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鳥籠の番(つがい) 10【完結】

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それを聞き、シャアと、同じく、それを聞いたセイラが一瞬目を見開き、クスリと笑う。
「しかし…それは後でアムロに怒られそうだな」
『起きないアムロがいけないんです』
「ふふ、兄さん、ララァさんの言う通りよ。仕方がないわ」
「アルテイシア…、後で一緒に怒られてくれよ」
「あら?どうして私が?」
「アルテイシア…」
「さぁ、兄さん。覚悟をお決めになって」
クスクス笑うセイラに、肩を竦めながらも、シャアの顔にも笑みが浮かぶ。
シャアはゆっくり立ち上がると、少し伸びたアムロの髪をかきあげ、片手をベッドのヘッドボードにつき、もう片方の手をアムロの頬に添える。
「アムロ、愛してるよ…。だからお願いだ、目を開けてくれ」
シャアは目を閉じると、そっとアムロへと口付ける。
それはまるで、お伽話の『眠り姫』で、プリンセスを眠りから覚ます、ワンシーンの様だった。

唇をゆっくりと離し、アムロの顔を見つめる。すると、今までピクリとも動かなかったアムロの瞼が震え、その下から琥珀色の瞳が姿を現わした。
「……アムロ!」
シャアは思わず名を呼ぶが、その後に続く言葉は胸が詰まって中々出てこない。
隣では、セイラが口元に手を当て、喜びに瞳を潤ませていた。
「アムロ!」
そんな二人を、アムロがまだ開ききらない瞳で見つめる。
暫くは、朦朧として状況がよく分からないと言った様子だったが、アムロの耳元でララァの幻影が何かを囁くと、驚いたように目を見開き、みるみる顔が赤く染まる。
「あ…」
ずっと使われていなかった声帯は、上手く言葉を紡ぐ事が出来ない。
しかし、掠れながらも、目の前の人物の名を呼ぶ。
「シャ…ア…」
「アムロ…」
シャアはアムロの両頬を手で包み込み、一年ぶりに見る琥珀色の瞳を見つめる。
「ああ…ようやく…君の瞳を見る事が出来た…」
そう呟くシャアの青い瞳から、いく筋もの涙が溢れ頬を伝う。
「貴方…結構…泣き虫…だよね…」
「ふふ…そうかもしれんな…」
優しく見つめ返すアムロを、シャアは震える手でギュッと抱き締めた。



お互いにその温もりを感じ合っていると、廊下をドカドカと走ってくる足音が聞こえる。
そして、バンっと病室のドアが開かれたと思ったら、カミーユと、それを追う様にギュネイが入ってきた。
何処から走ってきたのか、はぁはぁと肩で息を吐くカミーユがシャアをキッと睨み付ける。
「何が『眠り姫には王子様のキス』ですか!」
叫ぶカミーユに、アムロが顔を真っ赤に染め、シャアとセイラが声を上げて笑い出す。
どうやらカミーユにも、ララァの声が届いていた様だ。

そして、さっき、アムロの耳元でララァが囁いた『言葉』、

“眠り姫みたいに、アムロってば王子様のキスでようやく目が覚めたのね”

王子様のキスは、見事、眠り姫を眠りから目覚めさせたのだった。

わめき散らしてシャアに殴り掛かろうとするカミーユを、ギュネイが必死に止めている。
そんな光景を見ながら、アムロの顔にも笑みが浮かぶ。
『全てが…良い方向に向かったんだ…』
心の中でそんな事を思っていると、また、ララァの声が聞こえてくる。
『そうよ、アムロ。貴方が頑張ってくれたから…大佐はああして今、笑っているの』
『僕だけじゃないよ、ララァが助けてくれたから…』
アムロの目の前には、優しく微笑むララァの姿があった。その場にいた、他の誰にも見えなかったが、アムロにははっきりと見えた。
『ありがとう…ララァ』
ララァはそれに笑顔で答えると、そっとアムロの頬にキスをして消えていった。

微笑むアムロの手を、シャアがギュッと握る。
「ララァと内緒話か?」
「ふふ、まぁね……。シャア…貴方に…話したい事が…沢山あるんだ…」

微笑むアムロの後ろの窓には、美しい青空が広がり、二羽の鳥が大空向かって羽ばたいて行った…。


end

2019.1.22


長らくお付き合い頂き、ありがとうございました。
『鳥籠の番』ようやく完結致しました。