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章之記

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我が根幹など、知った所で、良くも悪くも何も変わりはしないのだ。
例え陛下の子であったとしても、皇太子殿下の地位に揺るぎはなく、私の忠誠も変わりはない。
今がどれ程尊いものか。
私の家族と私の使命。
陛下と先生は、私の居場所を作って下さった。
梁の民と、妻と子、そして陛下と弟達、義兄の愛息と、共に守ってゆけるのだ。━━




自分の部屋へと向かう、平章の足取りは重い。
結局、父に返り討ちにあった。
『世子』を撤回してもらうには、散々考えて、直談判しかなかった。
一度決めたなら、心は変えぬ父だった。一か八かで父に談判に行ったのだが、、、。

平章は自分の部屋の入り口に差し掛かる。
「、、、またか。」
明かりが灯る薄暗い部屋の入口に、平旌の剣が、無造作に投げ出されている。
そして次に、だらしなく脱ぎ捨てられた外套。
平章は、剣と外套を拾い集める。
座卓の上には、広げられた書が数冊、、、卓の下にも落ちている。
平章は、部屋を見渡す。
平章の部屋は、あちこち弄った跡があり、、、、、最後は、、寝台。
夜具は広げられ、そこに寝ているのは平旌だった。
「どこを遊び歩いているんだか、、。」
平旌の帰宅は、夕餉に間に合わず、、、。
父が在宅の日は、必ず家族で共に夕餉を囲むのに。
「父上と母上が、心配していたぞ。」
父は心配どころではない。
、、、、、、怒っていた。
平旌の夕餉など残しておくな、と、炊屋の者で食べてしまえと。

ゆっくりと寝台に近寄り、腰を下ろす。
寝台の側の小机に、周さんに言って、この部屋に、夕餉を何品か運ばせた。
平旌は見つけて食べたようだ。余程、腹が減っていたのか、、急いで食べた様で、盆の上にご飯粒が、とっ散らかっている。
飯を食べて満たされて、眠気に襲われ、平章の布団で力尽きたのだ。
背中を向けて寝ている弟。
まだ十五にもならぬ。遊びたい盛りだ。
何にも興味津々で、一日が短くて仕方ないのだろう。
「、、おい、起きろ。私の布団だぞ。またここで眠る気か?。」
揺すっても起きる気配はない。
一日遊んで、疲れたのだ。
「また、外着のままか。私の布団は、いつもお前が寝るから汚れてしまうんだぞ。私の布団だけ、黄砂だらけになったこともある。せめて外着は脱いで、布団に入れ。、、、全く、、帯も解かずに、、。」
平旌の腰帯を緩めて、外してやる。
ゴロリと、平旌の体が仰向けになる。
すると、パラパラと細かい何かが布団に落ちた。
「あ"www、お前はWWW!。」
急いで食べて噎(むせ)せたのか、平旌の胸から腹にかけて飯粒が、、、向きを変えた拍子に落ちたのだ。
「三つや四つの子供じゃあるまいしwwwwww。全く、人の布団を何だと、、。」
何処で何をしてきたのか、、。
飯粒を拾って、外着を緩め、手甲を外し、、、。いつもの事だった。
髪に木の葉が着いていた。
「飛盞にでもまた負かされてきたか?。」
──平旌は、強い相手に向かっていく。
飛盞も忙しいだろうに、よく相手をしてくれる。──
平旌の髪に絡まる木の葉と、木の小枝を取ってやると、何だか無性に平旌へと、怒りが込み上げて来る。
握った拳で、軽く平旌を打った。
「私がこれだけ世子の件で苦しんでいるのに、、お前ときたら、、。どこかで楽しく遊んで、人の布団を汚くして、、。」
もう一度平旌を打つ。
「父上が、私を世子にすると言った時の、お前の嬉しそうな顔、、。事もあろうか、私に『おめでとう』なんて、大喜びして、、。」
また、平旌を打った。
「どれだけ私が困っていると、、、。」
何故が目の前の平旌の姿が歪む、、、涙が溢れていた。
「、、、平旌、、、早く大きくなれ、、早く大きくなって、私を越せ。
さも無いと、、、、、さも無いと、、私はお前のものを奪ってしまう。」
──要らぬのに、、何も。
父上が、私に向ける笑みだけで、十分なのだ。──
平章はもう、今の平旌の年の頃には、王府に届く官報を盗み見て、その内容を、理解をしていた。ただ父の役に立ちたかっただけなのだ。
それが、、、。
──私に任された仕事に穴をあけたら、父は呆れて取り下げてくれるだろうか、、、。
、、、、いや、駄目だ、、父上の顔に泥を塗る。そして軍部の他の人にも、迷惑がかかってしまう。
、、、手遅れかも知れない。
もっと早くに気がついていたら、、。だが、まさか、こんな事になるなんて、、、。
当然、世子は平旌がなるものだと、、、。
初めは、軍報や官報を見て、一言二言、述べただけなのだ。すると父上は驚いて、、そして喜んだ。それが嬉しかっただけなのに、、。私は図に乗ったのだ。
父の親兵にでもなれれば、私は満足だったのだ。
父の側で、父を助けられれば、、、。──
「お前と来たら、、私が官報や軍報を広げておいても、チラッとも見やしない。、、、どうしたら、父上の仕事に興味を持つ?、どうしたら、二人で父上を助けられる?。
私は、二人揃って、父上の元で、働けるのだと思っていたのだ。そうなりたかった。」


「私より、お前の方が凄いのに、、、。私なんか、こんな在り来りの、、。お前の眼力には及ばない。お前の能力を、父上は知らぬのだ。お前が何もせぬから、、、。」
──そうだ、お前が父上の前で、力を発揮できるようにすれば、、。──
眠る平旌の顔を見ながら、暫く考えを巡らせた。
「無理だ、、、。どうやってお前を机の前に座らせる?。
飛盞に剣で勝つより難しいぞ。」
──軍務にならば、気が向けば付いてくる。──
「、、、、いや、ただ強い兵と勝負したいだけだ、、」
──平旌をその気にさせるのが、、第一父上の手伝いなど、、。
殊更、父上の事となると、コイツは気難しい、、。
父上が平旌を叱るせいだ、、、。──
煽(おだ)てて、側で墨をすらせるのとは、訳が違う。

「あwww。全く!!。」
──なんで私が兄なんだ。
お前が私の兄だったら、全て丸く収まるのに、、。
もしそうならば、お前に、父上に言えない、私の心の内を明かせるのに。
誰にも話すことの出来ない、私の心の蟠(わだかま)りを、、、。
兄だったら、何でも相談出来て、こんなに苦しい思いもしなかっただろう。何も知らない、天真爛漫な弟に、どうやって相談するのだ。──

平章が、一番話したいのは、己の身の上だった。
──私が両親の事を、知りたがっていると、父上は勘付いている。
色々と、少しずつ、父上には知られぬ様に、探ってきた。
恐らく私の親は、父上の友人であり、近しい人物だろう。
私位の年端の子供がいた人物。
そして、両親が育てられぬ事態になり、身内ですら、私を引き取れぬとなれば、、、、、人物は、限られてくる。
そして更に、父上が私に、秘密にしなければならない人物なのだ。
『謀反の逆徒』、、。
当てはまる人物はいた。
一体どんな人物なのか、、何が起こったのか、、。罪人なのだ、誰に聞いても、良くは言わぬだろう。
、、、、父上ならば、良くお分かりだろうが、、、、聞けるわけがない。私が問うて、、父は悲しむだろうか、、落胆するだろうか、、。
『子に罪は無い』、そう思って、気の毒な私を、父は引き取ったのだ。
そして、私に肩身の狭い思いをさせぬよう、父の子供にしてくれた。
作品名:章之記 作家名:古槍ノ標