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刀剣男士であいうえお小説

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一期一振



「夢の影」


いつかと同じ光景。辺り一帯が炎に包まれている。炎の中心に在るのは己が刀身。暑い……熱い…熱イ…アツイ…!身を焼く炎に飲まれるように意識が薄れてゆく。目の前も段々と黒く染まっていき、いよいよか…と覚悟したその時、ふと視界の端に人影を見つけた。幼子の姿をしたその影は此方へ向かっている

「近寄ってはなりません!」
咄嗟に叫んでいた。その自分の声にハッと目が覚める。夢…?
「突然大きな声出すからビックリしたぜ一兄」
薬研が心配そうに顔を覗き込んでいる。夢であって良かったと安心した一方で、身体はまだあの熱を覚えているかのように火照っていた。それに加えて気怠るさが少々。

ゴホッとひとつ咳が出る
「ん、やっぱり風邪だな。熱もあるようだし、薬飲んで今日は一日安静にしててくれ」
それで漸く気づく。今自分は布団に寝かされており、少し開けられた襖の間から弟達が心配そうに此方の様子を伺っていることに
「夢見が悪かったのも熱のせいだろう。どんな夢かは聞かないが」

一人で抱え込んで潰れちまうのだけは勘弁してくれよな一兄、と哀しそうに微笑む。こちらを覗き見ている弟達も皆同じような顔をしていた。
「すまない…心配をかけて」
「こういう時くらいさせてくれ。兄弟なんだから。偶には兄を思って心配したいが、立派な兄は中々隙を見せてくれなくて困ってた所だ」

とても優しい子だ。自分に余計な負担はかけまいと茶化して言っているのだろう。布団から腕を出し薬研の頭を撫でる。言葉は無くとも言いたい事は伝わったらしく、少し照れくさそうにした後「さて薬を調合してくるか」と薬研は部屋の外で待つ弟達を引き連れて部屋を後にした。
部屋に静かな時間が流れる

不意に夢に出てきた幼子の事を思い出す。あの子は一体何だったのだろうか…。考えを巡らそうとするが熱のせいか上手くいかない。仕方ないので一眠りしようと目を閉じる。後少しで眠りにつこうかという時、刀が空を切る音が聞こえた
「あぁ、起こしてしまったかい」
そこにはにっかり青江殿が立っていた

「理由が聞きたそうだけど深い意味はなくてね。これで邪を祓う事ができるらしいよ。その真似事をね」
まぁ今は眠って休むといい、と彼は私の目に手を被せる。暖かい…その手の暖かさで再び夢の世界に誘われる
「今の君に“アレ”は魔でしかないからねぇ…」
最後に彼が呟いた言葉は私には届かなかった。




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