き慣れた声が聞こえた。
「たーいにーぃ!!」
手を振りながら走って来たのは近所の子どもたちだった。
「たい兄。こんばんは。」
「はい。こんばんは。挨拶出来て偉いな。」
「たい兄。あのね。あっちでねヨーヨーいっぱい取れたから1個あげるね。」
「僕もいっぱい取れたんだ〜!!だから僕もあげる〜!!」
僕も私もと俺の手にヨーヨーやスーパーボール、ビー玉などが乗せられる。
「ずいぶん人気ですね。」
「あの人たちたい兄のお友達??」
「そう。」
「じゃあたい兄みたいに強いの!?」
「あ、コラッ!!」
「やっぱり太子って強いの??」
「うん!たい兄は僕らのヒーローなの!!この前も公園独り占めしてた悪い奴倒してくれたもん!!」
「へぇ………太子って優しいんだね。」
「いや、それは、その…………」
「………縄張りは守る系ヤンキーだったんですね………」
「あいつら高校生にもなって小学生に手ぇあげてたもんで………」
「………たいたいカッコイイねー。」
「あれ?お兄さんの頭、何が乗っかってるの??帽子??」
鏡太郎先輩の頭を指さした子どもに答えようとしてカルルスを下ろそうとした先輩があれ?と声を上げた。
「頭、冷たいと思ったら……カル、俺の頭で寝てる。」
そう言って先輩がしゃがむと俺らはそこをのぞき込んだ。
するとカルルスは幸せそうに鏡太郎先輩の髪の毛を抱いてそれをあむあむと甘噛みしながら眠っていた。
「…………食べないでって言ったのに………」
「それじゃぁ今日はこの辺で帰りましょうか。」
「太子〜!!またなー」
「また学校でね〜!!」
「はい。また。」

「おかえり太子。あれ?友達は帰ったのか??」
「ああ。…………そうだ。射的で温泉旅行取ったからみんなで行こうぜ。」
「おっ。良くやったな。久しぶりに家族全員で温泉旅行行くか。おーいみんなー!!太子が良いもん取ってきたぞー!!」
「わーいお兄ちゃんありがとう!!」「兄ちゃんすげー!!」
後日、家族で黒玉湯に似てるような似てないようなな温泉に行った。
作品名:夏祭りのHAPPY 作家名:桜菟