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永遠に貴方のもの。<後編>

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舞踏会で色んな奴と踊った。
エリザとは相変わらず悪態を吐き合って、それとなく足を思い切り踏まれて。
ローデリヒには『なんでもっと根気よく誘わなかったのですかこのお馬鹿』と理不尽に叱られ。
悪友どもとは踊りながらくだらねえ話して。
楽しかった。と思う。第一の目的は果たされなかったけど。そうか。アイツが踊れないなんて考えてなかった。

途中でダンスホールを抜け出して、屋敷の外を散歩する。
酔いが冷やりと冷めていく。数歩後ろにはアイツ。
無理矢理秘書にして、舞踏会に連れて行くと言った時のこいつらの驚きようったらなかった。
結ばれなくてもいい。アイツが他の奴のモノにならなかったら。
・・・後者はもしかしたら無理かもしれない。でもできる限り、自分に繋ぎとめておきたかった。ただの独占欲。

はぁー、と自分に呆れて溜息が出た。
なんとなく見上げた空には星が沢山瞬いていて、立ち止まる。
その暗い空を見ても背後の奴を思い出すんだから末期だ。
後ろの彼も立ち止まる。

「・・・ギルベルト様」

艶声が響いた。
名前を呼ばれたのなんて初めてでどくんと心臓が波打つ。
期待とかさせないで欲しい。お願いだから。
後ろからサク、サク、と足音がする。
ああでも心臓の音でよく聞こえない。

すぐ後ろで気配が止まって。
彼の腕が、俺の腕ごと抱えるように腹に回った。
彼のほうが小さいのだから仕方ないといえばそうなる。
囁く様に、何度も夢に見た、でも夢よりも素晴らしい言葉を言われた。

「この身に過ぎた想いだとは存じ上げております。けれどもう、知らぬ振りをすることはできません」

「どうかこの言葉だけ聞いていただきたいのです。後で、追放するなり、殺すなり好きにしてください」

「私はどうしようもなく、貴方を愛しています」

頬が涼しい。多分目から零れた液体の所為。
正直、そんな風に想ってくれていたなんて全然思わなかったから、少し悔しい。
ぐる、と彼の腕の中で回って、彼の背に手を回す。

「・・・・ずっと、待ってたんだからな」

見栄を張りたくてそんなことを言う。様子を窺う為に顔を見ると、多分、見栄がバレたのだろう。
くすり、と、彼の口角が上がって、目が細められた。
ああ、こんなに、綺麗に笑う人なのかと初めて知った。

「ええ、ごめんなさい。遅くなりました」
「あと!殺すとか言うなって!!俺は、お前の、こと・・・誰よりも大事なんだから」

屋根から落ちた時言えなかったことを言った。顔が熱い。
多分真っ赤だからあまり見られたくないのに、前髪を上げて露になっている額にちう、と口付けられる。
こそばゆくて、もぞもぞ身を捩るとまた彼がくすくす笑った。
案外、笑い上戸だったのかもしれない。










先日のパーティから随分日が経った。
私も秘書としての仕事に慣れてきた頃。ああ、でも寝室を掃除するのは相も変わらず私のままだった。他の人じゃ嫌なんだそうで。
本日午後に控える日程に私は1人頭を悩ませた。秘書になったのを後悔したのはこの日が初めてである。

情が掛かるとか賭けられるとかも何もなくて、普通に話すようになったのはあのパーティの次の日からだ。
主である彼は大層驚いて、終始おっかなびっくりの様子だったが。
自分としては別に元々、大人しい方ではあるが全く話さないことはないので、幾分楽だった。

そう、話を戻そう。本日の日程。
それはこの国の王女のお忍びでのこの家の訪問だった。

なぜか。
現国王の第二王子が現在行方不明になっていることにある。もうすぐ捜査が打ち切られ、第二王子は正式に死亡と判断されるのだそうで。
王女が単独で捜索を行っているのは富裕層間ではそこそこ知られている話のようだ。
私は逃げることなど許されず、というか誰にも言えず。仕方なし、王女が客間に落ちついても主の傍らに立つ。
何から逃げるか。ええ、明らかですけれど。


幸い、お茶を出すのは私の仕事でしばらく背を向けることができた。
ふんふんと話を聞く主と、王女の声。独特のイントネーションと明るい声。

「それで、この辺で見たっていう話を聞いたのヨ。わからない?」
「王子の容姿自体を知らないからなんとも・・・・。外見の特徴とかはありませんか?」
「特徴?んー・・」

お茶を運んで、小さなテーブルの脇に膝をついて、音を立てないようにソーサーを置く。
そのとき、当たり前といえばそうだが、王女がこちらをちら、と見た。
微笑んでやって、首を僅かに左右に振ると彼女は物哀しそうな顔をした。

「・・ッ・・・」
「? 俺の秘書がどうかしましたか」
「・・・いいえ?なんでもナイヨ~。・・・・兄はこげ茶色の長い髪で、栗色の目をしてる人デス」

ほう、息を吐くと、もう一度、王女がこちらを見た。




会談が終わって、王女を送り出す。
車の後部座席の扉を開けて待つのは私の仕事で、待っていると王女が玄関から出てきて車に乗る。
扉を閉める直前、彼女が寂しげな顔で私に話しかけてきた。

「・・・お元気で、菊兄様」
「・・・・・・ええ、貴女もお元気で。そろそろ淑やかになさい、台湾」

バタン、と扉を閉めると車が発車する。
もうあまり直接会うこともないだろう。ちなみに先ほど王女・・・台湾が言ったのは長兄の特徴だ。
私について言うなら、誘拐と脱走とまた誘拐と売却と買取と出会い、とだけ。ふふ、波乱万丈ですね。
門から王女を見送っていた主の元に戻ると、特に理由なく笑みを浮かべた私を不思議がった。

「どうしたんだよ、ニホン」
「いえ?なんでもありませんよ」

人前なら『なんでもございません』で済ませるところを少し崩した、2人きりの時の敬語が心地良い。
並んで屋敷に入って、執務室に帰ろうとする彼の背中に話しかける。

「ギルベルト様」
「ん?なんだよ」
「私は、永遠に貴方のものですからね」

そう言ったでしょう、と念を押すように言えば、彼は顔を紅く染めて言い放った。

「当たり前だろ、もしお前が、この国の王子でもお前は一生俺のものだからな!」

さすがにそう言われるのは予想してなくて、慌てて彼を見れば、本当にただの仮定として言ったのだとわかる。
二重の意味で安心して、照れ隠しに早歩きで行く彼に付き従った。





後に王子の捜査打ち切りと同時に遺体のない葬式が行われたが。
それに出席した主が遺影の肖像画を見て、私の顔とものすごい見比べることになる。

「・・・ウソだろ?」
「残念ながら本当なんです」

その日の晩から、主がベッドの中でだけ、私の本名を呼ぶようになった。