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Sleeping beauty〜眠る君へ〜 「鳥籠の番」番外

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子供たちに囲まれて、うっとりと見つめられているアムロに視線を向けると、思わず笑いが込み上げる。
「なんだか、小人に囲まれた白雪姫にも見えますね」
「ふふふ、そうだな」
カメラにその光景を収めながら、カミーユが笑い出す。
「来年もまだ目覚めないようだったら、次は白雪姫にしましょう」
「それはいいな!」


そして、その半年後、目覚めたアムロがその時の写真を片手にフルフルと身体を震わせる。
「おい!シャア!なんだコレは⁉︎」
「ああ、よく撮れているだろう?」
「「よく撮れているだろう?」じゃない!人が寝てると思って、何してくれてるんだ!」
「ただ待っているだけなのもつまらないのでな。皆も喜んで協力してくれた」
側にいるセイラや看護師達も楽しげに微笑む。
「アムロ、とても似合っていたわよ」
「お化粧のノリもすごく良くって!」
「セイラさんっ!」
「今年はどうする?白雪姫は如何かしら?」
「もう起きてますからっ!」
「あら、残念だわ。子供達にもとても好評だったのよ」
「俺に女装趣味はありません!」


長い眠りに就いていたアムロは、リハビリの後、無事に退院し、今はヨーロッパのセイラが所有する屋敷で療養をしている。
長い間使われずにいた身体は筋肉が落ち、リハビリでなんとか動ける様になったが、まだまだ歩くのに杖を必要とする。
しかし、心配された精神の異常などは見られず、マインドコントロールの後遺症も無いようだった。

その夜、私は忙しい時間をぬってアムロの元を訪れ、久しぶりに食事を共にし、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「相変わらず忙しそうだね」
「まぁな、しかし今が頑張り時だ。何事にもタイミングと言うものがある。今を逃せばスペースノイドの独立はまた遠のいてしまう」
食後のコーヒーを飲みながら、アムロが嬉しそうに微笑む。
「頑張ってるんだね」
「君と約束したからな。私は私のやり方でスペースノイドの独立を成し遂げる」
「ああ、貴方なら出来るよ」
アムロが微笑みながらも、少し悲しい表情を浮かべる。
それを見つめ、そっと席を立つと、アムロの元へと歩みより、その丸い頬の手を添える。
「シャア?」
「アムロ、君も私との約束を果たしてくれるか?」
「約束?」
「ああ、まだもう一つ、果たされていない約束がある」
そう言うと、真っ直ぐにアムロの琥珀色の瞳を見つめる。
「アムロ、私を傍で支えてくれ。そして、私を導いてくれ」
私の言葉にアムロは息を止めると、フッと笑みを浮かべる。
「そういえば…そんな約束してたね」
「ああ、叶えてくれるか?」
「貴方、充分一人で歩いてる様に見えるけど…それに、まだまだ満足に歩けないし、こんな俺が貴方を導く事なんて出来るかな?」
「何を言う!君が見守ってくれているからこそ頑張れる、それに、歩けなければ私が君の足となる!私には君が必要なんだ」
アムロに触れる手が震える。
もしもアムロに手を振り払われたらと思うと、怖くて仕方がなかった。
そんな私の思惟を読み取ったのか、アムロが私の手の上に自身の手を重ねてくれる。
「そっか…」
その手から、アムロの不安が伝わってきた。
アムロもまた、ままならない身体に、自分では何も出来ないと不安を抱えていた。
満足に歩けず、マインドコントロールの後遺症も、このまま一生出ないとは限らない。
そんな不安の中で、私と共の歩む事に躊躇いを感じていたのだ。
「アムロ、お願いだ。私と共に宇宙に上がり、私の傍で生きてくれないか?」
私の差し出した手を見つめ、アムロの琥珀色の瞳が涙で潤む。
「…俺は…貴方の手を取ってもいいかな…」
「勿論だ!君にこの手を取って欲しい!」
アムロは嬉しそうに微笑み、その瞳から涙が零れる。
「また…手を差し出してくれて…ありがとう。本当は昔も…貴方の手を取りたかった…でも…出来なくて…」
アムロの瞳からポロポロと涙が零れる。
「今度こそ…貴方の手を取りたい。俺は…貴方と共に生きたい…貴方の傍にいたい…!」
涙を流しながら、アムロは私の手を取ってくれた。そんなアムロに愛しさが込み上げる。
ずっとずっと追い求め、誰よりも、何よりも愛した存在。
マインドコントロールを受け、マスター登録で私に忠誠を誓う、偽りのアムロを手に入れた時は、ただ虚しさだけが溢れ、もう二度と真実のアムロを手に入れることは出来ないのだと絶望した。
それでも、偽りでも、アムロを自分の物にしたくて、その身体を抱いた。
しかし今は、私が追い求めた真実のアムロが自分を求めてくれる。
これ以上ない喜びに身体が震える。
「アムロ…」
その身体を抱き寄せ、腕の中に閉じ込める。
「君を…ようやく…手に入れることが出来た…」
もう一度、アムロの顔を見つめ、強い光を放つ瞳を見つめる。
「これこそが…私が追い求めた光…君を…心から愛している!」
「シャア…」
互いに引き寄せられる様に唇を重ねる。
その存在を確かめ合う様に、深く、深く重なり合う。
「キスだけじゃ足りない。今すぐ、君が…欲しい…」
私の言葉に、アムロは少し戸惑いながらもコクリと頷き、おずおずと腕を首に回してくれる。
そんなアムロを抱き上げ、ギュッと抱き締めた。


翌朝、腕の中で目覚めるアムロの瞼にキスを落とす。
朝陽に照らされたその顔は、嬉しそうに微笑み、私を見上げてくれる。
「おはよ…シャア…」
「ああ、おはよう。私のsleeping beauty」


end


【おまけ】

「そう言えばさ、ララァと刻を巡ってる時、幼い頃の貴方を見たよ」
ベッドの中で微睡みながら、アムロがポツリと呟く。
「私を?」
「ああ、お母さんに甘えるキャスバル坊や。凄く…幸せそうだった…」
自分では覚えていないが、物心つく前は、ジオンの名など背負う事など知らず、純粋に優しい母に甘えていたのだろう。
「…そうか…」
少し照れくさいが、アムロにならば知られても構わないと思う。
「うん…あんな風に…俺も貴方を幸せにしたい」
優しく、私の頬を撫ぜてくれるアムロの手にそっと口付ける。
「もう、充分幸せにしてもらっているよ…」
「そうか?それじゃ、もっと、もっと幸せにするよ…」
そう言って微笑むアムロの顔に、優しかった母の面影が重なった。


end