二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Family complex -出会いの日-

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 



ルートヴィッヒを寝かしつけたギルベルトが戻ると、菊はその間に風呂に入っていたらしい。
寝間着に着替えて居間でPCをいじっていた。
「眠りましたか」
ギルベルトに気がつくと、気遣わしげな様子で訊いてくる顔に頷いてやる。
良かった、と胸を撫で下ろす様子が彼の優しさを表しているようで、やはりこいつにルッツを任せて良かった、とギルベルトは内心で思った。
姉からルートヴィッヒを託されたときにはさすがにどうしたものかと思ったが、これならなんとかなりそうだ。
菊は独身だし男だから子育てなどした事はないだろうが、間違いなく面倒見はいいし、なによりやさしい。
ルートヴィッヒの方も、身内のギルベルトが言うのもなんだが、歳の割に非常に出来た子だから菊の手をさほど煩わせる事もないだろう。
「良かった、枕が変わって眠れなかったらどうしようかと」
あれから共に夕食をとり、ギルベルトと風呂にも入ったルートヴィッヒは、寝かしつけると暫くもぞもぞしたり話したりしていたが、さほどの時間も取らずに寝入ってしまった。元々寝付きの悪い子ではない。勿論、今日は疲れているのもあるだろうが。
「まったく、もっと早くに言って下されば前もって準備できたのに」
菊は眉間に皺を寄せ、口を尖らせるようにしながらこちらを睨んだ。
とはいっても先ほどとは違い、もうその顔に怒りは見られないから怖くもなんともない。むしろ可愛らしいくらいだ。
いつも思う事だが、こいつは今の自分の顔や雰囲気を自覚しているんだろうか。
ギルベルトはむずむずする胸の内を隠しつつ「だから悪かったって。この通り、な?」と苦笑しながら拝む仕草をした。
菊は「今回だけですからね」と諦めた様子でため息をつく。
たぶん、ルートヴィッヒが眠った事で緊張が解けたのだろう。先ほどの態度といい、いつもの二人きりの時の菊に近くなっている気がする。
今日、ルートヴィッヒを加えて3人になったときから、菊は普段よりも更にしっかりとしていて、どこかいつもより丁寧に振る舞っているようだった。おそらくは他家の子供を預かる事に責任を感じているのだろう。
その姿は大事な甥を預けるには頼もしく、けれどギルベルトには少しだけ寂しくもあった。まるで、出会ったばかりの頃の彼に戻ってしまったかのようで。
だから、今の彼を普段のそれにもっと近づけたくて、わざと隣りに身体をくっつけるようにして腰を下ろす。
「どうしたんですか?」
菊は不思議そうに隣りのギルベルトを見上げてくる。
「なんでもねーよ」
そう言いながら、彼の身体に腕を伸ばした。風呂上がりの爽やかな石鹸の香りがふわりと匂う。
身体を寄せて、黒くて絹みたいな髪にすり寄るようにすると、菊は「ちょっと…仕事中なんですよ」と言いながら軽く身じろいだ。
それでも押しのけるような様子がないあたり、まんざらでもないのだろう。
「明日は朝からですか?」
「おう。帰りは真夜中だな。シフト連続で入ってる」
菊はため息をついた。
「忙しいですねえ」
「今日シフト代わってもらったし、仕方ねーよ。どこも人手不足なんだ。俺、男だから女よりは体力あるしよ」
「身体、壊さないでくださいね」
「お前のメシ食ってれば大丈夫だろ」
そう言うと、菊が隣りで俯いた。見ると横顔も耳も赤くなっている。
「…おだてても何も出ませんからね」
憎まれ口を叩きながらのそれがまた可愛らしくて、ギルベルトは思わず相好を崩した。自分より6つ以上も年上の、しかも男のくせに、どうしてこんなにも愛らしいのだろう。
「あいつのこと、頼むな」
そう言うと、菊は少し黙り込んだ後に一つ頷いた。
「私なんかで良いのでしょうか…」
その後に小さく呟かれた言葉がとても不安げだったので、ギルベルトは「当たり前だろ」と言ってやる。
「この俺様が選んだんだから間違いはねえよ」
言い切ると菊はそれ以上は何も言わなかったが、代わりにそっとギルベルトの方へ身を寄せた。


「あ!」
キスをした後、そのままその先へなだれ込もうとした時、突然慌てた様子の菊が抵抗するようにギルベルトの身体を押しのけた。
「なんだよ?」
「あ、あの、今日はルートヴィッヒさんと同じ部屋で寝て下さいね」
「は?なんで?」
ぽかんとするギルベルトを他所に、菊はぎこちない笑みを浮かべながら、乱れた襟元を直している。
「うちには客間は一つしかありませんから」
確かに本田宅に客間は一つしかないが、ギルベルトは最近そこで寝た覚えはない。いつもそのまま菊の部屋で眠っている。
「じゃなくて、お前の部屋でいいじゃねーか。どうせするんだし…」
そう言うと、菊は「は!?」と素っ頓狂な声を上げた。
「バカ言わないで下さい!ルートヴィッヒさんがいらっしゃるんですよ!?するわけないでしょう!」
「何でだよ!?そんなん関係ねーだろ!」
「大アリですよ!一つ屋根の下に小学生がいるんですよ!どう考えても教育に悪いでしょうが!!」
真っ赤になった顔でそう言って、警戒するようにギルベルトから少し離れた菊は、元に戻した襟元を更に掻き合わせるようにしている。お前はどこの乙女だ、とギルベルトは心の中で突っ込んだ。実際は三十路も過ぎた成人男性である。
「とにかく!ルートヴィッヒさんがいる間は禁止ですからね!」
「はあ!?嘘だろ!!」
何週間あると思ってんだよ!とギルベルトが悲鳴のような声を上げる。考えるだけで気が遠くなりそうな長さだ。菊はにべもなく「一ヶ月ですから4週間ですね」と答えた。