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3代目キセノン
3代目キセノン
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STAR TREK TRAVELER

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STAR TREK TRAVELER

■第1話・生存者

●1.襲撃
 周囲の空間には、線上に流れる星々の光が見える。長さ350メートル程のイントレピッド級の航宙艦がワープ航行している。艦体には『USS アトカ NCC74789』記されていた。『アトカ』の船体には点々と窓の光が見える。

 ブリッジの艦長席には、ジェフリー・ウィドマック艦長、隣の副長席にはリリィ・ホイ副長が座っていた。
「艦長、コース上ではないですが、前方に妙なものがあるようです」
操舵席に座るナカタは、コンソールの画面から目を離さないで言っている。
「妙なもの?、ポレック、何だかわかるか」
艦長は、科学部士官コンソールに向かって言う。ポレックは、素早くキーボードを叩く。
「何らかのエネルギーの集合体ではないかと推察されます」
「そうか、副長、どう見る。緊急停止する必要があるかな」
「別に急ぐ旅ではないですし、行方不明になったヴォイジャーの手掛かりになるかもしれませんから」
「そうだな。ナカタ、ワープ解除、インパルス推進で接近してくれ」
艦長は、ブリッジにある大型の主スクリーンに映る、光の点のようなエネルギー集合体を注意深く見ていた。

 『アトカ』は、ゆっくりと星雲のような光の渦に接近していく。太陽フレアのように時折、光のリボンを放射していた。赤から黄色、緑から黄色、青から赤と色が目まぐるしく変化している。

 ブリッジの主スクリーンにも、エネルギー集合体が映っている。次の瞬間、ドミニオン船がワープを解除して姿を現した。
「ドミニオン船が次々にワープ解除。8隻が現れました」
ポレックは冷静に言っていた。
「なんでまた、アルファ宇宙域のこんな所まで来たんだろう」
ウィドマック艦長は、腕組をしていた。
「今の所、敵意はないようですが、あぁ、武器システム作動。エネルギー集合体に発射しています」
アジア系クリゴン人女性のロムガが言っていた。
「ロムガ、念のためフォースフィールドを張れ」
「了解」

 エネルギー集合体は、攻撃を受けると、一部の光が、黒っぽくなる。その後、すぐにフレアのような光のリボンを伸ばして、次々にドミニオン船を破壊していった。

 「ドミニオン船のフォースフィールドは、全く役に立たないようです」
ポレックは自分のコンソールのモニター画面を見ながら言っていた。
「我々のも、多分役立たないでしょうね」
ロムガは、ぼそりと言う。艦長は唾をごくりと飲んでいた。
「ドミニオンを倒したということは、敵ではなさそうだが、どうも味方とも思えんな」
艦長は、艦長席のひじ掛けを指で軽く叩いていた。
「艦長、集合体が近づいてきます」
ポレックが静かに言う。
「ナカタ、ワープ2で離脱」
ナカタは、コンソールのキーを叩く。
「集合体はワープ速度で接近中」
ポレックは立ち上がり、艦長の方を見て言っている。
「ナカタ、ワープ7」
「了解」
ナカタが言った直後、艦内が激しく揺れた。照明が明滅する。
「艦長、集合体の光のリボンに接触しました」
ポレックは、しっかりと立っていた。
「バーンズ、被害状況を」
艦長は、マシューに呼びかける。白人男性のマシューの顔は、青白くなっていた。
「後部船体に亀裂。機関部に損傷あり」
「ナカタ、ワープ解除」
ブリッジの主スクリーンには、エネルギー集合体が映っている。
「ポレック、交信は可能か」
「わかりませんが、やってみます」
ポレックが言った直後、再び艦内が激しく揺れる。照明が消え、緑色の非常灯に切り替わった。さらに激しく
揺れ、船体がきしむ音が、聞こえてくる。
「フォースフィールド20%、全く通用しません。ダメだわっ」
ロムガはかなり感情的になっていた。

 急にブリッジ内の重力がなくなり、ポレックは少し浮き上がった。ナカタは息苦しさを感じ始めていた。ブリッジ内に嵐のように空気の流れ出す。ブリッジ内に光のリボンが侵入し、人間を次々に黒焦げにしていく。ポレックが黒焦げになり、人形のように倒れた。ロムガは光のリボンに立ち向かおうと手を伸ばすが、その手から黒焦げになり全身が包まれた。
 ナカタが振り向くと、艦長と副長の席は、黒い残骸になっていた。ナカタはとっさにコンソールデスクの下に潜り込む。ブリッジ各所、通路から悲鳴が聞こえていた。ナカタは息苦しさに喉を押さえていた。ナカタはコンソールの下から這い出し、周りを見る。もう光のリボンはなくなっていた。
 科学部士官コンソールの後ろに、緊急用酸素ボンベがあった。ナカタは、浮遊しながら、かつてポレックだった黒い塊の辺りまでくる。ナカタが、酸素ボンベを取り出そうとするが、周りの支柱が曲がり、引っかかって取り出せなかった。ナカタは力任せに引っ張ろうとするが、ビクともしなかった。何か使えるものはないか、周りを見る。ポレックの腰のあたりにフェイザー銃が見えた。半分近く焦げている。ナカタは、それをつかんで支柱に向けて発射する。支柱は弾け飛んだが、ほぼ同時に手が火傷してしまった。火傷していない手で酸素ボンベをつかみ、マスクを口に装着した。

 ナカタは寒さに震えていた。酸素ボンベは後1時間でゼロになると表示されていた。ブリッジの主スクリーンは、ちらつきながら、被害状況を表示している。ナカタは、スクリーン上に目が留まった。『生存者1名』とあり、空気漏れがないのは天体測定ラボだけとなっていた。

 天体測定ラボの中は、破滅的な襲撃以前のままであった。ナカタは、呆然として半球状のドームから宇宙を見ていた。エネルギー集合体はなくなっているが、光のリボンが1本だけたなびいている。穏やかに波を打ち、攻撃をいる意図はなさそうだった。ナカタは天体測定ラボで使えそうなものを探している。無線装置以外は全てオフラインになっていた。マイクを持つナカタ。スイッチを入れてもスピーカーからは空電ノイズしか聞こえてこない。マイクのスイッチを切るナカタ。
「…オォマエ…お前らは私たち追う、なぜぇ」
たどたどしい言葉が聞こえてきた。ナカタは、スピーカーを見つめていた。
「お前らは、なぜ我々を追うのだ」
明瞭な音声になった。ナカタはマイクのスイッチを入れる。
「あんた、誰だ」
「ri kfppXY…」
意味不明の音声がする。
「誰だか知らないが、宇宙連邦の船をここまで破壊するということは、宣戦布告に等しい」
「お前らはドミニオンの仲間だろう。エネルギー生命体ではないからな」
「仲間なわけないだろう」
「お前らが現われて、すぐにドミニオンが現われたではないか」
「バカな、ずーっとあんたらを追っかけてたんだろう。たまたま俺らが出くわしただけだ」
「お前らのハイブリッド神経回路AIとやらを調べる」
薄い光のベールが一瞬、船内を包む。
「お好きにどうぞ。嘘は言ってないからな」
「確かに、ドミニオンではないようだ」
「だいたい、あんたらは何なんだ」
「エネルギー生命体だが、細かいことを言っても理解できんだろう。トラベラーと認識しろ」
「旅人だってか。さっさとどっかに消えちまえ」
「しかし初歩的とは言え、超光速で移動できる乗り物には郷愁がある。気に入った」
「乗っ取る気か」
「直す必要がある」
作品名:STAR TREK TRAVELER 作家名:3代目キセノン