彼方から 第一部 第九話
「世の中には我々凡人にはない、特殊な力を持つ者が、あちこちにいるという。そんな噂はよく聞きますが、あなた程の力を見たのは初めてでしてね、あの時から、お近づきになりたいと思っとったんですよ」
どこかの屋敷の中、その造りは豪華で、部屋を飾る調度品や潤いを齎す数々の植物、ただ、生活していくだけなら何の必要性もない造形品が、並べられている。
贅沢な料理が並ぶテーブルに長椅子、その上には豪奢な布が被せられ、幾つものクッションが置かれている。
「その酒はどうです、リェンカのものですよ」
その長椅子の背に肘を掛け、使用人が注いだ酒を手に、盗賊のアジトにいた男に接待を受けているのは、あの……ケイモスだった。
第十話へ続く
作品名:彼方から 第一部 第九話 作家名:自分らしく