黒い羊
キングスクロス駅で、僕は一人、ホグワーツ特急を降りた。
いく宛なんかない。
ただ、学校も、家も窮屈で、自分でいられないから、出てきただけ。
壁に寄りかかって、人波が収まるのを待つ。
誰も僕に興味を示さない。
僕だって分かる赤毛も、フードで隠してしまえば、ほら。
ママだって気づかないんだ。
それぐらいなんだよ?僕って。
人がいなくなった駅のホームで、財布を出す。
中身を見てガッカリした。
これじゃ、漏れ鍋にも泊まれない。
取り合えず立ち上がって短期バイトでも探すか、と駅を出た。
マグルが行き交うロンドンを、僕は歩いた。
ヴォルデモート、って人が復活したらしいけど、僕には関係ない。
『住み込みアルバイト募集!』と貼り紙を貼っている店に入り、僕は声をかけた。
「冬の間だけのバイトって、ありですか?」
店長だったらしく、即オーケーしてくれた。
のっぽのお陰で、少し年上に見られたみたい。
アルバイトは、16からだけど、大丈夫だった。
まぁ、もうすぐ誕生日だし似たようなもん。
「……なんですか?」
書類に名前等を書いていると、じっと見つめられた。
「いや、綺麗な赤毛だなぁと思って。」
「ぼ…俺、自分の髪嫌いです。」
僕、と言おうとして俺と言い換えた。
なんとなく、大人っぽくみせたかった。
「そう?染めたらいいんじゃない?うちはオーケーだよ、そういうの」
染める?マグルの言葉かな。
作品名:黒い羊 作家名:R.A.B.Draco