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ハミングバード

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いつも口にしてから焦るのは、二人とも同じだ。本音は勢いでしか言えない。考えて考えて、選んだ言葉では何も伝わらない。つまりは二人とも不器用なのだ。

財前を、面白いと思っていた。限りなく、いとしい、に近い感情で。
気がつくきっかけなんか、きっといつでもあったのに、生温い関係が長いこと続いていたから、その距離が正しいのだと信じていた。
こんなに、そばにいてくれたのに、そばにいてほしかったのに。

「おまえの、かわいないとこも全部、俺にとってはかわええねん」

この関係に、名前をつける勇気はまだないけれど、耳まで真っ赤にしながら「きもい」と毒を吐く財前を、離したくないと思うのだから仕方がないのだ。

甘やかしたりする気はない、きっとすぐには変わらない距離。
それでも、それがこいつの甘えなのなら、俺は全部嬉しいと思う。
作品名:ハミングバード 作家名:小豆沢みい