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BLUE MOMENT4

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「もう! ダ・ヴィンチちゃん!」
「あー、ははは……、えーっと、立香くん、言い訳をさせてくれるかな。……本当のところはね、私もどうにかしたいんだ。けれど彼らは、我々に何も教えてはくれない。立香くんは知っているかい? エミヤが士郎くんに拘る理由を、士郎くんがエミヤにいつも気遣わしい理由を」
「そ、それは……、何も……。おれは、何も知らない。二人が話してくれるまで訊かないつもりだった。あんなふうにカルデアに来た士郎さんの事情は、きっと、ものすごく深刻で厄介な事態なんだって、わかってたから……」
「立香くん……」
「もしかすると、おれと似たり寄ったりなんじゃないか、とか、そんなことも考えたりして……」
「そうだね。君たちはマスター経験者ということでは一致しているからね。もしかすると、どこかで同じ匂いを感じていたのかもしれない」
 立香は、しおしおと椅子に座り直す。
「うん……。おれね、聖杯戦争のこととか、訊いてみたいんだ。だけど、士郎さんは、話したくなさそうだったから、その話題、出さないようにしてたんだ。
 ……ねえ、ダ・ヴィンチちゃん。やっぱり素直に訊けばよかったのかなあ? おれがもっと気さくに士郎さんの話を引き出せればよかったのかなぁ……」
「…………」
 このマスターは本当に人たらし、いやサーヴァントたらしだ、と、ダ・ヴィンチは目を細める。
「立香くん、安心したまえ、君が責任を感じることではないよ。それは、お門違いと言うものさ。きっと士郎くんは、何があろうと、どんなにうまく誘導しようと、誰にも話さないだろう」
「え?」
「当たり障りのない事情や話は、私は一度聞いているんだ。けれど、そのうちで、士郎くんの内実に迫るような事柄は一切語られなかった。誰が訊いても同じ。彼は笑ってはぐらかす。
 どこで覚えたのか、彼は実に自身を取り繕うのが上手い。我々とてコロッと騙されてしまう。悪気がないから余計に厄介だよ。何しろ彼は我々に迷惑をかけないようにと、不快にさせないようにと、そう振る舞うことを意識せずにやってのけている。普通ならその心地好さに彼が何を考え、何をひた隠しにしているのかなど、まったく見えてこない」
「そ、そんなのは……、とても……」
「うん。誰にも真に理解されないということは、非常に辛いことだと思うよ」
「なんで士郎さんはそんなふうに……」
「そうだね……。それは、きっと彼の歩んできた生き方に因るところが大きいんだろうね」
「ねえ、ダ・ヴィンチちゃん、士郎さんは寂しくないのかな?」
「さあねぇ……。私は、彼にその心情を教えてもらったことがないからわからないよ……。だけどね、エミヤは士郎くんの態度が上辺だけだと気づいている」
「え?」
「我々とエミヤは違うんだよ」
「エミヤが違うって、どういうこと?」
「エミヤは、士郎くんが不器用な笑顔の下に隠している本当の顔があると見抜いている。だからエミヤは士郎くんに拘り、過剰なほどにかまい、傍にいようとする」
「へー。そんな理由(ワケ)が……」
「……と、まあ、これは推測だよ。本当のところはわからない。我々が知る由もない、本人たちにしかわからない時間を彼らは過ごしているようだから、やっぱり外側から口を出してはいけないなぁ、とね」
「それ、ダ・ヴィンチちゃんが言ったらダメなやつだよ……」
「う……」
 ダ・ヴィンチは、あらぬ方を向く。
「一応は、反省してるんだね……」
「…………」
「ダ・ヴィンチちゃん?」
 目を据わらせる立香に、ダ・ヴィンチは眉を下げた。
「だってーっ! 焚き付けたら、すぐにでもくっつくと思ったんだよーっ! なのに、なのにさ、あの二人っ! 余計にわけわかんなくなるんだもんーっ」
「だもん、って……。ダ・ヴィンチちゃん……、弁解できてないから、それ……」
「彼らからの相談には、いの一番で応えさせてもらうし、協力は惜しまないから! 許してー、立香くんー」
「はぁ……、もう……」
 仕方がないなぁ、と立香はため息をつくものの、マシュと顔を見合わせ、結局は許すのだった。


BLUE MOMENT 4  了(2019/3/30)
作品名:BLUE MOMENT4 作家名:さやけ