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はろ☆どき
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今宵、柊の木の下で会いましょう

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※※※中盤より抜粋※※※

――チリチリリン――
――チリチリリン――

 扉が動く瞬間に、ドアベルが揺れる音と隙間から中へと入り込む黒猫の首輪の鈴が同時に鳴り、エドワードの耳の奥でぐわんと響いた。
「ん?」
 エドワードは一瞬違和感を覚えた。だが、店に一歩足を踏み入れた途端、目の前の光景に圧倒されてそんなことは忘れてしまった。
「うわあ……すげえ……」
 店は奥に細長く横幅は広くはなかった。しかし両脇の壁は天井まである書架に埋め尽くされ、びっしりと本が並べられている。それから壁と壁の間、店の真ん中にも、扉を入ってすぐのところから一番奥のレジらしきカウンターまで、背の高い書棚が背中合わせに置かれていて、もちろんそこにも本がびっしりと詰まっていた。
「マーサや、おかえり。おや……誰か連れてきたのかい」
 黒猫の鈴の音と共に、カウンターの奥から老人の声が聞こえてきた。店内は窓がなく、所々にランプは置いてあったが全体的に薄暗かった。エドワードは目を凝らしたが、奥にいる人物をはっきりと見ることはできなかった。だが、恐らく彼がこの古書店の店主だろう。
 ぐるぐるという猫――マーサというらしい――の甘えたような喉を鳴らす音が聞こえてきたので、邪魔しないよう奥に向かってそっと声をかけた。
「お邪魔しまーす」
 特に返事はない。念のためもう一言声をかける。
「本、見させてもらっていいかな」
「……ごゆっくり」
 今度は反応があり、ほっとする。慇懃な物言いだったが無愛想な感じではなく、一見を嫌っているというわけでもなさそうだ。エドワードはせっかくなので本を物色し始めた。
 最初に中央の棚をざっと回り、それから壁際の書架を下から上まで隈無く見てみる。天井近くは大人でも届かない高さだったので(エドワードが小柄なせいではない。断じて)、脚立がいくつか置いてあった。また壁際の書架の間に、小さな机とランタンが置いてあり、薄暗い店内でも本を見易いよう配慮されている。
 狭い店ながらかなりの数の蔵書があり、分野も多岐に亘っていた。店主の好みなのか、持ち込む者或いは買いに来る者の傾向なのか。そしてある一角には、錬金術関連の文献が並べられていた。日頃から錬金術関連の文献をチェックしているエドワードからすると、さほど目新しいものはない。だが、それなりに稀少なものや高度な内容のものが多数あった。
 そんな中で、何故かエドワードの目を惹くタイトルの一冊があった。それは嘗て家の書斎にあった蔵書のうち、当時のエドワードには少々難解で理解しきれなかったものだった。深い藍色の背表紙にタイトルは金文字で書かれている。国家錬金術師の資格を取った今ならば理解できる内容だと思う。だが、探し求めている事とは分野が違うため、見かけても手に取ることがなかったのだ。
 何故今、その本に惹かれるのか分からないまま、エドワードは手を伸ばす。そしてそっと棚から引き出すと、手に取って左手で表紙をひと撫でする。ずしりとした重みや質感が懐かしく感じられた。
 その感情のままに表紙を捲ろうとしたところ――何故か開くことができない。
「あれ?」
 再度捲ろうとしたが、表紙だけでなく他の頁も全てくっついているかのように開くことができなかった。エドワードは本を裏返したり立ててみたりと、あらゆる角度から検分する。
「ん? なんだ?」
 金箔に縁取られた本の側面を指でなぞっていると、下の側面――天地の地に当たる部分に僅かな引っ掛かりを感じた。よく見てみるとほんの少しだけ紙がはみ出している。メモか何か、別の紙が挟まっているようだ。それをどうにか引っ張り出せないかと、右手で本を抑えながら左手の指先で摘まもうと試みた途端――。
「わっ……!」
 小さく錬成光が走ると表紙が左右にぱかりと開き、それを追うように頁がぱらぱらと捲れていって、ちょうど真ん中の紙が挟まっていた辺りで開いて止まった。脚立の上に座っていたエドワードは、突然のことに後ろに仰け反りそうになる。咄嗟に両手で本を支えて床に落ちてしまうのはなんとか避けたが、立っていたら本どころか自分も危なかったかもしれない。
「あっぶねえ……」
 冷や汗をかきつつ本に目をやれば、開いた頁にメモらしき紙が挟まっていた。エドワードは紙を手に取って、何やらつらつらと書かれている内容を読んでみた。

――やあ、おめでとう。これを読んでいるということは、トラップをクリアして本を開くことができたということだね。君は錬金術にそれなりに通じていて、おそらくこの本の新しい所有者なのかな。君にとって興味深い内容であることを祈る。前の所有者より――R.M


※※※続きは本誌にて※※※