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青い制服

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「ふふ、いいえ」
「制服、ありがとう」
「はい。あっ、一度、こちらのロッカールームで試着して貰っていいですか?サイズが合わなければ他のサイズを用意しますから」
「了解、ちょっと待ってて」
ファは、ロッカールームで着替えるアムロを個室の外で待つ。しかし、暫く待つが、アムロがなかなか出てこない。
「あの…アムロ大尉、どうですか?」
心配になって声を掛けると、アムロがそっと扉を開けて顔だけを出す。
その顔が、何故か真っ赤になっていて、ファは首を傾げる。
「サイズが合いませんか?」
「いや…サイズはピッタリなんだけど…」
「何か足りないものがありましたか?」
「足りないもの…そうだね…えっと…これ、どうして袖が無いの?」
ロッカーから姿を現したアムロは、クワトロの物と色違いのブルーの制服で、アンダーシャツも同じくノースリーブで袖が無い。
「あ、尉官クラスはこの制服なので…」
「あ…そういえば、シャ…クワトロ大尉もこの制服だったね」
「はい」
「確かに、あの人も袖が無かったかも…」
「ええ、クワトロ大尉とは色違いになります。流石に赤はクワトロ大尉専用ですけど、他はこの色とグリーン、あとはブラックになります」
「そうなんだ…」
「あ、でも。ヘンケン艦長はこの制服に長袖のアンダーシャツを着ていたかも。皆さん、色々アレンジしてるみたいです」
「あっじゃあ、俺も長袖で…」
そう言いかけたその時、クワトロとカミーユがロッカールームに姿を現わした。
「どうした?ファ」
「あ、クワトロ大尉!アムロ大尉の制服を合わせてたんです」
「そうか、どうだ?アムロ」
「えっと…なんだかコレ、恥ずかしいんだけど」
アムロの制服姿を見て、クワトロが「うむ」と頷く。
「よく似合っている。そう言えば、一年戦争当時もブルーの制服だったな。あの時は下は白色のズボンだったか?」
「え?あ、ああ。そうだね」
当時の少年兵の制服を思い出し、アムロが頷く。
「それならこの制服も下は白にしますか?確かあった筈です。今、取ってきますね!」
「あっ!ファ、長袖のアンダーシャツも頼むよ」
「はい!分かりました」
部屋を出て行くファの後ろ姿を見送りながら、クワトロが疑問の声を上げる。
「長袖?」
「アンダーシャツだよ」
「別に寒くは無いだろう?半袖でよく無いか?」
アーガマの中は適度な温度設定がされており、半袖でも充分に暖かい。
「貴方みたいに逞しい腕なら良いけど、俺の貧弱な腕を晒すのは恥ずかしいよ」
アムロが自分の二の腕を見て溜め息を吐く。
「そんな事は無いだろう?パイロットとして均整のとれた綺麗な筋肉が付いている」
「そうか?でもやっぱり恥ずかしいよ。どうしたら貴方みたいに筋肉が付くんだ?」
「それは人種的なものもあるだろうからな」
「でもさぁ…」
と、拗ねるアムロに、クワトロがクスリと笑う。
「それに、この方が私が君に刻んだ傷痕がよく見える」
そう言いながら、ア・バオア・クーで剣を交えた時の剣の傷痕に、クワトロが口付ける。
「ちょっ!シャア!」
思わずシャアと叫んでしまったアムロに、クワトロが嬉しそうに微笑む。
「私がシャア・アズナブルとして、君と戦った証しだ。それに私だって君から受けた傷を晒しているんだ。君だけ隠すのは不公平ではないか?」
クワトロはスクリーンを外し、眉間の傷痕がよく見える様に髪をかき上げる。
「そんなの知るかよ!」
目の前の二人の行動に一瞬固まりつつも、思わぬ発言にカミーユが声を上げる。
「え?クワトロ大尉のその傷って、アムロさんが付けたんですか?」
「ああ、ヘルメットが無ければ即死だった。まともに訓練も受けていない素人だったのに、恐るべき戦闘センスだ。おまけに、迷わず急所を狙うその容赦の無さは流石だよ」
「貴方には本気でかからなきゃ、反対にこっちが殺される」
不敵に睨みつける琥珀色の瞳に、クワトロが笑みを浮かべる。
「ふふ、それでこそ“私の”アムロ・レイだ」
「はぁ!?なんで“貴方の”なんだ!」
思わず顔を真っ赤にして叫ぶアムロを、クワトロが嬉しそうに見つめる。
「違うのか?」
『互いにあの日、想いを伝えあっただろう』とその瞳が訴える。
アムロもそれは認めているが、ここには今、カミーユがいる。
流石に彼の目の前でそんな事は言えない。
「ば、馬鹿!」
「ふ、まぁ良い。それは今夜、ゆっくり確認するとしよう」
更に問題発言をブチかますクワトロに、アムロは口をパクパクとさせるだけで言葉が出ない。
隣では、カミーユが怒りに震えて拳を強く握っている。
「貴方、まさかアムロさんに!そんな大人、俺が修正してやる!」


◇◇◇


そして翌日、艦橋にはアポリー達と同じグレーの制服を着たアムロの姿があった。
「あれ?アムロさん、アポリー中尉達と同じ制服にしたんですか?」
昨日とは違う制服姿のアムロに、ファが疑問の声を上げる。
「まぁね。こっちも尉官クラスの制服だろ?」
「ええ、まぁ…そうですけど…」
少し残念な顔をしながら、ファが答える。
そんなアムロ達の前に、クワトロとカミーユが現れた。
「アムロ、なんだ!その制服は!」
「別に、これだって尉官の制服なんだから良いだろ!貴方と一緒なんてゴメンだね!」
「アムロ…」
プイっと横を向くアムロに、クワトロが情けない顔をする。
そして、横に立つファに視線を向ける。
「ファ、せめてあの制服のブルーは無いのか?」
「え?いえ、アレはグレーだけですけど…」
「よし!ブルーも作ろう!今直ぐに手配をする!」
「おい!貴方にそんな権限無いだろう!」
「何を言う、私はエゥーゴの代表だ。充分その権利はある」
「そんな事に権限を使うな!」
「『そんな事』では無い!大事な事だ」
「はぁ!?何言ってんだ!」
その場で始まった二人の言い合いに、皆は驚き、ブライトは頭を抱える。
そして、またカミーユ鉄拳がクワトロに炸裂した。
「修正!!」


結局、クワトロのゴリ押しで、アムロにはアポリー達と同じデザインのブルーの制服が支給された。勿論、下のズボンは白。
何処と無く懐かしいその制服姿を、ブライトは感慨深げに見つめる。
そして、思わずポロリと本音が溢れる。
「そうやって見ると、お前、昔とあんまり変わらんな」
「ブライト!?あー!もうっ!俺、やっぱりカラバに帰る!」
「待て!アムロ!」
半泣きのアムロを見ながら、スクリーングラスの下で、クワトロはその可愛い姿を瞳に焼き付ける。
そして、その後ろではカミーユが拳を握りしめていた。


end


2019.1.16
作品名:青い制服 作家名:koyuho