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3代目キセノン
3代目キセノン
novelistID. 65653
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STAR TREK TRAVELER

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「好き勝手な野郎だな。壊して直すのか。人命を奪っておいて」
「このまま放って置いても、良いのだがな。お前は確実に死ぬだろう」
ナカタは押し黙った。
「うっ、待った。ワープコアなどの機関部だけでなく、空気も満たすというのか」
「当たり前だ。しっかりとオリジナル通りに復元してこそ価値がある。高く売れるのだ」
「え、この『アトカ』を転売しようっていうのか」
「たいていの場合、きれいに破壊してしまうので、形として残っているものは珍しいのだ」
「だろうな」
「お前は、お前らの時間でいう5日間はここにいろ。そうすれば、今まで通りになる」
「仲間はどうなる。生き返るのか」
「それは無理だ。しかしお前は死ぬことはない。まずは宇宙服を着て残っている食べ物など集めて5日間を食いつなげろ」

●2.奮闘
 誰もいない艦内の通路を歩くナカタ。亀裂が入っていた内壁は、どこにも見当たらなかった。黒焦げの死体があった場所は、きれいになっている。ナカタはジャンプしてみるが、すぐに床に着地した。
「おい、トラベラー、聞こえているか」
ナカタは、天井に向かって語りかける。
「修理したようだが、今どこに向かっているのだ」
返事は全くなく、通路にはワープ駆動の微かな音が聞こえている。
「これを売る前に、俺を人類の居る所に下してくれ。俺が居たんじゃ高く売れないだろう」
「この先、人類の居る所はない。お前込みで売る」
「そうかい。それで、いつ頃、あんたらの市場に到着するんだ」
「12.81年後だ」
「そんなにかかるのか。となると、天井を見つめて話すのを12年以上もするのかよ」
「つまらぬことを口にする奴だ。ホロ技術を用いるとする」
艦内の通路の空間の一部が揺らぎ、次の瞬間、ダヴィンチが現われる。
「これでどうだ。お前から見れば、私は万能だからこの姿が相応しいのではないか」
「ゼウスじゃないのかい。船のデータバンクには、あったろう」
「今は、これが気に入っているのだ」
トラベラーはナカタと並んで歩き、ターボリフトの前まで来る。
「それじゃ俺はブリッジを見させてもらうよ」
ナカタはターボリフトに乗った。

 ナカタは、ブリッジに入る。科学部士官コンソールの後ろにある支柱は真っすぐになっていた。新しい酸素ボンベが備え付けられ、支柱の重力表示計が『1.05G』を表示していた。ナカタは、ブリッジを見回しながら、操舵士のコンソールに座ってみる。座り心地に変化はないようだった。立ち上がるとターボリフトに向かった。

 ターボリフトの扉が開くと、シャトルベイが目の前にあった。普段はあまり使わない、シャトルが置いてある。気配を感じてナカタが振り向くと、ダヴィンチ姿のトラベラーが立っていた。
「逃げるつもりか。そうは行かないぞ。お前も含めて大事な売り物だからな」
「お前と一緒に、こんな所に12年以上もいられるわけないだろう」
ナカタはシャトルベイのハッチの前に駆け寄った。
「仲間を殺されたんだぞ、お前の言いなりにはならない。なるくらいなら死を選ぶ」
ナカタは、ハッチの緊急手動開閉レバーに手をかける。ハッチが少し開き、警報が鳴り出す。
「愚か者、死ぬ気か」
「俺は不死身だ。こんな茶番では死なないぞ」
ナカタはハッチを完全に開けきった。
「訓練生の異常行動により訓練シュミレーション終了」
自動音声が流れる。
 シャトルベイは、揺らいで消えると、ホロデッキの支柱がむき出しになった。
「俺が、こんなホロデッキに騙されるか。ボロボロになったイントレピッド級の航宙艦を5日かそこらで直せるわけないぞ」
ナカタが叫んでいると、トラベラーは軽く拍手をしている。
「良く分かったな」
「重力1.05Gは訓練用の設定なんだよ。直せたのは、電源区画とホロデッキだけだろう」
「お前を甘く見ていたが、全艦をコントロールしているのは、この私だということを忘れるな」
トラベラーは姿を消した。

 ナカタは、緊急用の簡易宇宙服を着て、ホロデッキの外に出た。黒くひしゃげた支柱があり、通路の所々に亀裂が入っていた。ナカタは宙に漂いながら通路を進む。船内カメラやセンサーは機能していない。トラベラーは全艦コントロールしていると言っても、ホロデッキを出たナカタの動きは、把握できないはずだと、ナカタは思ったが。はたと気が付く。宇宙服にマーカービーコンが付いている。ナカタは、肩口にあるワッペンを引きはがし、手近の支柱に張り付けた。
 
 ナカタはバックアップ用の司令室にたどり着いた。機能は全て乗っ取られたハイブリッド神経回路AIによってコントロールされていた。ナカタは宇宙服を脱いで、いろいろとキーボードを叩いてみるが、どれも受け付けられなかった。
 ナカタは気配を感じて振り向くと、ダヴィンチ姿のトラベラーが立っていた。
「だから言ったであろう。私がコントロールしている。救難信号など発信できないぞ」
トラベラーはニヤニヤしていた。
「何様のつもりだ」
「殿さまというところかな」
「ふざけるな」
ナカタはトラベラーにつかみかかる。トラベラーは、物凄い力でナカタを放り投げる。ナカタは司令室の壁に激突
し、壁にひびが入る。ふらふらと立ち上がるナカタ。
「これだから、身体を持つ生命体はひ弱なのだ」
「お前には、人の心がないのか。これだけ大勢の乗組員を殺してニヤつきやがって」
ナカタは飛びかかろうとするが、足がふらついていた。
「血迷ったか。私は人ではない」
トラベラーはナカタを再び放り投げる。床に落ちたナカタは、必死になってすぐに起き上がり、駆け寄って、
トラベラーの顔にパンチを繰り出す。もろに受けたトラベラーはよろけるが、またニヤニヤする。
「私はホロ投影像だぞ、なんの痛みもない」
トラベラーは笑い出す。ナカタは、サンドバッグに打ち込むように連打している。トラベラーは大笑いをする。
「人の感情とは、こういうものなのか。実に興味深い」
「糞っ」
息の荒いナカタは、パンチを止めた。
「どうしたもうやらんのか。私はワープコアを修理しなければならないので失礼するぞ」
「ん、そうかまだこの船は動いていないのか」
「だからどうした」
「何の連絡もなしに5日以上も緊急停止している。遭難船と認識されているはずだ」
「だとしても、私に歯向かえると思うのか」
トラベラーは姿を消した。

 天体測定ラボにいるナカタは、無精ひげが伸びていた。ラボの測定装置は自由に使え、現在位置を割り出して見ると地球から3852光年の宙域と表示されていた。ナカタはワープが使えなければ、自力帰還はほぼ不可能だと感じていた。暗い気持ちになりながら、数少ない空気がある場所のホロデッキに向かった。

 ナカタは窓を開け、ドイツ・ローテンブルクの街並みを眺めている。空腹に腹が鳴り、宿の階段を降りていく。
「マルクト広場近くのレストラン」
ナカタが天に向かって言うと、周囲の景色が変わった。レンガ造りの内装のレストランになっている。ナカタは奥まった席に座った。
 店員が料理を持ってナカタのテーブルの所にやってくる。
「こちらが当店自慢のシュニッツェルとアイスパインでございます」
店員はテーブルに料理を置いて行く。
作品名:STAR TREK TRAVELER 作家名:3代目キセノン