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亜 金陵奇譚 相想

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「静伯母上の点心は、まだあったよな。」
梅長蘇が、簫景琰の膝の上にある袋を手に取り、中を探り出した。
「ん?、何をする気だ?。」
長蘇は中から、菓子を一つ取り出し、。
「懐かしいな、榛子の菓子か、、、。美味かったんだ。あの時に食べたきりなんて、心残りだった。」
長蘇は嬉しそうに、摘んだその菓子を、口の中に入れようとしていた。
「おいっ、、何を考えてる!!。」
景琰は、長蘇の指から、大きな丸薬ほどの、一粒の菓子をもぎ取って、睨みつける。
いきなり取り上げられ、梅長蘇は不服さを顔に出した。
「さすがにもう、大丈夫だろ?。あの時みたいに、もう苦しんだりしないさ。何せ体が無いんだからな。ふふふふ、、。ほら、菓子を返せ、景琰。」
菓子を返せと、長蘇は掌を、皇帝の前に出した。
「駄目だ。もし、、もし万が一、発作が起きたらどうする?。小殊は私にしか見えぬのに、私ではどうにもならぬ。たとえ母上だとて、どうすることも出来ぬのだぞ。」
「は???、、何を言っている?。体も無いのに、発作なんか起きる訳が無いだろう!。ほら、寄越せ、楽しみだったのだ。一つ位何ともない。全部、寄越せと言っている訳では無い。景琰と私で、一つずつ頂こう。何も問題は無い。」
「、、、、、。」
「あっっっ!!、景琰のけちんぼうめ!!。一つ位良いじゃないか!。」
皇帝は袋に残った物と長蘇から取り上げた物と、一度に二つとも口に入れて、あっという間に食べ、飲み下してしまった。
━━あの時、、どれだけ心配をしたか、、。苦しむお前を前に、何も出来なかったのだ。、、、、もう、あんな思いをしたくない。━━
簫景琰は子供の頃、母親の皇太后か作った、榛子の菓子を林殊が食べて、酷く苦しい目に遭った事を思い出していた。ほんの数個、食べただけなのに、見る見る苦しみ出したのだ。幸い医女だった母親が側に居り、菓子が原因だと突き止めて、吐かせて事なきを得た。
林殊は吐くまで苦しみ続けた。
その間、景琰は見ている他無く。
林殊が、榛子にこれ程酷い反応をするとは、皆、知らなかったのだ。
景琰が食べさせた事を、誰かに責められた訳ではないが、ただただ、林殊が苦しむ様を、成す術も無く、見ている他無かったのだ。
何もしてやれない、景琰には、歯がゆさだけが、心に残った。
こんな思いはもう二度とこりごりで、榛子の菓子は、林殊の口に入れさせない、と、心に決めていた。

「また発作が起きないとは、言いきれないだろう。」
真顔で答える景琰。
こんな姿になっても、若い頃の簫景琰が林殊を丸ごと包んでいた様に、長い時が過ぎても、その関係は何も変わっていないのだ。
二人、幼い頃から、そんな関係だった。
林殊が成長して、怪童と呼ばれ、剣や槍の腕が簫景琰を凌いでいても、戦術学や学問に突出していようとも、何か無茶をやらかす林殊が、景琰は心配でたまらなかった。
心配通りに、必ず何かやらかすからだ。まさに無鉄砲。
そして解決策には、簫景琰も組み込まれていた。
景琰には、それが楽しくなかった、迷惑だった、と言えば大嘘になる。
あの頃の二人が、今、また戻ってきた。
たかが榛子の菓子一つ、どれ程不服だったのか、長蘇はそっぽを向き、目も合わせない。
「チッ、、食べ損ねた。」
「私にはお前の姿が分かるのに、他の者には見えない。しかも飲み食いは出来る、、。体に入った物は、一体どこに行くのだ?。」
「、、、知らん。」
「いいか、私の不安を考えてみろ。」
「あっ、、、そうか。」
「?。」
長蘇は、何かを思いついた様子だった。
「皇太宮に行けば良いのか!!。」
この梅長蘇のしたり顔、まるでかつての林殊そのままだった。
「頼むから行くな!。」
長蘇は立ち上がり、今直ぐにでも皇太宮に行こうとしていた。
景琰は、長蘇の袖を掴んで、長蘇を引き戻した。
長蘇は、立とうとしていたのを、引っ張られ、体制を崩し、景琰の腕の中へ倒れ込んでしまった。
胸の中に顔を埋めていたが、不機嫌な顔で景琰を見上げる。
「乱暴だな。」
━━まずい、怒らせた。━━
怒っている顔だった。上目に睨まれているが、景琰の動悸が激しくなる。怒らせたからだけではない。
だが、胸元の辺りが、締め付けられる感じは、かつて林殊に抱き、押し殺していたものだった。
林殊であった頃も、姿、秀麗だったが、、、、。
梅長蘇が林殊には違いないし、林殊にしか見えないのだが、景琰を狼狽えさせる程の『気』を纏って帰ってきた。
誰よりも子供っぽかった林殊。十数年の歳月が、林殊を大人にしたのか、、、。それともその歳月の辛苦のせいか、、。
または、武芸が出来ぬ身体になり、元々持ちながら隠れていたものが、現れてきたのか、、。
可愛いだけの、守ってやらねば危なっかしい林殊では無くなった。
あの可愛いい林殊が、もし大人になったら、こんな風に成長していたのだろうか。

━━小殊がむくれても、ここまで私は慌てはしないものを、、。
梅長蘇には、幾度かこんな表情を向けられた。、、、、どうして良いのか分からなくなるのだ。取り繕うのに汗が出る。
母上に小殊が見える事が、私にとって、嫌な筈は無いのに。━━
また、怒らせて睨まれてみたい、、、が、小殊と違って、むくれ続けられたら、どうしていいか分からない。
林殊には感じなかったものを、梅長蘇はくっ付けてきたというか、、。
だから「違う」と否定されて、梅長蘇と林殊が違う人物だと、あっさり引き下がれたのだ。
引っ掛かりは多く、非常に似ているが、まるっきり同じでは無かったから。
林殊に梅長蘇の様な「薫り」は無かったのだ。
、、子供、、、誰よりも子供にしか見えなかった林殊。子供扱いすれば酷く怒った、、、膨れて口を利かない、、、、そういう所がただっ子でしかない。
林殊は、殊更、景琰には甘えて、そんな姿を晒していたのだ。

━━どうしたいのだ、私は。━━
林殊とは、まるで別の何かを嗅ぎ取ってしまう。
林殊が、沢山の試練の後、精錬されたかの様な、、。
それが梅長蘇なのだろう。
時折、顔を出した。
簫景琰は、梅長蘇のその部分を無視せねば、深みに嵌りそうで、怖かった。

梅長蘇と江左盟が風雲を起こす。
都の皇子も風雲にのまれ、やがて風雲の核と融合する。
共に同じ目的を歩み、梅長蘇とは、色々あった。

いけ好かない、綺麗な顔をした書生崩れ。第一印象は頗(すこぶ)る悪かった。
たかが策士と蔑んでいたのだ。
庭生を掖幽庭から救い出してみたり、亡き友の許嫁、霓凰と懇意にしてみたり、、。
自信満々に謀を弄した、、、だが、、、。
策士の癖に、自分の策か好きでは無い様だった。
そして議論を交わした。策士と何の議論をするのか、、、生涯有り得ないと、景琰は思っていた。、、、なのに楽しかったのだ。
梅長蘇も楽しそうだった。
自分は小殊と戦術を考えるのが好きだった、、と思っていた。
謀など必要は無いと。
自分が変わってしまったと思った。
自分を引き込む梅長蘇が、怖くもあった。
この者に、あまり入り過ぎないように、、、、、距離をとっていた。
梅長蘇も私と同じだった。入り込み過ぎず、、、互いに。
一体何を考えているのか、皆目掴めない。
簫景琰が、最も嫌う種類の人間。
作品名:亜 金陵奇譚 相想 作家名:古槍ノ標