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章之記

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だが、世子までは、、、世子は父上の子である平旌が受けるものだ。──
「平旌、、、お前が私なら、、、どうする?。」
──お前は、逃げ回るだろうな、、。──
平章は平旌の髪を手で整えてやり、無邪気な寝顔に苦笑する。

「私も、、、お前の様に出来たら、、、。最初からそうすべきだったのか?。」
──父が私に、失望する姿を見たくない。
想像だけでも耐えられぬ。
役に立ちたい、ただそれだけだった。
役に立って、父の穏やかに、満足気に微笑む顔が見たいのだ。
私は、お前の様には出来ぬ。──
「ならば、お前を鍛えるしかない。明日は一日、私が連れ回す。お前を遊びになぞ行かせぬぞ。」
平章は、平旌の鼻を掴んで、言い聞かせる。
「分かったか!!。嫌だとは言わせぬ。」
どれだけ遊び回って疲れたのか、平章にそんなことをされても、目を覚ます様子はない。
平旌の寝顔を見ながら、頭の中で明日の計画を立てていた。
──平旌には逃げられないようにしないと。──


平章の部屋の外に、人影が見えた。
平章は人影に声を掛ける。
「周さん。」
長林王府の雑務を取り仕切る、周さんだった。見回りをしていたのだろう。
「はい。」
恭しく、男が部屋に入ってくる。父庭生よりも、年は上だろう。
「周さん、平旌は帰ってきて、ここに居る。持ってきてくれた夕餉は、綺麗に食べた。多分、自分の部屋には行かず、朝までここで寝るだろう。母上に伝えてくれぬか?。」
周さんは、夕餉の盆を片付けて、辞儀をして部屋を出ようとしていた。
「あ、、それから、誰かに布団を、持って来させてくれ。平旌に床を取られた。」
「はい。直ぐにお持ちしますよ。」
周さんは穏やかに笑って、部屋を後にした。程なく誰かが、夜具を引きに来るだろう。

「平旌、、早く、、早く大きくなれ。それ迄、『世子』は預かっておくから。お前が成人したら、『世子』を渡せるようにする。
私は父上とお前の配下で構わない。それが正しい長林王府の形で、誰も文句を言ったりしない。
『長林王』は平旌が継がなくては、、。」

──早く大人になって、私の悩みも聞いてくれ。
父上や、長林王府の立場も、結構、危ういものなのだぞ。
王府や陛下から少し離れると、それがよく見える。
今は陛下がご健在で、朝堂で、父上は陛下の後ろ盾に支えられている。
だが、いつまでも、このままは続かぬのだ。
父上にはそんな事を、考えさせたくは無い、国境の事だけで手一杯だ。こんな煩わしい事まで加わったら、いくら屈強な父上でも、倒れてしまう。
だから、私とお前が手伝うのだ、王府と国境の安定の為にも。
平旌、お前は、長林王府が、存在し続けなければならない理由を、知っているか?。
反抗期どころではないぞ。──

夜具を抱えて、屋敷の従者が、部屋に向かってくるのが見える。

──今夜は眠れるかもしれない。
ずっと、ずっと、、眠れなかった。
一人では、どう考えても答えが出なくて、、。──

昔は小さい平旌が、良く平章の布団に潜ってきた。
兄と慕ってくれる可愛い弟。
体も大きくなり、寝相も酷い。
懐っこさと愛らしさに、周りに溺愛され、我儘放題の弟。
父以外は誰も平旌を叱らない。

──だが、私の言うことはよく聞いたのだ。
毎日、犬っころのように、私に付いて回った。
そして私の真似をしていた。
可愛い弟。
父上とお前を守るためなら、どんな事も厭わない。──



──父上が守っているから、私も守る。
父上に信頼を受けるのは、心地いいのだ。
きっと、お前も分かるようになる。
だから、父上の仕事を教えてやる。
父上か、どれ程、国を大切に思っているか。
お前や、母上や、私がいるからだ。

目を逸らさず、
見るのだ。──


──平旌、早く、大きくなれ。──

幾らか眠気が出てきた。
眠りは体を回復し、鋭気を養える。

明日は、平旌を離さぬ。
父の姿を見せるのだ。
平旌の心が動かぬはずは無い。


──────────糸冬───────────
作品名:章之記 作家名:古槍ノ標