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永遠に貴方のもの。<後編>

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あれから、いくらか経ったがやはりいつも茶会に誘われる。
怒鳴ってしまった直後はさすがに招かれなかった。
これで茶会も終わりかと、少し残念に思・・・・・、思ってない。決して。
ごとりと何か蓋っぽいものがズレた音がしたが無理矢理戻した。
でもそれもつかの間のことで、数日もすれば彼はまたいつものようにちりんちりんとベルを鳴らした。
平静を纏って彼の執務室の扉をノックすれば、なんだか、落ち着かない彼の眼。
彼を見て、じ、と数秒待てば、心を決めたように彼と目が合う。綺麗な、紅い目と。

『また、一緒に紅茶、飲んでくれるか?』

その質問は無意味ではないかと思う。なのに敢えてするのはどうしてなのか。
深く考えてはいけないと、思考を振り払い、代わりに声を出して返事をすることにした。

『喜んで、ご主人様』

彼は少しだけ寂しそうな顔をして、それでも喜んでくれた。
それからまたいつもの茶会の日々が始まった。

ただし、彼の口数は格段に減っている。






このままではいけないと、想いを自覚した所為で精一杯になってしまう勇気で彼を茶会に誘った。
珍しく、頷きではなく、声を出して返事をしてくれた彼。でも・・。
『ご主人様』
呼ばれたのは初めてではなくて、いや、確かに片手に収まるほどしか呼ばれていないけど。
その呼称に、主人の命令だから従うのだろうかという疑念がよぎる。
でもまた一緒に紅茶が、彼の淹れてくれる美味い紅茶が飲めるのだという事実が嬉しかった。

再開された茶会で自分はさぞかし可笑しかったことと思う。
何度も言うが、自分は彼が好きなのだ。使用人としてでなく、奴隷としてでもなく、1人の男として。
自分も相手も男だから安直に告げる事はできない。・・・・腐れ縁の貴族には不可抗力でバレたけれど。
でも好きなものは好きだ。闇色の、さらさらと風に揺れる細かい髪と、吸い込まれそうな目。
粗野な自分とは全く違う、静かな動き。偶に聞ける艶声も。
・・・・・・それらを目前にして正常でいられるわけもなく。
今だって、ぼーっとしていたのだろう。目の前で彼がひらひらと手を振っている。怪訝そうな顔で。
ああまた変な奴だと思われた。再開されたはいいものの、自分は照れてロクに話せないのが現状だ。


仕事くらいは集中して取り組める。ただ一旦それが切れたらもう駄目だ。頭が一杯だ。
どれだけベタ惚れなんだ。よく今まで気付かなかったな。
時々街に出る時も彼を伴うようにした。執事に咎められたけどまた説き伏せた。なんて丸め込まれやすい執事。

そう・・・こうやっていつも彼と一緒にいるのには訳がある。
単に気に入ってるように見せたいのだ、不自然じゃないように。何にか。

今度、悪友の家で開かれるパーティに連れて行くのに。






初めて顔を合わせたときから変わった人だとは思っていた。決して不快という意味ではなく。
にしても今の言葉は解せない。私の隣にいる執事もそのようだった。というかなんでいるのだろう。
・・・・・折角2人きりになれるのにとかそんなことは決して思っていない。別に執事がいたって構わない。
隣の彼がこほんと咳払いをして、言葉を紡いだ。自分も思っていることを。

「今、なんと申されましたか、ギルベルト様」
「だから、コイツを、ニホンをパーティに連れて行く」
「なりません」
「なんで」
「彼は、奴隷でございます。確かに仕事はよくこなす上、ギルベルト様のお気に入りであることは承知の上です。しかし・・」
「奴隷じゃなきゃ、いいんだろ?アイツの手紙には、奴隷階級を除く同伴を1人認めると書いてある」

にんまりと商談の際に見せる笑みを零して、綺麗に片付いた机の引き出しから紙を1枚取り出した。
羊皮紙であるその紙は正式な書類のように見える。

「ニホンを、俺の正式な秘書にする」

びらりと広げられた紙には正式に私の雇用を示す書類が刷られていた。
信じられない言葉を理解して、咀嚼し、飲み込む前に隣の執事が声を上げた。

「・・・正気ですか。使用人にするというならまだしも・・秘書など、教養も必要なのはわかっておいででしょう」
「ああ、知ってる。こいつ、生まれは悪くない、多分」
「・・・・お待ちください」

ああそういえば執事の前で声を出したのは初めてのようだった気もする。隣の彼が目を見開いたのがわかった。

「以前にも申し上げたはずです。私(わたくし)を買うのに貴方はそれなりの資金を支払ったのだと・・・」
「そうだぜ、だから給料はやらない」

けろりとした顔で言い放つ。
彼の意図が掴めなくて瞬きを2、3したら、更に深く笑った顔が告げた。

「俺はお前を買った。だから、お前は永遠に俺のものだ、そうだろ?」







華やかなパーティ。きっと開催主のセンスがいいのだろう。
綺麗に飾られた食事、するするとした絹のような音楽。
そしてその後の、テーブルを隅に寄せての舞踏会。
場に合うように、と彼が自分に渡した服は黒の燕尾服。

・・・・・最後にこういった場に行ったのはいつのことだっただろう。

グラスに注がれた水を一口飲んで、テーブルに乗せると、色々なところに話をしにいっていた主がこちらに走ってくる。
どうしたのですか、という意図を込めて首を傾げると彼は走った為か上気した頬で言った。

「ニホン、一緒に踊ろう!」
「・・・・はい?」

あ、思わず声が出た。

「だから踊ろう!!平気だって、皆酔っ払って適当に男とも踊るし!」
「・・・ダンスが、できるとお思いで?」
「あ・・・。お、教えるから!」
「ご主人様の足を踏みたくはないのです。・・・・どうか、ご友人方と楽しんでください」

なんとか、断った。そか、と寂しそうに笑う彼に申し訳ない気持ちで一杯になる。
駄目なのだ、彼と踊ったりなんかしたら。蓋がはずれそうになる。厳重に閉めたはずの蓋が。

壁際に立って、軽やかなワルツに変わった曲を聴きながら踊っている人々を見る。
・・・訂正、自分の目はいつだって彼を見ているのだと認めよう。
知り合い、と言って先ほど紹介された女性と踊っている彼。悪態を吐きあっているようだけどとても楽しそうだ。
曲が変わると彼も相手を変えて、次は男になった。腐れ縁の貴族、と言われた人。なんだか怒られている。
次の相手は悪友と紹介されたうちの一人、口調が軽やかな色黒の男。
その次はまた悪友の1人でこのパーティの開催主。

なんでこんなに男にもててるんだろう、と思う反面。やはり踊ればよかったなと素直に思った。
理由、ですか。
あの人を誰にも渡したくないから、でどうでしょう?


ずっとあった重い蓋が、融けて甘いあまい液体になったような気がした。