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○○しないと出られない主人と執事

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ドアをくぐるとそこは学校の中庭で、連れ立って歩く生徒や、座って談笑する生徒たちのいつもの光景が広がっていた。
エコーはすぐに後ろを振り返ったが、ドアは消えていた。

「出られましたね」
「ハア…どうせならヴィーナス嬢と閉じ込められたかったー…」
「キス、断られていたかもしれませんよ。好かれてない相手に無理やりするのは犯罪です」
「すっ、好かれてないかどうかなんて分からんだろ!無理やりなんてするものか、二人きりで一緒に過ごせば、彼女も俺の魅力に気が付いてくれる!誰であろうと俺を愛してくれるはずだ!」
「そうですね」
エコーは主人の言葉を否定しない。

水辺に咲く美しい水仙の花。
あの神の美が化身したような、天衣無縫な少女はどうか知らない。けれどほとんどである只人は、抗する術もなく誰もが彼に魅了され、誰もが彼を愛するしかない。

(…私も例外ではないとは、あなたは知ってくれない)

お前は違うだろうと主の映す鏡像は呪いになって、エコーは言葉を奪われる。告げてしまえばきっと有象無象の彼らの一人に己も堕してしまうのだと分かっているから。

「それはそうとナルキッソス様、補習が始まる時刻が過ぎております」
「はっ!まずい…!急ぐぞエコー!」
「はい」

私はただあなたのお側に居られれば良いのです。
ナルキッソスの背に付き従いながら、エコーは主人に気付かれないようにそっと、美しい花にひと時触れた唇を指でなぞった。